「やられるがままだった」美女アスリート時代。潮田玲子さんが、引退した今だからこそ言えること

前編に引き続き、元バドミントン女子日本代表潮田玲子さんと、多くの有名アスリートのプロデュースを手がけてきた、しげるちゃんの対談シリーズ第10弾の後編をお届けします。

「オグシオペア」として活躍した元選手であり、現在はキャスターとしても活躍する傍ら、2021年2月には絵本の出版もした潮田玲子さん。後編では、引退した今だからこそ語れる「美女アスリート」として取り上げられた現役時代を振り返ります。

(聞き手:しげるちゃん/文:横畠花歩)

右:潮田玲子(しおた れいこ)
幼少期にバドミントンをはじめ、全日本総合選手権大会で5連覇、世界ランキングでは7位の戦績を残す。2012年に現役を引退。現在はスポーツコメンテーターとして活動しており、今年2月には『いっぽ いっぽのくつ』のプロデュースを手掛けた。

左:しげるちゃん
商品プロデューサー/インタビュアーとして活躍。CS局の旅番組にも多数出演、海外のファッション・流行などをナビゲートしている。元男子サッカー日本代表長谷部誠選手の著書『心を整える。』のプロデュースも手がけた。

 

声を上げられなかった「美女アスリート」時代

 

しげるちゃん
玲ちゃんが手がけた絵本について【前編】では伺ったけど、今回は現役時代の潮田玲子について聞きたいと思ってます。当時は、さかんにメディアは『美女アスリート』というくくりで呼んでいたよね?
潮田さん
ちょうどその言葉が出はじめたころでしたね。
しげるちゃん
スポーツの内容とかよりも、容姿が注目されることで差別的なコトを感じなかったのかしら?
潮田さん
直接的な差別は感じませんでした。そのおかげでテレビ出演などメディアで取り上げてもらえることも増えましたし。でも、出回る写真には苦しめられました。お尻や胸の谷間をピンポイントで狙われたり、そういった写真が雑誌の袋とじになることすらあったんですよ。
しげるちゃん
当時はまだ、声を出しづらい時期だったよね。
潮田さん
選手側は、まさに「やられるがまま」という感じです。当時は我慢することが当たり前だと思ってたんですよね。ずっと見ないふりをして耐えてたけど、今は声を上げられるような時代になってよかったと思います。
しげるちゃん
そっか、ずいぶんと我慢してたんだね。もし玲ちゃんが、いま現役選手だったら何かしらのアクションを起こしていると思う?

潮田さん
現役だったとしても、声は上げられないと思います。
しげるちゃん
それはなぜ?
潮田さん
声を上げるのにも、労力がいるからです。「結果を出してから言え」、「競技に集中しろ」。メディアに出ると、そういった声を受け取る可能性もあるんですよ。選手が優先すべきことは競技に集中することなのに、わざわざ険しい道を選んでいく必要があるのかなと。影響力のある現役選手が声を上げるのは大事なことかもしれないけど、無理をする必要はないです。現役を引退した、私のような立場の人間が声を上げるべきだと思ってます。
しげるちゃん
玲ちゃんは、『美女アスリート』っていう言葉で取り上げられることへの抵抗とかはあったよね?
潮田さん
「私はアイドルじゃないのに」って、ずっと思ってました。でも、メディアに出ることで競技の注目度は上がるので、プレッシャーを感じながらも出演してましたね。
しげるちゃん
ファンが増えたり、実際に会場に足を運んでくれる方も増えるもんね。
潮田さん
メディアの影響力はすごかったですね。ただ、お客さんたちは試合が終わった途端に帰ってしまったりして……。競技の人気につなげるにはどうしたらいいんだろうって考えてました。でもそれって、結果を追い求めるべき選手が気にすることじゃないですよね。

 

