自由で楽しいのが1番!僕らが競技者ではなく表現者を選んだワケ

プロスノーボーダーの世界について、SHOMAさんとMiyonさんに対談形式で話を聞く本企画。前編では「プロの定義」「スポンサー獲得のコツ」などについて伺ってきましたが、後編ではSNSの使い方やジェンダーについて深掘りしていきます。

(取材・文:岡田隆太郎)

 

プロスノーボーダーの世界には表現者と競技者の2種類がいる

ー前編でも話題になりましたが、スノーボーダー=表現者気質という話を掘り下げたいです。

Miyon
プロスノーボーダーには、オリンピックなどのビッグコンペを目指す競技者タイプと、メインの活動場所がストリートなどの表現者タイプがいます。

大会で勝つための練習をしたり、そこに向けてモチベーションを高めていくのが競技者だとすると、表現者は目指している方向性が全然違います。

SHOMA
滑る場所や練習方法もそうですが、アウトプットに到るプロセスが競技者と表現者は違う気がします。練習を反復し続けているだけでは、表現者タイプは上り詰められない。

一見すると、スノーボードのスキルとは無関係に思われるような要素から、素晴らしいパフォーマンスのヒントを得られることもありますし、様々なジャンルからインスピレーションを受け、質の高いインプットができることで成長していけるんです。

SHOMAさんの写真

ーお二人はなぜ競技者ではなく、表現者を選んだんですか?

そっちのほうが自由だし、楽しいからです。「そもそもなんでスノーボードを始めたんだっけ?」という疑問に立ち返ったときに、競技者として大成することは、自分の目指したい方向とズレがあると感じたんです。
私は、競技者を目指そうと思った時期がありました。でも、競技者ってどれだけ練習でうまくいってても、本番で失敗したらそれで終わりじゃないですか。表現者は、自分を披露する場が限られているわけではないので、何度失敗しても納得するまで続けられる部分が魅力的なんです。

限られたチャンスの中で結果を出すことは、アドレナリンも出るし、楽しいことなのかもしれません。でも、私は性格的に緊張しちゃうタイプだし、競技者の方々はすごいと思うし尊敬するんですけど、自分は自由に表現するほうが向いていると感じたんです。

ーオフシーズンの過ごし方も競技者と表現者は違いそうですね。

たしかに違いはありそうですが、個人的にはオフシーズンも週3回くらいでは滑りたい派です。練習しないと不安だし…。

でも、日本って室内ゲレンデや年中滑れる環境が少ないんです。住んでいる地域によっては、練習したくてもできなかったりするし。だからこそ、日本にも夏に滑れる雪山や、室内ゲレンデがもっと増えればいいのになと思っています。

Miyonさんの写真

僕も20代半ばまでは、夏場も国内外問わず雪のあるところに行ったり、室内で滑ったり、週に4〜5回はやってたかな。今はスノーボード以外のいろんなことに触れて、自分の表現方法の肥やしになる活動の割合が多くなりました。
私も最近はクルーのビデオ制作をしたり、絵を描いたりデッサンしたり、スノーボード以外のことをする割合は増えてきました。

ーSNSでも積極的に発信されていますね。

スノーボーダーなら、スノーボードの写真をあげるのが一般的だと思うんですが、僕はあまりブランディングは意識していなくて、自分のやりたいようにやっている感じです。あくまで表現の場のひとつとして捉えていて、もともとSNSってそういう使い方が正しいはずなので、堅苦しく考えずに発信しています。
私も同じですね。基本的にその時の気分で発信したいと思ったものを自由に載せるんですけど、見てくださっている方たちのことも意識して、ネガティブな内容を載せないことだけルール化しています。

 

女の子扱いされない環境が心地よかった

SHOMA
そもそもMiyonちゃんは、なんでスノーボードに興味を持ったの?
Miyon
兄がきっかけかな。私は昔から負けず嫌いだったから、兄のことをライバルのように感じていたし、運動ができたりゲームが上手いみたいな「男性が憧れそうな能力」をかっこいいと感じるようになったんだよね。

ー女性という理由で嫌な思いをしたことはありますか?

