「トレーニングに効果的なビタミン・ミネラルの摂り方」セミナーレポート(正しく知りたいシリーズ第5弾)

 

「正しい知識を身につける」ことは、日々のトレーニングの効果を出すためにとても重要なことです。今回のテーマは、トレーニングの効果を上げたい人に、3大栄養素と同じぐらい気にしてほしい「ビタミン・ミネラル」。知識を深め、実践していくことによって、日頃のトレーニングの効果が変わってくる可能性があります。

 

「B&」では正しい情報をベースにした「自己判断」ができるよう、管理栄養士の佐藤彩香さんによる“正しく知っておきたい”テーマをシリーズ化。6月29日に開催された第5弾「トレーニングに効果的なビタミン・ミネラルの摂り方」についてのセミナーの様子をお届けします。

■セミナー講師

佐藤 彩香(さとう あやか)
管理栄養士

企業や保育園で栄養カウンセリング、献立作成、栄養計算、店舗運営を経験し、その後独立。健康を土台とした実践型の栄養サポートを行い、プロアスリート~スポーツキッズ、ダイエット希望の方など累計5,000人を超える人々と関わる。現在はパーソナル栄養サポート、セミナー講師、ライター活動、レシピ開発なども行いながら、「あなたのかかりつけ栄養士」として活動している。

OFFICIAL BLOG「三度の食事は三回のチャンス」

ビタミンミネラルの役割


皆さんはビタミンやミネラルに対して、どんなイメージを持っていますか?

 

「野菜や果物に多い」
「少量でも大切!」
「栄養の吸収を助ける」
「サプリに頼りがちな人が多い(泣)」
「よく分からないけど、大事そう」

 

佐藤さん
ビタミン・ミネラルは、どれほど摂ればよいのか具体的なイメージがつきにくく、過不足の判断をしづらい栄養素かなと思います。今日は、摂取をする上でのポイントなどもお伝えしていけたらいいなと思っています。

 

ビタミンとは?

 

佐藤さん
基本的にビタミンは不足しがちな成分、欠乏症を防ぐには食事から摂ることが重要です。必要量のビタミン摂取ができれば、コンディショニングの観点で大きな味方となってくれます。

ビタミンは全部で13種類あり、脂溶性・水溶性ビタミンに分けられます。

脂溶性ビタミン:体内にストックができる
水溶性ビタミン:尿や発汗で排泄されてしまうのでストックが難しく、こまめに摂る必要がある

 

佐藤さん
こまめにコツコツと摂る必要があるのが水溶性ビタミン、プラスアルファで意識していきたいのが脂溶性ビタミンです。よく、「野菜は炒めたほうがよいですか?生がよいですか?」と聞かれますが、油と摂ったほうがよいビタミン・そのまま摂ったほうがよいビタミンがあるので、一概に何がよいとは言えません。偏らない方法で摂っていきましょう。

 

上図の写真:佐藤さんおすすめの一冊『栄養の基本がわかる図解辞典』では、ビタミンの持つさまざまな役割が一覧で確認することができます。

 

ミネラルとは?

 

佐藤さん
ミネラルとは、4つの元素(酸素・炭素・水素、窒素)以外のものを指しますが、総称して「無機質」と呼ぶことがあります。ビタミンと同じく、体内で合成できないので、食品から摂る必要があります。過剰に摂り過ぎた場合、過剰症や中毒を起こす可能性があるので気をつけましょう。

 

ミネラルは、多量ミネラルと微量ミネラルに分けられます。

多量ミネラル:ナトリウム・カリウム・カルシウムなど
微量ミネラル:鉄・亜鉛・銅など

 

佐藤さん
微量ミネラルの「鉄分」は、特にアスリートが不足しやすいミネラルです。次回の貧血セミナーで取り上げ、理解を深めていきますが、鉄を意識することで生活が変わるほどに影響をもたらします。

 

そのほかのミネラル

カルシウム、リン:骨や歯の形成に関わる
カリウム、ナトリウム:むくみに関係し、不足を解消するには野菜や果物を多く摂る必要がある。
鉄分:赤血球と重要な関わりを持ち、酸素を運搬するために必要。
亜鉛:たんぱく質の合成に強く関わる。