全日本5連覇に隠された、選手としてのプライド

しげるちゃん
たとえばテレビの「イケメン選手特集」がきっかけで、競技そのものにハマる人もいるよね。
潮田さん
「美女アスリート」も、“強くて美しい”ととらえてもらえたら嬉しいのに、セクシャルな部分を切り取られるのが本当に嫌でしたね。
しげるちゃん
作る側も、男性と女性で視点の違いがあるよね。そういうふうに取り上げられたことがきっかけで、実際に嫌な思いをしたこともあった?
潮田さん
ある国際大会の選考への参戦が決まったときに、「オグシオは顔で選ばれたのか」と言われている現場を見たときは、ショックを受けてトイレで泣きました。競技者として評価されていると思っていたのは、私たちだけだったのかなって。
しげるちゃん
それは「オグシオペア」として注目されたことが原因?
潮田さん
もっと前から、私たちのペアが特別扱いをされているという風潮はあったんです。だから、「日本一になったら、周りは文句を言えない」と自分たちに言い聞かせながら、全日本優勝にこだわり続けてたんです。それだけは本当に譲れなかったですね。
しげるちゃん
全日本5連覇の裏側に、そんな想いがあったんだね。当時はまだバドミントンはマイナースポーツだったと思うけど、そのころに比べて、今はメジャーになったと思う?
潮田さん
現役選手たちが結果を出していることもあって、スポーツコーナーなどで取り上げられる機会は増えてると思います。
しげるちゃん
スポーツ自体がメディアで取り上げられる機会も減るなか、マイナースポーツをアピールするには、何が必要だと思う?
潮田さん
同じだけ努力をしてオリンピックに出ても、メダルを獲って初めて注目されるのがマイナースポーツだと思ってます。今はSNSがあるので、それらをうまく活用したセルフマネジメントも効果的だと思いますね。

 

ダブルスペアから学んだ、理想のパートナー

 

しげるちゃん
玲ちゃんが2人の子どもを育てている中で、現役選手時代の経験が実際に役立っていることってある?
潮田さん
子育てに必要な我慢強さや忍耐力、ポジティブ思考などメンタル面で救われていると感じます。

しげるちゃん
選手として培った体力よりも、メンタル面なんだ(笑)
潮田さん
体力的にしんどかったのは授乳期で、そのあとはひたすら忍耐ですね。子どもは、自分が思った通りに時間を過ごしてくれません。イライラしたときに「あ〜もう、大変!」と捉えるか「抵抗してる、成長!」と捉えるのか。同じできごとを角度を変えて見ることは、アスリート時代のメンタルトレーニングの賜物です。「ポジティブに前向きに過ごす」と口で言うことは簡単でも、それができないから悩むんですよね。
しげるちゃん
旦那さんは団体競技で、玲ちゃんは個人競技の選手だったけど、子どもにスポーツをすすめるときに『団体』と『個人』のどちらがいいのだろうか?
潮田さん
私はどちらでもいいと思ってます。
しげるちゃん
ちなみにダブルスって、団体競技じゃないけどペアがいる特殊な種目だよね。一対一で相手に向き合うところとか、子育てにも通じるものがあったりする?
潮田さん
ダブルスはパートナーとずっと向き合い続ける必要のある、ある意味“究極の人間関係”ですね。「もしも自分が嫌だと感じる場合、相手も嫌だと感じている」ということは、ダブルスペアだけじゃなく家族間でも共通して言えることです。

しげるちゃん
『恋愛』みたいなものだね。ゼロから信頼関係を築きながら、向き合ってく。
潮田さん
二人で一つのものを作り上げているという考え方を大事にしてます。2対2で戦うべきものを、パートナーまで敵にしてしまったら、1対3になります。そうなると自分が一番弱くなって負けちゃうから、結果的に自分の首を締めちゃう。パートナーの調子が悪かったときやミスをしてしまったとき、“それをカバーできなかった自分の責任”と思えるようになれば大丈夫っていうふうに考えてます。
しげるちゃん
ダブルスから学んできた『相手をおもいやる気持ち』って、実際にいろんなカタチであれ人間関係にも繋がる大切なことだね。
潮田さん
ミスをしたことを一番よくわかってるのは本人だから、その人は絶対に申し訳ないと思ってるはずなんです。パートナーのミスは私がカバーするし、もちろん逆の場合も同じです。これは夫婦生活や子育て、社会での人との関わりに通じることだと思います。
しげるちゃん
最近出版した絵本からも伝わるけど、玲ちゃんは現役時代の競技を通して得た経験のアウトプットが本当に上手、しげるも見習いたいと思います。

■プロフィール

潮田玲子(しおた れいこ)
福岡県京都郡出身。元バドミントン日本代表選手。幼少期よりバドミントンをはじめ、ダブルスペア「オグシオ」として活躍、全日本総合選手権大会で5連覇を果たす。現在はスポーツコメンテーターとして活動しており、今年2月には自身が手掛けた絵本『いっぽ いっぽのくつ』のプロデュースを手掛けた。

Twitter:@Reishio
Instagram:@reikoshiota

しげるちゃん
商品プロデューサー/インタビュアーとして活躍。芸能人やタレント、モデル、スポーツ選手など、様々な業界の著名人との交流が深く、自身がプロデュースするアイテムは、そんな多くの著名人が愛用することで知られ、メディアやSNSでも話題に上がる。また、CS局の旅番組にも多数出演、海外のファッション・流行などをナビゲートしている。

Instagram:@shigeru39

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