大山加奈「変わるべきは周囲や社会」スポーツが将来の選択肢を奪ってはいけない【PR】
ダイナミックなスパイクで多くの観客を魅了した、元バレーボール女子日本代表の大山加奈さん。2010年に現役引退し、ご結婚、不妊治療を経て3年前に双子の女の子を出産されました。育児に奮闘しながら、講演活動やバレー教室講師、メディア出演など多方面で活躍中の大山さんが、出産直後に助けられたものとは?
これから結婚や出産などのライフステージを迎える女性アスリートの方々へ向けて、不妊治療のリアルや双子育児の情報収集法、キャリアと育児の両立についてなどをお話しいただきます。
目次
妊娠しづらい体と実母の癌。同時期に発覚し不妊治療へ
-まずは不妊治療を始められたきっかけから、教えてください。
30歳の頃、結婚を機に受けたブライダルチェックの結果がよくなかったことと、そのタイミングで実母の病気がわかったことから、不妊治療を始めました。
ブライダルチェックをしようと思ったのは、基礎体温が低温期と高温期の判別がしにくいくらい、とにかくガタガタで、妊娠を考えると自分の体が心配になったからです。お尻やお腹周りを触るとすごく冷たかったんですよ。
現役時代に腰の手術や痛み止め、睡眠導入剤などの薬の常用、自律神経の乱れなどもあり、自分の体は良くない状態なんだろうなとずっと思っていました。
案の定、結果はAMH値(※)があまり良くなく、医師からは「妊娠できるとしたら、35歳くらいまで」という現実を告げられました。そして時を同じくして、母の癌が見つかったんです。誰よりも孫を望んでいる母のために、早く授かりたいという思いがより強くなり、すぐに不妊治療を開始したのです。
※卵巣に成長途中の卵子がどれだけあるかを示すもの
-怪我による手術や鎮痛剤の服用などは、現在進行中で多くのアスリートが経験していると思います。現役のみなさんへのアドバイスとして、大山さんが得た教訓を教えてください。
人に頼ることは、自分を守ること。すごく有益であると捉えるべきだと学びました。
アスリートって、基本的に強くなければいけないという意識があって、弱みを見せたくないんですよね。実際、私もそうでした。
幼少期からエースやキャプテンを任されることが多く、それが私をより孤独にさせたというか、その影響から弱音なんて吐いちゃいけない、自分で何とかするべきだという思考に縛られていました。
そこから不安にかられ精神的に参ってしまい…。毎日のように、眠りやすくなるお薬を飲み、痛みに負けてはいけないと鎮痛薬に頼っていました。もっと素直に弱音を吐いていれば、心の負担も薬の量も減らすことができたかなと思います。
とはいえ、薬を飲むことに嫌悪感を覚えてほしくはありません。決められた用法、用量を守りながら、上手に付き合っていってほしいと思います。
アスリートも1人の人間です。自分だけで悩みを抱え込まないという意識を大事にしてもらいたい。ですから、自分を守るために、困ったら頼れる誰かに甘えてください。いろいろな人の力を借りてください。そう声を大にして言いたいですね。
そして、アスリートに関わる周囲の考え方や価値観も変えることが必要だと思います。そこで私は、PDM(プレーヤーディベロップメントマネージャー)の資格を取得しました。今年からヴィアティン三重などで活動させていただいています。
PDMとは、メンタルヘルスに配慮したカウンセリングや現役中のスキルアップ、セカンドキャリアについての相談など、アスリートをさまざまな角度からサポートする職です。アスリートの方々には、そういう存在がいるということをぜひ覚えていただき、頼ってもらえたらと思います。
心の不調って、本当に体へ直に出てきます。私自身も経験があるので、自分を守るためにいろいろな人の力を借りてくださいね。
出産する、しないの選択肢をなくしてはいけない
-アスリートが抱える悩みや不調のひとつに、女性特有の生理やPMS(月経前症候群)なども挙げられると思います。現役時代の大山さんは、いかがでしたか。
生理は毎月きちんとありましたし、PMSもそんなに酷くはなかったので、それらに不安は感じませんでした。ですが、ブライダルチェックや不妊治療で、「排卵していなかったかもしれない」とも言われたんです。生理がしっかり来ていても、排卵していないことがあるという事実に衝撃を受けました。
