代謝を上げるためのOK・NG食習慣セミナーレポート(正しく知りたいシリーズ第1弾)

 

栄養情報や減量についてなど、わたし達のまわりには身体に関わる様々な情報があふれています。そんな中、「正しい知識を身につける」ことは、日々のトレーニングの効果を出すためにとても重要なことです。

 

B&では、正しい情報をベースにした「自己判断」ができるよう、講師に管理栄養士の佐藤彩香さんをお迎えし、“正しく知っておきたい”栄養に関するテーマをシリーズ化。4月27日に開催された第一弾、「代謝」についてのセミナーの様子をお届けします。

 

■セミナー講師

佐藤 彩香(さとう あやか)
管理栄養士

企業や保育園で栄養カウンセリング、献立作成、栄養計算、店舗運営を経験し、その後独立。健康を土台とした実践型の栄養サポートを行い、プロアスリート~スポーツキッズ、ダイエット希望の方など累計5,000人を超える人々と関わる。現在はパーソナル栄養サポート、セミナー講師、ライター活動、レシピ開発なども行いながら、「あなたのかかりつけ栄養士」として活動している。

OFFICIAL BLOG「三度の食事は三回のチャンス」

 

「代謝を上げる」の“代謝”ってなに?

よく聞く「代謝」という言葉の意味について、みなさんはどれほどの知識をお持ちでしょうか?ウエイトコントロールはもちろんのこと、疲れにくい体づくりや太りづらい体づくりに関係する「代謝」について、基礎知識から学んでいきます。

 

佐藤さん
今日は“正しく知っておきたい”をテーマにした第一弾のセミナーです。アスリートはもちろんのこと一般の方も含め「代謝」を理解することで、自分の体のコンディショニングに繋げていきましょう。


「代謝」には、基礎代謝・活動代謝・食事誘発性熱産生・新陳代謝の4つの種類があります。

 

①基礎代謝量

佐藤さん
基礎代謝は、まったく動かなくても生命維持のため自然に消費されていくエネルギーを指します。「基礎代謝を上げる」ことにメリットがあるのは、周知の事実ですね。筋肉量と深く関係していて、基礎代謝の約20%は筋肉に依存していると言われています。


■ポイント
・筋肉量が増えると、基礎代謝も上がりやすくなる。
・除脂肪体重(総体重から脂肪を引いたもの)が多い人は、基礎代謝が高め。
・自分の基礎代謝を把握する


日頃から運動量が多い方・アスリートの場合は、以下の計算式を用いて基礎代謝量を求めます。

【JISS式】
28.5kcal×除脂肪量(FFM)×身体活動レベル(PAL)

【田口らの式】
27.5kcal×除脂肪量(FFM)×身体活動レベル(PAL)+5

 

②活動代謝・③食事誘発性熱産生

佐藤さん
活動時代謝量は、個人によって大きな差が発生します。体格や競技種目によっても消費カロリーが異なり、概算を想定することは難しいです。食事誘発性熱産生は「食べ物を消化吸収するために必要なエネルギー」とされていますが、栄養素によってエネルギー消費のパーセンテージが大きく異なってきます。

■ポイント
・たんぱく質は、他栄養素よりも消費にエネルギーを使う。

 

④新陳代謝

古いものが新しいものに入れ替わることを意味します。

佐藤さん
皮膚が新しく生まれ変わる「ターンオーバー」という言葉も、新陳代謝に紐づくものです。髪や爪が生え変わること、細胞の生まれ変わりをイメージしていただくとわかりやすいかと思います。

以上4つの代謝を上げることが、痩せやすい体や疲れにくい体づくりに繋がり、コンディションを整えやすくなります。

 

代謝を下げるNG食習慣

「代謝」にもさまざまな種類があることを学びましたが、続いて「代謝」を下げてしまうNG食習慣について学んでいきましょう。

佐藤さん
「代謝を上げる」ことにメリットがあるとお話をしましたが、私たちは、普段の生活において、知らず知らずのうちに代謝を下げてしまっていることがあります。代謝を下げる原因と対策を学ぶことで、日頃から「代謝」を下げない習慣を心がけましょう。

 

①基礎代謝が下がってしまう習慣はNG

 

 

佐藤さん
基礎代謝を下げないためには、運動をする・たんぱく質をきちんと摂取することを最初に意識しましょう。また、基礎代謝のうち20%は筋肉に依存しますが、残りの80%は脳を含む内臓であることを思い出してください。そのため、内臓を労る食事を摂ることも大事なポイントになります。

■ポイント
・アルコールや甘いもの(砂糖)の摂りすぎは内臓(特に肝臓)に負担がかかり、基礎代謝を下げてしまう原因に

 

②糖分・脂質に偏った食事はNG

食事誘発性熱産生の観点で代謝を考えた際、エネルギー消費が多いのはたんぱく質。糖と脂質を消費するためのエネルギーは、たんぱく質を消費する際の5分の1しか使用されず、代謝を下げてしまう要因となります。


各栄養素のエネルギー消費量

炭水化物:5%前後
脂質:3%前後
たんぱく質:25〜30%


③水分不足はNG

佐藤さん
喉が乾くと感じることが少ない時期でも、意識的に水分を摂る必要があります。水分が栄養を運び、細胞を活発化させるイメージを持ってもらうとわかりやすいです。 

 

■ポイント
一気に飲まずに、1日を通して適度な水分補給が必要。

・水の必要摂取量目安
生活活動レベルが低い人=2.3〜2.5ℓの水分/日
生活活動レベルが高い人=3.3〜3.5ℓの水分/日

※欧米のデータのため、日本人とは体格差などがあることを考慮して参考にする

 

