アレルギー、海外遠征、PMS。食事から考える解決法 管理栄養士・佐藤彩香×元競泳・竹村幸

アスリートの栄養指導や食事サポートを国内外で担当されている、管理栄養士の佐藤彩香さん。10年にわたりスポーツ界を支えており、現在は子供からトップ選手まで幅広く栄養やコンディショニングサポートを実施しています。

今回は、競泳元日本代表でB&の編集部員である竹村さんが、自身の経験を元に、栄養管理について気になることを質問。竹村さんは、25歳で小麦粉誘発性アレルギーを発症したことから、栄養にはかなり気をつけて現役時代を過ごしたそうです。アレルギーの人が抱える悩みや渡航・試合時の対応策、PMS(月経前症候群)と食事の関係など、パフォーマンスを発揮するための食事法について伺いました。

 

管理栄養士 佐藤 彩香(さとう あやか)

企業や保育園で栄養カウンセリング、献立作成、栄養計算、店舗運営を経験した後に独立。健康を土台とした実践型の栄養サポートを行ない、プロアスリート、スポーツキッズ、ダイエット希望の方など累計5,000人を超える人々と関わる。現在はパーソナル栄養サポート、セミナー講師、ライター活動、レシピ開発なども行いながら、「あなたのかかりつけ栄養士」として活動している。

写真:本人提供

<過去取材記事>
スポーツと食事が私を強くしてくれた。100件のテレアポから夢を掴むまで(スポーツ栄養士 佐藤彩香さん)

 

アレルギーを知り、適切な準備を

竹村:私は25歳の時に小麦粉アレルギーを発症してから、栄養や食事に気を遣うようになりました。栄養管理に力を入れるアスリートは増えていますよね。

佐藤:より高いパフォーマンスを求めて、栄養や食事に気を遣うアスリートは増えたと感じています。最近はチームが血液検査を推奨している場合も多く、よりアレルギーが発覚しやすくなったなと。

パフォーマンスを発揮するためには、自分の体の特性を知っておくことも大事です。小麦粉アレルギーは顕著に症状として現れますよね。一食を米に変えるだけで、疲労感の軽減や睡眠の質向上に繋がるケースも多いです。

 

竹村:私が一番困ったことは、海外遠征でのコンディショニングでした。選手にはどのようにアドバイスされていますか?

佐藤:海外の主食は小麦粉を使ったものが多いので、アレルギーの選手にはお米や食べられる食品を用意します。環境の違いで体調を崩すこともあるので、負担をかけないように食べ慣れたものを準備することが重要です。

私が帯同できない場合は、海外のスーパーなどで購入できる食品のリストをお渡しすることもあります。ただし、渡航してみないとわからない部分も多いので、選手と連絡を取り合いながら様子を見てアドバイスをしています。

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竹村:海外でも調達できる、おすすめの食材はありますか?

佐藤:芋や果実が比較的安く購入できる国が多いので、エネルギー補給としておすすめしています。バナナは1本の中に糖質が確保されていて、消化にも良いですね。あとは、キウイフルーツやベリー系も効果的です。酸味系の果物は抗酸化栄養(※)が含まれるので、疲労回復に繋がります。

※抗酸化栄養とは、老化の原因でもある酸化から身体を守ってくれる栄養素のことです。これらは身体が錆びつかないように酸化を抑えてくれる働きをもち、ビタミンCやビタミンE、ポリフェノール類、ミネラル類が含まれます。

 

竹村:試合の時に、優先的に摂取した方が良い栄養素はありますか?

佐藤:リカバリーを意識して、水分と糖質を摂取することが大事です。バナナや小さめのおにぎり、小麦粉アレルギーでない方は小さいパンをちょっと食べると回復につながります。

固形物が食べにくい場合は、水分と糖分が入っているスポーツドリンクやゼリー飲料がおすすめです。水分不足になると運動能力の低下にもつながります。選手が飲みやすいものを摂取するように伝えています。

写真:本人提供

食事からPMSと向き合って、なりたい私へ

竹村:生理時の栄養摂取については、どのようなことに気をつけると良いですか?

佐藤:生理中はタンパク質や鉄がどんどん抜けていくので、とにかくしっかり食事をとること。動物性タンパク質に含まれるビタミンB12は、貧血にも効果的で疲労感の軽減にもつながるので、積極的に摂取することをおすすめしています。

生理中は低血糖時の空腹に耐えづらい状態になるので、血糖値が下がる前に適度な間食をとることも大切です。高カカオのチョコレートやナッツ、ちくわ、チーズ、高タンパクなヨーグルトを摂ることで、血糖値の急上昇、乱降下を防ぎ、食欲やイライラも抑えることができます。

写真:本人提供

竹村:PMS(月経前症候群)の症状がある時に、摂取すれば良い食品は?

佐藤:今までは大豆に含まれる大豆イソフラボンが女性ホルモンのエストロゲンに似た働きをするため、PMSの緩和や生理不順の改善に効果があるとされていました。

最近の研究では、大豆イソフラボンそのものよりも、イソフラボンから腸内細菌によって生み出される成分のエクオールがより強い働きをすることがわかっています。

ですがこの腸内細菌は、日本人の2人に1人しか持っていないんです。自分が大豆イソフラボンからエクオールを生成できるのかを調べる「ソイチェック」(大塚製薬株式会社)というキットがあったり、持っていない人はサプリメント(※)もあるので、活用してみるのもひとつの選択肢ですね。
エクオールとは?【大塚製薬】
※「エクエル」(大塚製薬株式会社)など

 

竹村:アスリートをサポートしたいと思っている未来の栄養士の方に、アドバイスをお願いします。

佐藤:スポーツ界の現場の求人は、多くはないと思います。正確な知識を勉強しつつ、現場で働かれている方々と関係を構築してチャンスを掴むことがとても大事。自分で足を動かして、スポーツ現場の方に売り込んでいくガッツが必要だと思います。大学や大学院で学び、そこでの繋がりからキャリアを作っていくのもひとつですね。応援しています!

 

竹村:最後に、スポーツに取り組んでいる女性へメッセージをお願いします。

佐藤:女性は身体の変化に敏感です。その変化のひとつひとつに、日常生活での何気ない選択が関わっているんです。

毎日3食、年間1,000回以上にもなる食事の機会をなんとなく選ぶのではなく、「美しくいたい」「健康でいたい」などちょっとした目標を持って選んでいただきたいです。そうすると、変わっていく自分を楽しめると思います。自分自身が輝き、いきいきとした毎日を一緒に送りましょう!

写真:本人提供

佐藤彩香さん
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