病院、しかも婦人科へ行くハードルは高く、学生の頃は特にそう感じがちです。でも、今不安を感じている人はもちろん、そうではない人も自分の体のことをしっかり知る機会を作ることが大事です。そして周囲の大人が選手の健康を守り、その先の将来にまで目を向けることも絶対に必要だと思います。
-婦人科で体をチェックしてもらうのも、自分を守ることにつながりますね。
そうです。バレー仲間で、ハードな練習をこなしていたからか、高校3年間ずっと生理がきていなかった子がいます。「(生理がないのは)楽だからこのままでいい」とか「病院へ行く時間が取れない」とか。そんなことを理由にして、彼女はなかなか病院へ行きませんでした。
でも、結婚や出産をする、しないという選択の自由がある中で、子どもを産む選択肢を、知らないうちに自らがなくしてしまうかもしれないのです。そういった可能性があることを、特に学生の若いアスリートたちにはしっかり伝えなければいけないと思います。
スポーツは本来、心と体の健康を作ってくれるもの。なのに、スポーツが原因で望んでいた将来や人生を手に入れることができなくなるなんて、絶対にあってはいけません。
-こういうことって、学校ではなかなか教えてくれないですよね。
そうですね。でも最近では、アスリートによるいろいろな情報発信が行われていて、私は、1252プロジェクトに参加しています。これは、生理に関する正しい情報をオンライン発信や授業などで楽しく学べるというプロジェクトです。そういったもので知識を得ることもできると思います。
そう考えると、私が現役だった頃と今では、周囲の理解度が全く違いますね。当時は、生理痛があっても我慢するのが当たり前で、仲間内でもその話題はしませんでした。ですが今は大きく変わり、男性指導者も向き合っている方が増えていると思います。
この時流に合わせて、アスリートの健康を守ることが何より大事だということがもっと浸透するといいなと心から思います。
-女子アスリートはもちろん、これから結婚や出産などのライフステージを迎える女性のみなさんへ、伝えたいことがあればぜひお願いします。
自分のキャリアか、妊娠出産か。日本の女性はそれらを天秤にかけて、どちらか1つを選択しなければいけない立場の方がまだまだ多いと思います。ですが両方を望むなら、どちらも手に入れてもらいたいです。
でも、だから女性のみなさん頑張りましょう!ではなくて。もうみなさん十分に頑張っていらっしゃいます。頑張るべき、変わるべきは周囲や社会であるとすごく感じます。
仕事に行くと「今日、お子さんは?」と絶対に聞かれるんですよね。でも、男性は言われないじゃないですか。まず、この価値観がおかしいなと。育児は、女性にしかできないこともありますが、基本的には夫婦でするのが前提です。そして、社会全体が子どもを育てていく意識を持ってほしいと思います。
社会が変わらないと、女性は罪悪感を抱えたまま、キャリアと育児を両立させていかなければいけません。そんな不条理はあってはならないこと。少しでもより良い社会になるために、経験者で、今も当事者である私が、いろいろなことを発信していきたいと思います。
これから、妊娠出産を迎えるかもしれない女性アスリートのみなさんが、キャリアと両立しながら育児を楽しめる社会になるよう励んでいきます。どうかみなさん安心してください、とお伝えしたいです。
人生初の困難に直面。自分がどんどん嫌いに…
-不妊治療のお話に戻りますが、当時の心境はいかがでしたか。
人生で初めて、自分の努力だけではどうにもならないものに直面して、すごく戸惑い、悩みました。これまでの私はバレーを続けてきた中で、目標に向かって必死に努力を重ね、その結果、全てを叶えてきているんです。
そのセオリーが通じない。しかも不妊治療って、ストレスが一番よくないと言われているので、目標達成のために頑張りすぎてはいけないんですよ。頑張っても結果は出ないことがあるし、頑張りすぎてダメだったら、それがストレスとなる。頑張らずに自分が望むところへいくという経験がなくて、すごく苦しかったです。
-アスリートは、成功体験を重ねてきた方が多いだけに、うまくいかなかった時はより一層フラストレーションを感じそうです。
試合や競技は、苦しいながらも楽しもうという思考に持っていくことはできますが、不妊治療に対して、私は無理でした。次第に、嫌という感情だけが私を支配していきました。しかも、年齢的に周りで妊娠出産する人が多く、それも合わせてしんどかったです。