自分以外はみんな男子しかいない環境でスノーボードに関わってきていて、少し特殊なのであまり参考にならないかもしれませんが、厳しい環境に身を置きながら、男子と同じ練習をしてきたからこそスキルもついたので、むしろ良かったなと思います。

全然女の子扱いをされてこなかったし、むしろ、ちょっとくらい女の子扱いしてよ!って感じはありましたけどね(笑)。

Miyonさんの写真

たしかに女の子扱いしなかったな〜(笑)。
大前提としてスノーボードはそもそもの競技人口が少ないから、男女問わず仲間になりやすいんです。スノーボードが好きな時点でマイメンでしょ、みたいな。

でも、どんどん仲間同士が集まれる場所がなくなっている現状もあるし、特に地方だと施設なども整っていないので、そこがこれからの課題だと考えています。

質問の答えとしては「ない」でいいですか?
ちょっと答えがズレちゃったね。「ない」で大丈夫です(笑)。

 

契約金にも男女差が。女性ボーダーを増やす壁

ースノーボードの世界に男女差はありますか?

Miyon
まず、競技人口は圧倒的に男性が多いです。詳しく歴史を辿ったわけではないですが、スノーボードは怪我をしやすいスポーツというイメージが、女性の参入障壁が高い要因のひとつになっているのではないかと考えています。
SHOMA
身体能力が高い男子のほうが、披露できる技の数も多いしね。技ができる=かっこいい。だからカッコよく思われたいみたいな憧れ方も、男性に多い印象。
でも、男性には出せないスタイルもあるし、女性の需要はあると思っています。

SHOMAさんの写真

あんまり大きな声でいう話じゃないかもしれないけど、スポンサーの契約金にも男女差はあるよね。
オリンピックを目指すなど、規模の大きいスポンサーから契約金がもらえる場合はそこまで差がないかもしれませんが、やはりマーケットに女性需要があまりないのが実情かもしれないです。
昔は女の子のチームを作って盛り上げようという取り組みもあったんですが、どうしてもアイドル化しちゃうんです。うまくはないけど顔がいいみたいなラベリングされて、持てはやされて一時的なブームで終わっちゃうというか。

それはそれで取り組みとしては全然アリだし、グッズが売れたりメーカーが潤う分には正解だと思うんですけど、中長期的に見たらもっと違うアプローチをしないと、競技人口の底上げにはならないと思います。

ー女性の競技人口が増えることでメリットはありますか?

世の中の半分は女性だから、ロールモデルとして憧れてもらえたら、応援の数も増えるでしょうし、業界全体が盛り上がると思いますね。
男子は単純だから、女性が参入してくれるとそれだけでありがたいよ。やっぱり黄色い声援とかほしいしね(笑)。

ー今後、スノーボード界に参入する女性がどんどん増えていくことを楽しみにしています。

誰かにとって、憧れの存在になれるように、これからも精進していきます。

前編はこちら

 

■プロフィール

SHOMAさんの写真

SHOMA

11歳から始めたスノーボードにハマり、13歳の時に単身で北海道に移住。17歳からカナダに2年間留学し、数々のコンペティションで受賞経験を持つ。国内外問わずフィルミングを行うスノーボードクルー”Dirty Pimp”の一員である傍ら、2015年には自身のソックスブランドSUXSOXを立ち上げるなど、その活動は多岐にわたる。

Instagram:@shoma3
SUXSOX Instagram:@suxsox

 

Miyonさんの写真

Miyon

プロスノーボーダー兼デザイナー。思春期にストレスから体調を崩すも、競技を通して出会う人たちとの交流から少しずつ回復し、プロになることを決意。米国雑誌主催の「RIDERS POLL」にて2019年度の新人賞にノミネートされるなど、その実力は折り紙付き。スノーボードクルー”Dirty Pimp”のデザイナーとしても活動中。

instagram:@34miyon34/

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