 

佐藤さん
ミネラルは互いに作用していることが多く、チームになって働いているイメージを持ってください。リンは食品添加物に多く含まれることもあり、不足することは少ないです。普段からお野菜や果物・いろんな食品を食べていればミネラル不足の状態は避けることができます。

 

ビタミン・ミネラルの上手な摂り方

ビタミン・ミネラルの種類はあまりにも多い……ということで、今回のセミナーでは、佐藤さんが特にスポーツをする人と関わりが深い栄養素をピックアップしてくださいました。

 

ビタミンB群

 

佐藤さん
もうお馴染みとなりつつある、体内のエネルギー燃焼(代謝)のための回路の図ですが、よく見ていただくと、「ビタミンB群」の登場率が高いことがわかります。ビタミンB群をしっかりとっていかないと、代謝の回路がうまく作用しません。積極的に・こまめに摂ることを意識していきましょう。

 

佐藤さん
まずはビタミンB1、代謝に糖質が多く使われる高強度のトレーニング中には、ビタミンB1を摂って積極的に糖質を燃やし、エネルギーにしていきましょう。

ビタミンB1=代謝に関わる。エネルギー消費量が多いときに、特に意識的に摂りたいビタミン。持久力・スタミナのアップにも関わる。


ビタミンB1が多く含まれる食品=穀類・肉類・ナッツ類
一緒に摂りたい栄養素=アリシン

 

佐藤さん
アリシンは、香味野菜(たまねぎ、ねぎ、にんにく、ニラ)に多く含まれています。加熱に弱いので、生に近い状態で摂れるといいですね。ビタミンB1は穀類に多く含まれているので、主食の白米にプラスして、雑穀米や玄米を混ぜるだけでも摂取量は上がってきます。肉類にも豊富に含まれるので、たんぱく質を摂ることを意識すると、ビタミンB1も自然に摂れますよ。

 

ビタミンB2=代謝に関わる。不足すると、口内炎や口角炎、目の充血などが出やすいので、身体のサインを見逃さないで!

ビタミンB6=体内のたんぱく質・アミノ酸代謝に関わり、たんぱく質摂取量に応じて、必要量もUPする。

ビタミンB6が多く含まれる食品=玄米・ビール酵母・レバー・豚肉・うなぎなど

 

佐藤さん
もしお手元にプロテインがあったら裏面の表示を見ていただければと思いますが、ビタミンB6が入ってる場合もあります。プロテインと一緒に摂ってあげるのも、おすすめの方法のひとつです。

 

ビタミンA.C.E

 

私はビタミンA.C.Eを合わせて、「ビタミンエース」と呼んでいます。白髪やシミなどができる原因として、活性酸素が深く関わっていると言われていますが、ビタミンエースは活性酸素を除去する働きを持ちます。

日常的に激しい運動している方は呼吸量が多く、活性酸素も大量に発生します。細胞自身がダメージを受けてくると、疲労感や運動能力の低下につながりやすいので気をつけたいところですね。

 

ビタミンA=細胞分化・光の明暗・皮膚や粘膜の正常維持

ビタミンAが多く含まれる食品=緑黄色野菜(βカロチン)・レバー・うなぎ・しらす干し・卵黄・人参など

 

佐藤さん
免疫力を強化するために、粘膜維持・抗酸化以外にも、多くの働きをするビタミンですので、知っておいてほしい栄養素の一つです。

 

ビタミンC

 

佐藤さん
ストックができない水溶性であるビタミンCは、こまめに摂ることが大切になります。役割の「①たんぱく質(コラーゲン)の生成に関与」の補足ですが、コラーゲンをサプリで摂っている方は、ビタミンCを一緒に摂ることで効果を活かすことができます。


ビタミンCが多く含まれる食品=柑橘類の果物、野菜、芋類など

 