大切な仲間たちの幸せな報告を当然ながらお祝いするべきなのに、私は心から祝福できなかったんです。そんな自分もどんどん嫌いになって…。もしかしたら、このことが不妊治療の中で一番辛かった記憶かもしれません。
ただ、開き直った時期もありました。喜べない自分を受け入れることができて、少し心が楽になりました。また、治療のお休み期間に、ワンコをお迎えしたんです。この存在に救われましたね。それ以降は、自分のことを傷つけたり、嫌いになることはなくなっていきました。
-他にも知っておくべきことがあれば教えてください。
まずは、お金が本当にかかります。今は保険適用になりましたが、当時は適用外だったので、体外受精は1クール60〜70万円。病院によってはもう少し多くかかるところもあり、相当な金額を費やすことになります。
あとは、やはり痛みですね。卵巣に針を刺して、卵子を採取します。想像しただけで、痛いじゃないですか。本当に痛いんですよ。ただ、麻酔も選ぶことができます。つまり麻酔をするレベルの痛みだと認識してください。
この採取以外にも、ホルモン補充のために自己注射を毎日しました。その副作用なのか、ホットフラッシュのように顔が熱くなって、バーっと汗が出たり、メンタルにも影響が出たりしました。
また、病院へ来るよう前日に連絡が来たり、病院へ行っても長時間待つことがあったりするので、予定を立てることや仕事との両立が難しくなると思います。
大変なことばかりお話ししましたが、妊娠できたこと以外にも良かったことはあったんです。それを感じられたのは、病院の待合室です。シーンと静かなのですが、頑張っている人がこんなにたくさんいるんだと勇気づけられました。仲間意識じゃないですが、ここに来れば同志に会える、そんな感覚も持てましたね。
多胎妊娠、育児の情報は世の中に全然ない
-そうしたご経験を経て双子を妊娠、無事に出産をされました。ですが、情報収集に苦労されたそうですね。
妊娠も出産も初めて、さらに多胎ということで、わからないことだらけでした。双子を妊娠する割合は、夫婦100組に対して1組と言われていて、まだまだマイノリティーなんですね。なので、情報が本当になかったんです。身近に双子のママもおらず、そこで役立ったのがSNSでした。同じ妊娠週数の方々をフォローして、コミュニティを作ったのです。
肌着の種類や枚数、必要なようで実際は要らないものなど。そういったことを知ることができてすごく助かりました。また、悩みや相談ごとを共有できたのもありがたかったですね。
-なかでも、印象に残っていることは何でしたか。
お風呂の入れ方です。赤ちゃん2人をお風呂に入れるって、どう考えても無理なんです。みなさんどうやっているのだろうと。これは、多くの人が知りたかったようで、1人はバケツのようなものに入れて、とかそういう工夫を学ぶことができました。
また、私は帝王切開で出産したのですが、その傷あとのケアにいい専用テープ『アトファイン™』があると知ったのもSNSです。「絶対に使ったほうがいい!」とみなさんおっしゃっていて、すぐに購入しました。その後、病院でも出してもらえました。
-実際に使用されていかがでしたか。
アトファイン™は、皮膚の突っ張りや衣類との摩擦など、さまざまな刺激から傷あとを保護してくれる肌に優しいテープです。
何といってもよかったのは、1週間くらい貼りっぱなしでOKなこと。特に出産直後は、自分のことをする余裕が全くなく、ひたすら授乳とオムツ替えをして1日が終わっていきます。テープの貼り替えなんて、本当にちょっとした作業ですが、それさえも難しいのです。
結構長い期間使い続けて、今は痛みや痒みは一切なく、傷ができたあとも目立ちません。帝王切開される方であれば、本当におすすめします。また、帝王切開の傷跡以外にも使えるので、アスリートの方なら怪我の手術による傷あとケアにもいいと思います。
-ありがとうございました!
アトファイン™とは?
今回ご紹介したのは、手術後の傷あとケア専用のテープ「アトファイン™」です。医療用テープを製造するニチバンの「アトファイン™」は、肥厚性瘢痕・ケロイドの要因となる伸展刺激、摩擦刺激、紫外線、はく離刺激から傷あとを守ります。
※「TM:trademark」
インタビュー動画もぜひご覧ください!