「もっと、選手主体でアクションを」南條里緒が発信にこだわる理由。(ニッパツ横浜FCシーガルズ)
なでしこリーグ1部ニッパツ横浜FCシーガルズ所属の南條里緒(なんじょう・りお)選手。サッカー選手として活躍する傍ら、サッカークラブの営業として一役を担っています。プレイングワーカーとしての生活や、サッカーに対する熱い想いについて語っていただきました。
選手としての視野が広がるきっかけとなった、「プレイングワーカー」の考え方
ー大学卒業後、プレイングワーカーとしてのキャリアを選んだ経緯を教えてください。
私が大学生の頃はまだWEリーグ(現在の女子プロサッカーリーグ)が設立されていなかったので、当時は一般企業への就職を考えていたんです。そんな中、仙台大学の卒業生で、当時ふじざくらでコーチとして活躍されていた田口さんが、声をかけて下さり、選手としても、社会人としても一流というコンセプトに魅力を感じました。私もサッカーと仕事の両立に挑戦したいと思い、FCふじざくらでのプレイングワーカーというキャリアを選びました。チームに入った当初は、あくまで仕事がメインという気持ち。サッカーを続けられたらいいなくらいの考えでした。
ー当時はどのようなお仕事をされていたのでしょうか。
レジャー企業の正社員としてウォーターサーバーやチームのスポンサー営業と、ゴルフ場のキャディをしていました。朝7時に出勤し、仕事を終えた後、大体夕方5時から練習。今思えば、人生で一番しんどかった日々かもしれません(笑)。
ー大変な日々だったと思いますが、その中で得られたものがあればお聞かせください。
その困難とも言える日々を乗り越えたことが、大きな自信になりました。また、正社員としての経験は、社会人としての基盤を築くだけでなく、サッカー選手としての視野も大きく広げてくれたと思います。特に、お客様やスポンサーの方々との交流を通じて、多くの方々に支えられていることを実感できました。
ー周囲のサポートを知ったことで、サッカーへの向き合い方にも変化があったのでは?
ありましたね。学生の頃は、純粋に楽しむ気持ちだけでサッカーをしていたのですが、社会人になってからは、日頃から応援して下さっているパートナー企業、営業先の方々、雇用して下さる企業の為にも結果で恩返ししたい、と強い責任感を持ってプレーするようになりました。同時に、選手としての覚悟も芽生えたと思います。
ーFCふじざくらからニッパツ横浜FCシーガルズ(以下、シーガルズ)へ移籍されて、さらに変わった部分はありますか?
なでしこリーグ1部での戦いになり、選手としての意識はさらに高まったと思います。有料試合だからこそ、チケットを買ってくださるお客様に喜んでもらえるプレーをしたいという思いが強くなりました。FCふじざくら時代と比べても、大きく成長できている気がします。
スタッフ業務を通じて学んだ、発信することの大切さ
ーシーガルズに来た経緯もあらためて教えてください。
FCふじざくらにいた頃、年に数回シーガルズと練習試合をしていたんです。そのうちの1試合で、プレーの調子が良くて。それがきっかけで、チームから声をかけていただきました。
ークラブスタッフとしてどのような仕事をされているのですか?
入団当初は自分でテレアポをして、男子チーム(横浜FC)の新規スポンサー獲得をしていました。今はメインで営業事務をやっているのですが、今後選手ならではの視点で、商品開発の企画に携わってみたいという気持ちもあります。
ープレーをしながら仕事をする中で、良かったことや、変えていきたいことはありますか?
スポンサーさんとお話する中で、チームを支援してくださる方々の想いや背景を深く知ることができて良かったです。
一方で、私たち選手自身が地域交流やチームの宣伝にもっと積極的に関わっていく必要性があると実感しました。オフシーズンにクラブスタッフがチームについてSNSで発信する機会があったのですが、もっと選手主体になってできることもあると思いましたし、自分からアクションしなければいけないなと。これまで以上に、もっと何ができるか選手同士で考えていきたいです。
ー特に印象に残っているイベントや取り組みがあれば教えてください。
今年7月に行った「シーガルズENJOYフェスタ」です。選手とファンの皆さんがグラウンドで一緒に体を動かすイベントで、すごく反響をいただきました。私たち選手も実際にファンの皆さんと交流できて嬉しかったですし、こういった機会の必要性を改めて感じました。
たくさんの笑顔が溢れた素敵な時間でした✨
暑い中ご参加いただいた皆さんありがとうございました!#yfcseagulls #yokohamafc https://t.co/50mZkb2d8c pic.twitter.com/b3kTmHPmAo— ニッパツ横浜FCシーガルズ【公式】 (@yfcseagulls) July 27, 2024
ーチームの広報の必要性を実感する中で、個人で発信する選手も増えましたよね。
そうですね。中には「サッカーに集中すべき!」みたいな意見もありますが、自身の価値を高めるため、女子サッカー界の認知度向上、発展のためにも発信することは大事だと思います。
ー選手だからこそ伝えられる側面もあると思います。
新規企業様へ訪問させてもらう際に、自分の中での細かい信条やサッカーに対する想いは伝えるようにしています。どうしたらチームを応援したいと思うのか、逆に自分ならどうしたら応援したいと思えるのかを考えてます。シーガルズでいうと、すごくみんなサッカーに対する熱意があり、本当に仲が良いので、もっとたくさんの方にチームを知ってもらいたいです。
ー引退後のキャリアについてはどのようにお考えですか?
人とコミュニケーションをとるのが好きなので、人と携わる仕事をしたいです。体を動かすことも好きなので、パーソナルジムの仕事にも興味があります。
プレーも仕事も。止まらないサッカー愛
ーここまでお話をお伺いする中でも、シーガルズへの愛が溢れていますね。
先輩方が作り上げてくださった、互いに切磋琢磨できるこの環境に感謝の気持ちでいっぱいです。今年はチームの一員として、とにかく優勝したい気持ちが大きいですし、所属企業の横浜FCへの恩返しもしたいです。
ーご自身にとってサッカーはどんな存在ですか?
私を作り上げてきてくれたものです。人生の中で1番嬉しかったことも、悲しかったこともサッカーといっても過言ではないくらい、私の中でサッカーという存在が大きいです。だからこそ人生がより豊かになりましたし、サッカーを始めてたくさんの仲間に出会うことができました。
ですが、良いことばかりではないんです。怪我に悩まされることも多く、サッカーを辞めてしまいたい…と思うこともありました。それでも、支えてくれる方々がいる限りまだまだサッカーを続けたいです。結局のところ、やっぱりサッカーが好きなんだと思います。
ー最後に、女子サッカーの魅力を教えてください。
キック力やスピードは男子には及ばないかもしれませんが、女子ならではのしなやかな動きやボールコントロールなどの技術は魅力だと思います。男子に負けないくらい、女子も日々サッカーと向き合い、強度高く、バチバチプレーしているので、ぜひ試合を観に来ていただきたいです!