佐藤さん
野菜はできれば生で、緑黄色野菜はもちろん、淡色野菜でも十分に摂取できます。ほうれん草やブロッコリーは、蒸す・レンジでチンもおすすめです。芋類は、ビタミンCがコーティングされているので熱にも強く、アスリートの間食にもおすすめです。

 

ビタミンE

 

佐藤さん
ビタミンEは体内でのストックが可能な脂溶性ビタミンなので、油を避けた食事をしていると、ビタミンE不足になることがあります。アボカドなどにも多く含まれているので、ぜひ今からでも意識していただきたい栄養素です。


ビタミンEが多く含まれる食品=かぼちゃ、赤パプリカ、うなぎ、植物性油、ナッツなど

 

佐藤さん
朝にフルーツ、昼に野菜というルーティンが、意識的に組めると理想的だなと思います。ビタミンA・Eはストックが可能な脂溶性ビタミンであることを頭に置きつつ、水溶性ビタミンのビタミンCはこまめに摂るということを実践しましょう。

 

ビタミンD2・3

 

佐藤さん
骨の健康を維持する役割や、運動支配機能の向上に役立つビタミンD2・3は、骨格系の強化に必要不可欠な栄養素です。血液検査で知ることもできますが、ビタミンDが25ng/ml未満だと、筋肉の減少・骨折のリスクもあると言われています。

 

ビタミンD2・3が多く含まれる食品=魚・きのこ類
※紫外線(太陽の光)を浴びる必要がある

 

佐藤さん
室内スポーツの方や、紫外線・直射日光を浴びる機会のない冬などは積極的に摂っていく必要があります。必要量の目安だと、お魚ならば丸一匹。在宅ワークが続いて外に出ていない方や、お肉ばかり摂っている方は、ビタミンD不足に注意しましょう。将来の骨のキープ・免疫系にも関わってきますよ。

 

カルシウム・マグネシウム(カルシウムの調整役)

 

佐藤さん
聞き馴染みのある栄養素かと思いますが、カルシウムは骨代謝に重要な栄養素です。


カルシウムが多く含まれる食品=乳製品・小魚・豆製品・青菜など

 

マグネシウム

 

佐藤さん
カルシウムの調整役でもあるのが、マグネシウムです。特に、筋肉の収縮弛緩のバランスをとるのに重要な役割だと覚えていてください。


マグネシウムが多く含まれる食品=海藻類・大豆製品、お水

 

佐藤さん
お豆腐とわかめのお味噌汁は、マグネシウムを効率的に摂取できる理想的な献立です。

カルシウムとマグネシウムの摂取理想値:2対1

 

鉄・亜鉛

 

佐藤さん
酸素の運搬やエネルギー代謝のプロセスに重要な鉄分の不足は、鉄欠乏症貧血の原因となります。ある調査によると、女性アスリート集団の15~35%で、男性アスリート集団の約5〜11%で鉄欠乏についての問題を抱えています。

 

 

佐藤さん
実は、アスリートやスポーツをする人が不足しやすいと言われている栄養素が「鉄」や「亜鉛」です。次回のセミナーでは、「貧血」をテーマに鉄分・亜鉛などをさらに詳しく取り上げます。「食べて吸収したもので、身体は作られる」ことを意識しながら、自分の食習慣を作り上げていきましょう。

 

質疑応答

Q.ビタミンやミネラルを意識し、身体に変化が起きるのにどれぐらいの時間がかかりますか?

佐藤さん
個人差がありますので一概には言えませんが、体が変わっていくサイクルには、4ヶ月は必要かなと思います。


Q.マグネシウムについて、手軽に摂れる方法を教えてください。

炊飯する際に、一緒ににがりを入れてあげることをおすすめしています。


Q.亜鉛はあさりなど貝類にも多く含まれていますか?

佐藤さん
はい、貝類からでも摂っていただけます。熱を加えても大丈夫です。


Q.牡蠣が苦手な方にオイスターソースをお勧めしていますが問題ないですか?

佐藤さん
いいと思いますが、同時に他の食材からも亜鉛を摂る意識をしてください。

 

 

 

RELATED

PICK UP

NEW