【アスリートの働き方】キャリアプランニングのすすめ
競技を長く続けていくために、より高いレベルを求めるために、切っても切り離せない「お金の問題」。選手によって競技環境は様々ですが、競技一本で収入を得ている女性アスリートは少ないのが現状です。将来の不安に駆られずに、競技に集中できる環境をつくるためにも、働き方やお金にまつわる知識を身につけていきましょう。
「女性アスリート必見!キャリアプランニングのすすめ」スタートです!
■教えてくれる人
浦辺 里香 (うらべ りか)
特定社会保険労務士
早稲田大学卒業後、日本財団、東京中日スポーツ新聞で勤務。社労士試験に合格後、事務所を開業し独立。その翌年、紛争解決手続代理業務試験に合格し、特定付記。本業と並行し、SSS(サムライ・スポーツ・ソリューションズ合同会社)の代表を務め、アスリートのセカンドキャリアをサポート。クレー射撃(スキート)元日本代表、ブラジリアン柔術紫帯(2020ヨーロピアン選手権青帯フェザー級ダブルゴールド)。
浦辺さんの個人ブログはこちら。
土台をしっかり作ること
呼吸一つで記録が変わり、一瞬の躊躇が勝負を決してしまう、そんなアスリートにとって、競技に集中することはマストの条件です。そして、その集中力を保つためには、生活の土台がしっかりしていないといけません。
上の図をご覧ください。これはアメリカの心理学者、マズローが発表した「欲求5段解説」のイメージ図です。
マズローは「人は、自己実現(一番上の欲求)に向かって、常に成長する」と考えています。
具体的には、
①生理的欲求・・・生命を守りたい(食べること、寝ることなど、生きるために必要なこと)
②安全欲求・・・身の安全を守りたい(敵から身を守る、安心した暮らしを送る)
③社会的欲求・・・他の人と関わりたい、集団に属したい(会社や家族から受け入れられる)
④承認欲求・・・他の人から認められたい(会社で出世する、良い成績でほめられる)
⑤自己実現欲求・・・なりたい自分になる(他人の目を気にせず、自分自身の可能性を追い求める)
このように「下の欲求が満たされたら、一つ上の欲求に上がる」という感じで、人の欲求はステップを踏んで変わっていくというわけです。みなさんは今、どのレベルにいますか?
「競技を続けること」はどこのレベル?
それでは、この「マズローのピラミッド」に当てはめた時、アスリートが競技を続けることは、どこのレベルになるのでしょうか。
答えは「③社会的欲求〜⑤自己実現欲求の間」です。
なんとも中途半端な答えですが、アスリートとして「何を求めるか」によってレベルが異なります。とにかく結果を求めるアスリートと、ひたすら自分のために競技に打ち込むアスリートとで、目指す目標も方向性も違ってきます。
しかし、最も大切なことは「①生理的欲求と②安全欲求」の上に、「③社会的欲求=競技」があるということです。繰り返しになりますが、下の欲求が満たされないと、上の欲求へは行けません。もしも背伸びをしてしまうと、思わぬミスや大失敗をまねいてしまいます。
「競技力向上とお金の問題」は切っても切り離せない
最初にお話しした「生活の土台がしっかりしていること」とは、すなわち「お金を稼いで、自立した生活が送れること」を意味します。マズローのピラミッドでいうところの「②安全欲求」が、最低限の生活を維持するレベルにあたります。
みなさんの中でも聞いたことのある方がいるかもしれませんが、
「高卒のプロ野球選手が高額な年俸をもらい、先のことを考えずに派手な生活を送ってしまったため、翌年度の住民税が払えずに借金をすることになった」
「練習時間を増やすために夜の仕事(ホステス)を始めたが、ブランド品をプレゼントされたり、チヤホヤされることに味をしめた結果、競技を引退してしまった」
などが、リアルによくある残念な実話です。
このコラムを読んでくださる女性アスリートのみなさんが、安心して競技に打ち込めるように「どんな働き方が自分にとってベストなのか」を考えていきましょう。
競技のためにも「働き方を選ぶ力」をつける
競技に集中するためには、なによりも「お金」の心配を解消しなければなりません。
”日常生活を普通に過ごせて、練習や試合、海外遠征にも行ける”というのが、アスリートにとって理想の生活です。
しかし、お金を稼ぐために仕事中心の生活となると、練習時間の確保が難しくなる→気持ち的に焦りが生じる→その結果、集中できずにパフォーマンスが落ちる、という「負のスパイラル」にはまってしまう可能性があります。
では、どんな働き方を選ぶのがベストなのでしょうか。仕事をする上での主な働き方は、以下の3つです。
・アルバイト・パート
・社員(派遣社員、契約社員含む)
・個人事業主(業務委託含む)
次回から、それぞれ働き方のメリット・デメリットについて、細かく紹介していきます。