佐藤さん
水分量に関するセルフコンディショニングとして、体重の変動や尿の色をチェックすることをおすすめしています。尿の色が濃いと水分が足りていない可能性がありますので意識的に飲む量を増やすなど調整してみましょう。 

 

代謝を上げる食習慣

代謝にまつわるNG食習慣を知ったあとは、「代謝」を上げる食習慣について教わっていきます。この日のポイントは全部で5つ。大切な点を押さえていきましょう。

 

①たんぱく質を意識した食事をする

佐藤さん
ぜひみなさん、昨日の食事を思い出してみてください。テーブルに、肉や魚・卵・大豆製品などは並んでいましたか?以下の理想のたんぱく質量を確認して、食卓で「たんぱく質」を意識してみてください。


・理想のたんぱく質量

一般女性:体重×1g
運動量の多い女性:体重×1.2〜2g

 

②内臓の負担を減らす

佐藤さん
固形物ではないし、「プロテインを摂れば効率がいい」と思われる方もいるかもしれませんが、プロテインを消化し吸収するためにも、他の栄養素をバランスよく摂取していくことが必要となります。ビタミンB群・マグネシウムや亜鉛を意識してみてくださいね。

 

 

ビタミンB群・マグネシウムの摂取には、白米に玄米や雑穀米を混ぜて食べることをおすすめしています。もし食べづらさを感じる方は、マグネシウムが手軽に摂れる「にがり」を、炊飯の際にスプーン一杯分入れてみてください。

アリシンは熱に弱い香味野菜なので、お肉や魚を食べる際に生の状態やさっと熱を通した状態で、組み合わせてみてくださいね。

 

③身体を温めて、内臓の働きを活性化させる

佐藤さん
アスリートの方は、アイシングの意味合いで身体を冷やす食べ物を好む傾向が高いと言われています。運動直後・運動後であれば必要な場合もありますが、身体を温める観点を持っていただけるといいと思います。土の中で育った食べものや、冬が旬の食べものをイメージしてみてください。

・身体を温めるために意識したい食品

・ごぼうや人参などの根菜類
・山芋や生姜・ニラ、にんにくなど
・りんご・ぶどう・さくらんぼ・オレンジ、桃など


④水分をしっかり摂る

NG習慣に挙げられる水分不足ですが、ここでは水分を摂る習慣をつけるための、佐藤さん流「9回の法則」が紹介されました。

 

・佐藤さん流!9回の法則で飲んでみよう!
起床時・朝食・合間・昼食・合間・夕食・お風呂前・お風呂後・就寝前

 

佐藤さん
なかなか水分を摂る習慣が身に付かないという方は、9回のタイミングで意識的に1回あたりコップ1杯(150ml〜)の水を飲みましょう。水が苦手な方にはハーブティーなどもおすすめです。

 

⑤積極的に酵素を摂る

佐藤さん
「酵素」はたんぱく質分子を指し、それが媒体となってわたしたちの体内で化学反応を起こすと言われています。酵素をしっかり持つこと=化学反応を起こしやすくなり、代謝を上げるチャンスに繋がります。

 

佐藤さん
酵素には、食事で取り入れられる酵素と、体内で作られ存在する酵素の2種類があります。食事で取り入れられる酵素は積極的に補ってあげましょう。

 

酵素を味方につけるために意識したいこと

①たんぱく質をしっかり摂る
②生野菜や生のフルーツを摂る
③発酵食品を摂る
④よく噛む(消化をスムーズにする)
⑤しっかり睡眠をとる(睡眠中に酵素は活性化)

 

佐藤さん
明日からでもいいので、ぜひ実践していただけると嬉しいです。代謝を理解して行動に移すことで、健康な身体へとつなげていきましょう。

 

参加者からの質問タイム


セミナーの最後には直接質問ができる自由な質問タイムがあり、さまざまな質問が飛び出しました。

 

Q.プロテインが摂れる食材や食品には色々な種類がありますが、食事誘発性熱産生におけるエネルギー消費量は、各種で変化しますか?

佐藤さん
たんぱく質のなかで、プロテイン・大豆製品・鶏肉などに細分化されたデータは、まだ実証されていません。まずはトータルのたんぱく質量を確保していただくことがポイントになります。

 

Q.飲み会などでビタミンやミネラルなどの栄養素が意識ができなかった場合、次の日に摂取しても間に合いますか?

佐藤さん
できればその日に摂っていただきたいですが、難しい場合は翌日に持ち越しても、決して無駄になることはありません。意識をすることがまず大切ですね。

 

Q.根菜類や冬の野菜が身体を温めるメカニズムはなんですか?

佐藤さん
このメカニズムには、東洋医学の考え方(陰と陽、寒い地方でとれる=身体を温めるという考え方)を取り入れています。

 

Q.糖質を減らしてたんぱく質を増やすと、お腹の調子を崩してしまいます。

佐藤さん
糖質をどれくらい減らしているのか、たんぱく質を摂取するときに脂質を摂り過ぎていないかなども関係するので、たんぱく質だけが原因になっているとは一概に言えません。一度自分の食生活を細かく振り返ってみると良いと思います。

 

Q.牛乳や豆乳は、水分に数えてもいいですか?

佐藤さん
諸説あるのですが、基本は水・お茶で考えていただきたいです。

 

Q.代謝を上げるために「食間の時間を空ける」などありますが、どうお考えですか?

佐藤さん
「オートファジー」ですね。短期間でやる分にはプラスの作用があることは実証されてます。アスリートの実践・長期期間での実践に関しては、実証がまだされていないのでわたしは積極的に推奨はしていません。

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