自分の身体は、自分で守って。大山加奈×坂梨亜里咲(mederi代表)
女性の健康をサポートすべく、オンラインピル診療サービスなどを展開するmederi株式会社。B&では、女性アスリートの抱える課題を解決するために、同社代表取締役の坂梨亜里咲(さかなし・ありさ)さんと女性アスリートとの特別対談企画をスタートします。
第1弾のゲストは、元女子バレーボール日本代表の大山加奈(おおやま・かな)さんです。
大山さん自身、「生理が止まっていないと(プレーヤーとして)一人前ではない」と聞いた経験もあるそう。目の前の試合と向き合うアスリートは、自分の身体をないがしろにしがちです。それでもなぜ、10代〜20代のうちに正しく対応すべきなのかーーー不妊治療の経験がある大山さんと坂梨さんが、それぞれの体験と思いを語り合いました。
(聞き手:竹村幸[元競泳日本代表]、文・市川紀珠)
目次
「生理は、来ない方がラク」と思っていました
女性アスリートは、生理やPMSなど女性特有の不調と向き合いながら競技を続けられていることも多いと思います。大山さん自身に、こうした悩みはありましたか?
他にも生理痛が重くて吐いたり熱を出してしまったり、貧血で走れなくなったりしている子も目の当たりにしてきました。生理に悩まされている選手は、本当に多かったですね。
現役時代は「生理が来ないほうがラク」と思っていましたし、無月経でも気にしない選手もいました。「ストレスや練習が多いからだよね」と放っておいていましたね。生理が来ないことが異常だ、と捉えられていなかったんです。
生理痛はあって当たり前、我慢しないといけないと思っている方が多いのではないかと。人によって痛みが違うから相対的に捉えることもできないし、厄介なものです。
練習を休むことは、許されていたのですか?
現役当時は私自身も無知でしたし、悩みを抱えている仲間に対して何もしてあげられなかったです。「我慢するしかないよね」「痛み止めで抑えるしかないよね」と思うしかありませんでした。
ー生理不順や無月経を放っておくと、将来どのようなことが起こりうるのでしょうか?
「産婦人科=子どもを産むための場所」と思っていたんです
ー大山さんが現役だった頃は、ピルを使うことに対してどのように感じられていましたか?
ー産婦人科に対して、どのようなイメージがありましたか?
生理中のお悩みはいかがでしたか? サッカー選手からは、「ナプキンが落ちてしまうこともあり、プレーに集中できない」と聞いたことがあります。
短パンからタンポンの紐がはみ出している子もいましたね。バレーはユニフォームがピタッとしているので、ナプキンにしろタンポンにしろ、見えてしまうのではないかと不安でした。タンポンをつけた上で、薄いナプキンをつけておくようにしていました。
ー競泳の場合、ピルで試合日から月経を移動させることが多かったのですが、バレーはいかがでしょうか?
ー感じている選手もいました。でもむしろコーチの方が「(ピルの影響で)太ってしまうのではないか」と間違った心配をしていることが多かったように思います。今でこそコーチに対しても講習会があったりと、正しく理解されるようになっていますが。
不妊治療は、パートナーとのすり合わせが大事
ー大山さんは、2021年2月に出産されていますが、不妊治療を受けられていましたよね。きっかけがあったのでしょうか?
先生には「血液中のAMH(アンチミューラリアンホルモン)(※)が42歳くらいの人の値。子どもができるとしたら35歳くらいまでかな」と言われました。そこから急いで、不妊治療のクリニックに通い始めたんです。
※卵巣年齢を計る検査で、自分の卵子がどれくらい残っているかの目安になる。
現役時代に大きな手術を経験していますし、痛み止めや精神安定剤も飲んでいました。「妊娠しにくい身体になっているかもしれない」と薄々思っていたものの、改めて聞くとショックでしたね。「子どもは産めるもの」と何の疑問も持たず思い込んでいたのが、覆されました。
ーそこから、さまざまな不妊治療に取り組まれたかと思います。治療中、最も大変だったときはいつでしたか?
「体外受精までステップアップしたら、子どもを授かるだろう」と、どこかで期待していたんですね。結果を見た時は、苦しかったです。
いろいろな家族のあり方があると思います。よく考えてみたら子どもは、絶対に必要というわけではないこともあるでしょう。当事者同士で、お互いの思いを把握しておくことが大切だと思います。女性だけの問題になってしまわないように、二人で向き合って欲しいですね。
女性アスリートへ、「自分の身体は自分で守って」
ー今の10代や20代の若いアスリートに必要だと考えることを教えてください。
栄養に関しては、リカバリーを意識した食事をとって欲しいです。私自身、現役時代に怪我をしたのも食生活の影響があったと感じています。今だと調べればたくさん出てくるので、自分から情報を見つけてもらいたいです。
あとは、周りの大人も正しい知識を伝えてあげて、選手を守ることも大事かなと。
ー周りからのサポートも大切ですよね。最後になりますが、改めて女子アスリートへのメッセージをお願いします。
※黄体ホルモン(レボノルゲストレル)を子宮の中に持続的に放出することで、子宮の内膜に作用し、避妊と過多月経・月経困難症といった生理に関する症状を緩和する効果がある。
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