サーカー壽梨コラムvol.1 私が大学でサッカーを始めた理由
どんな困難な状況に陥ったとしても、一試合負けたとしても、次の試合は0対0スタート。大学で女子サッカーを始め、その魅力に引き込まれた私がサッカーを盛り上げて、サッカー界に少しでも貢献したいと思った理由を記します。
短距離から投てきにシフト。負けず嫌いを自覚した陸上部時代
私は高校卒業までは陸上部に所属をしていて、やり投げと円盤投げの選手でした。スポーツ一家に生まれ、元陸上部で女子100メートルの選手だった母の遺伝子か、双子の兄も同じくインド全国大会の男子100メートルで銀メダルを取るほどの実力者でした。
私も元々は短距離の選手だったのですが、様々な大会に出場していく中で自分の体力に限界を感じていきました。予選から決勝まで、1日に数本のレースを戦い抜くには相当な持久力も必要になります。
しかし、ただ引き下がることはできない負けず嫌いさと、自分がより実力を発揮できる種目が他にあるのではないかというポジティブさを持っていた私は短陸上のなかで種目をシフトし、投てき種目へ。結果、やり投げ、円盤投げ両種目で州大会でメダルを取れるレベルまでに上達しました。
大学で女子サッカー部へ。“Growing phase”に携わる楽しさ
大学に入学後、新しいスポーツにチャレンジをしたいと思い、様々な部活やサークルなどを見ました。そこで出会ったのが東京大学ア式蹴球部女子(以下、ア式女子)でした。
まだ創部して3年しか経っていなかったア式女子は8割が初心者で、サッカーができるぎりぎりの人数で活動をしていました。もともとサッカーを見ることは好きだったのですが、経験もなく、体力面で短距離から離れた自分にとっては当然45分ハーフの試合をすることに不安しかありませんでした。
それでも入部を決めたのは、新歓中に先輩からある話を聞いたからでした。
ア式女子が作られた経緯は、「サッカーをしたい、そして東大女子がサッカーをできる場所を作りたい」という強い想いを持った3人の先輩方が想いをぶつけて様々なハードルを乗り越えて創部をし、「真剣に楽しくサッカーをする」といった想いに共感してくれている部員が集まっているのだと。
実際に入部した後は、歴代の先輩方が作り上げた空気の中で、サッカーの魅力にどんどん引き込まれていきました。「真剣に楽しく」という組み合わせが実在することを知りました。
プレー面では、個人的にもチームとしても様々な課題はありましたが、そのことがア式女子という組織、チームを作り上げて行っている一員であるということを実感させてくれました。
“Growing phase”に携われていることに面白さと可能性を感じたのです。とても充実した日々で、創部した先輩たちの想いを引き継ぎたいと強く思うようになりました。
自分自身の“レゾンデートル“を見つけた
私はア式女子に所属をし、そこから様々なチャンスを頂きました。
スカパー!の「レゾンデートル」(フランス語で“存在意義”という意味)という大学サッカー応援番組のナビゲーターを務めさせて頂いたことがきっかけで、プロサッカーの世界にも携わる貴重な機会を頂きました。その番組は大学サッカーの「今」に迫り、「存在意義」を模索する内容で、私は大学でサッカーをする意味について深く考えることが増えました。
自由があり、選択肢が無限と言っていいほど多くある大学生活の中で、なぜあえて大変な体育会を選び、サッカーをするのかなどを考えるようになりました。
そして番組を通して大学サッカーチームを取材をしていく中で、大学サッカーには様々なストーリーを持つ選手がいると気づき、その魅力に引き込まれていきました。高校でプロに上がれなかった選手や、オファーをもらったのにあえて大学を選んだ選手、プロを目指す選手やJリーグに内定している選手、そして学生にして日の丸を背負う選手や大学を卒業したらサッカーを離れようと考えている選手など、それぞれが置かれる状況でまっすぐにサッカーに向き合っています。
選手以外にも、マネージャーや運営に携わる学生たちもいます。大学サッカーでは大会やリーグなどは学生主体で成り立っています。自分と同じ学生が作り上げていることにも感動を覚えます。
ピッチ上だけでなく、オフザピッチでも組織の1人1人が強い責任をもって運営されているのが大学サッカーです。そこに外部組織や大人の協力が加わり、様々な人の思いが形になったものが大学サッカーです。そして各選手やチームには、それぞれ違ったストーリーや想いがあり、そこに感動が生まれるのが大学サッカーです。ここでは結果だけでなく、過程がとても大切なのだと感じています。
現状、Jリーグや高校サッカーは観客数や固定ファンが多いのに比べて、大学サッカーはそこまで盛り上がりを見せていません。関東2部リーグや都リーグになると1部よりもさらに観客数が減ってしまいます。
そして、女子サッカーになるとより減ってしまいます。それぞれが発信するという点で課題意識を持ち、取り組みを行う必要性あります。そして、前述したストーリーや他の人たちが注目していない部分を発信していくのが自分の役割だと取材を重ねるごとに感じました。サッカーに貢献するという点で自分の今の「レゾンデートル」はそこにあるんだと。
次回は、私がミスコンに出場した理由をお伝えします。