「きれいさ」も、女子アスリートには不可欠。中川聴乃がブランドを立ち上げる思い

写真:本人提供

女子バスケの強豪校桜花学園出身で、2015年の引退まで日本代表として長く活躍し続けた中川聴乃(なかがわ・あきの)さん。引退後は、試合解説やメディア出演を中心に活動しながら、高身長や足が大きい方向けのシューズブランド「JB AKINO」を立ち上げたり、プロテイン「ビューティーナイトプロテイン」の監修に携わっています。

「アスリートは、きれいであることも重要な要素」。現役時代の経験が、今の活動に繋がっているそうです。それぞれの立ち上げに至った経緯や思いを伺いました。

(聞き手・文:競泳元日本代表 竹村幸)

 

「きれいさ」は、アスリートに必要な要素

ー「JB AKINO」の立ち上げに至ったきっかけを教えてください。

私自身、もともとファッションが大好きなんです。その中で、足が大きいため、日本国内で自分に合うシューズを探すのが難しいと感じてきました。コロナ禍で海外に行けず、「なかなか(シューズが)ないんですよね」と周囲に話していました。

するとタイミングよくレディースシューズブランド「JELLY BEANS」さんとの繋がりができて、「一緒にブランドを立ち上げませんか?」とお声がけいただいたんです。いつかやってみたいと思っていたので、嬉しかったですね。

写真:本人提供

ー全く違う分野への挑戦でしたが、難しさはありましたか?

手厚くサポートいただいたおかげで、スムーズに進めることができました。

シューズが完成した時は、達成感があり嬉しかったです。「これなら、いろんな人に知ってほしい」と思いましたね。今まで誰かにモノを勧めたことがなかったので、不思議な感覚でした。

私のようにサイズに困ってきた高身長アスリートにも、おしゃれを楽しんでもらいたいです。シンプルさを大切にしながら、流行も取り入れつつ作っています。

ー「ファッションが好き」とおっしゃっていましたが、現役時代、アスリートがおしゃれをすることに否定的な風習も強かったのではないかと思います。

現役の時はルールがあったので、メイクもあまりしていませんでした。でも今思うと、違和感があるなと。「きれいでありたい」と思うのは当然のことで、メイクをするのも自由であるはずです。

昔は「おしゃれをしているアスリートは、競技に集中していない」と見られがちでした。特に結果が悪かった時に、プレーではなくおしゃれをしていることに対して責められることもありました。でも、私はアスリートに必要な要素だと思うんです。おしゃれをすることでオンとオフが切り替えられ、気持ちが和らぎます。

最近ではネイルをする選手もよく見かけますし、チームによっては髪色も自由になってきました。当然行き過ぎた行動はよくないと思いますが、選手ら自身の「見られている」意識づけは重要だと思います。「きちんとしたい、凛としたい」という思いが、プレーにも良い影響を及ぼすのではないかと。

ープロテインも監修されていますよね。

引退後は環境が変わり慣れないお仕事も多く、体調を崩すことが多くなりました。そこから、社会人として体調管理の大切さに気づき、向き合うようになりました。サプリメントも摂取する中で、体に良くてずっと飲み続けられるプロテインを作りたいと思い、企画しました。

精神面での安定や栄養バランスの向上を目指し、健康面や美容面の栄養バランスを考えて作りました。また続けて飲んでもらえるように、安全面にもこだわっています。

ー引退すると、体調管理が疎かになってしまいがちですよね。

そうなんです。私も疎かにしてしまっていましたね。

現役時代に怪我をした経験が、引退してからの体調と向き合うヒントになりました。マッサージやストレッチだけではなく、栄養や睡眠が体調を整えるには重要なことなんだと気づきました。

現役時代の中川さん<写真:本人提供>

自らコミュニケーションをとることが、チャンスに繋がる

ー現在は解説やメディア出演など多岐にわたって活動されていますが、引退後のキャリアはどのように考えていたのでしょうか?

現役中、怪我で自信をなくした時期がありました。練習もできず、目標を持つことができなくなってしまったんです。人と関わることも少なくなり、引退をした時には心が疲れ切っていました。

でも引退後のキャリアについて考えた時、このままではいけないなと。積極的に人と関わるようにして、社会経験を積むようにしました。

アスリートは、取材で一方的に質問をされることが多く、自分から質問をする機会があまりありません。なので、最初のうちは人に興味を持つことが難しかったです。自分なりに努力して、いろいろな人とコミュニケーションをとるようにしました。

そうしているうちに今の事務所と出会い、解説やメディア出演などのお仕事を始めました。仕事を通じてさらに多くの人と繋がることができていて、チャレンジしてよかったと思っています。

チャレンジする怖さも、いちから何かを作っていく不安も、全ての経験が私の財産になっています。

試合の解説をする中川さん<写真:本人提供>

ー今後の目標を教えてください。

引き続きアスリートや子どもたちに貢献できる活動をしていきたいと思っています。特に、具体的な形はまだですが、バスケを通じて子どもたちと触れ合う機会を作っていきたいなと。

中川さんが関わられたバスケクリニックの様子<写真:本人提供>

やっていきたいことは沢山ありますが、1人でできることには限界があります。周りを上手く巻き込んでやっていきたいです。

ー最後に、スポーツに取り組む女性にメッセージをお願いします。

人との出会いが人生を大きく左右すると実感しています。簡単ではありませんが、行動を起こし続けることで、出会いは引き寄せられます。

そして競技内外に関わらず目標を持って叶えていく過程に、心を動かされる人はたくさんいると思うんです。私もアスリートとして、影響を与えられる存在であり続けたいと思っています。ぜひ一緒に頑張っていきましょう!

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