黄川田莉子が走る「プロテニス選手への道」。初グランドスラムから振り返る準備とメンタル
テニス選手を目指し活動し続け、2024年11月1日にプロ転向を果たした黄川田莉子(きかわだ・りこ)選手。2024年1月に開催された全豪オープンジュニアで初のグランドスラムに出場。惜しくも初戦敗退となりましたが、テニスプレーヤーとしてのキャリアを着実に積み重ねています。これまでのキャリアや全豪オープンジュニアでの経験、更に今後の目標についてお話いただきました。
(取材日:2024年8月28日)
何も分からず掲げたグランドスラム出場という目標
ーテニスを始めたきっかけを教えてください。
何かスポーツを習いたいなと思っていたところ、近くにテニスクラブがあったので始めたんです。実際にやってみると楽しくて、次第に熱中していきましたね。
ーテニスのどんな部分に熱中したのですか?
テニスはいつでもどこでもできるわけではなくて、コートやラケットがないとできない競技なので「今日はテニスの日だ!」という特別感が好きでしたね。
ー昨年の全日本選手権、初めて一般部門で全国大会に出場されました。テニスを競技として捉えるようになったのはいつ頃ですか?
小学3〜4年生でテニススクールの育成クラスに入る時には「グランドスラムに出場したい!」と言っていました。その当時はグランドスラムに出ることの難しさや出場の仕方も全く知らなかったです。本気でテニスに取り組もうと思ったのは中2くらい。そこからもっとテニスを頑張りたいと思うようになり、高校は通信制を選びました。
この頃から徐々に大きな大会に出られるようになり、グランドスラムジュニア出場権の獲得を目指して、ポイントを重ねていきました。最近は世界ランキング入りしたことで一試合一試合集中して臨めるようになったと感じています。
「強く愛される選手になりなさい」元Jリーガーの父の教え
ーお父様は元々サッカーのプロ選手(※)だそうですね。テニス選手として活動していく上で、お父様から何かアドバイスはありましたか?
父には幼少期からずっと「強く愛される選手になりなさい」と言われ続けてきました。アスリートとして周りの人にはきちんと笑顔で接するなど、プレー以外の振る舞いについて教えてもらいました。
※父の黄川田賢司さんはコンサドーレ札幌や川崎フロンターレでプレー
ー今回の全豪オープンジュニア出場を通して、プレー以外で気づいたことや学んだことはありますか?
レベルの高い選手は準備がしっかりしているなと感じました。ジュニアでは私も含め、試合と同じくらい集中してウォーミングアップをする選手はほぼいないのかなと。しかしトップレベルの選手たちは、試合前から本番さながらの集中力で臨んでいるんです。最近は私もアップから集中して取り組むようにしています。結果的に、試合中のメンタルも安定し、プレーの質も向上しました。
ー初めてのグランドスラムを振り返ってみていかがでしたか?
試合当日はいつもより大きな会場を前に一気に緊張してしまい、思い通りのプレーができませんでした。競った場面でも詰めの甘さが出てしまったかなと思います。しかしいつもと全く異なる環境でプレーできたことは、純粋に楽しかったです。
ーいつもより大きな会場でのプレー、緊張しますよね。
私の場合、緊張するとプレーが消極的になってしまうんです。普段はいい意味で周りが見えていないのですが、この時ばかりはいつも以上に周りが目に入ってなかなかプレーに集中できませんでした。
試合では、なぜかボールがいつもより速く感じられ、足のタイミングが合わず何度ももつれてしまいました。逆によくあんなに点が取れたなという感覚です。次回以降は自分の実力を発揮するためにもまずは体調管理をしっかり行い、いつも通りのプレーができればと思っています。
ー今回の大会で、特に参考にしたいと思った選手はいますか?
世界ランキング1位のシフィオンテク選手です。劣勢からの逆転試合を現地で観戦しましたが、彼女の1点への集中力、自分のペースを崩さないプレースタイルには、映像では伝わらない迫力がありました。攻めるのに精度の高いプレーができていてあまり崩れることがないんです。ピンチの場面でも気持ちを持ち直せる強さは流石でしたし、私も見習いたいです。
ーこれから観戦する方々に、どういった部分を見てもらいたいですか?
とにかく元気にプレーしている所を見てほしいです。攻めのテニスを目標にしていますが、ピンチからの一発逆転やアグレッシブなプレーなど、観る人にドキドキする瞬間を届けられたらと思っています。
今後はプロとしてグランドスラムを目指し活動
ー現在、重点的に取り組んでるトレーニングはありますか?
毎日、重い縄跳びを600回飛んでいます。全身運動による体力強化や、継続力を身につけることが目的です。その他にも、スピード不足を克服するために体幹専用のジムにも通っています。
ージュニア育成の活動にも関わられているそうですね。具体的な活動内容について教えてください。
コーチの地元でもある宮崎で、ジュニア選手向けのテニス教室を開催しました。
当日は小学生から高校生まで幅広い年代の子たちと、テニスを通じて様々な交流ができてとても楽しかったです。ゲストとしてイベントに参加することが今までなかったので新鮮な気持ちになりました。みんながプレーの度に「かわいい!」と言ってくれたことも嬉しかったです(笑)。
今回のイベントで、改めてテニスの持つ本来の楽しさを実感できました。今後は、男女や年代関係なくテニスで交流するイベントなどをやってみたいですね。
ープロに挑戦するにあたって不安なことはありますか?
進路を決めるにあたり、元プロテニス選手の杉山愛さんをはじめ、様々な方に相談をして、「可能性があるならまず挑戦して、ダメだったら別の道を探せばいいと思うよ」という言葉を多くの方からいただき、失敗に対する不安が軽くなりました。強いて言えば、実績があまりないので、所属先が決まるかスポンサードしていただけるかなど活動資金の面で不安に思うこともあります。
ー今後の目標を改めて教えてください。
グランドスラムで活躍できるよう、まずは世界ランキングを上げるために頑張っていきたいです。応援よろしくお願いいたします!