暴走しない・無理しない・抱えない現役時代からのスタイルで。伊藤華英さんの恋愛と子育て、からだの話
前編に引き続き、元水泳女子日本代表伊藤華英さんと、多くの有名アスリートのプロデュースを手がけてきた、しげるちゃんの対談シリーズ第二弾の後編をお届けします。
自身も元選手であり、現在も第一線で活躍するアスリートに寄り添う伊藤華英さん。後編では、女性アスリートの視点から現代の女子アスリートが抱えるからだの悩み、はたまたガールズトークまで飛び出しました。
(聞き手:しげるちゃん/文:横畠花歩)
■前編はこちら
伊藤 華英(いとう はなえ)
北京・ロンドン五輪に水泳女子日本代表として出場。現在は東京オリンピック・パラリンピック組織委員会広報部戦略広報課担当係長。マットピラティスコーチとしても活躍中。
しげるちゃん
商品プロデューサー/インタビュアーとして活躍。CS局の旅番組にも多数出演、海外のファッション・流行などをナビゲートしている。元男子サッカー日本代表長谷部誠選手の著書『心を整える。』のプロデュースも手がけた。
“大好き”だけでは動けない!?
前編では、アスリートの現状やセルフマネージメントについて聞いたけど、ずっと気になってた質問しちゃうね。個人競技をやっているような女性アスリートって、どんな男性を選ぶのかな?(笑)。
それ聞いちゃう?(笑)。まあ人によるとは思うんだけど。
華英ちゃん自身は去年結婚したじゃない?結婚の決め手はなんだったの?
私は絶対に自分を理解してくれる人が良かったんだよね。選手時代からセカンドキャリアを重要視してたから、キャリアと結婚を同時に考える余裕もなかなかなくて。
そんななか、彼と過ごす時間はありのままの自分でいられる、自分が変わらなくていいという点は大きかったな。
旦那さんは、華英ちゃんの条件に合致する人だったんだね!以前から華英ちゃんが『大好き』だけで暴走しちゃう瞬間とか、見た事ないもんな~。
そうだね、絶対ありえないね(笑)。知り合う男の人には基本的に、“友達として話がしたい”と思って接してた。心の扉を開けてもらうのが実は難しいって感じ。
なるほどね~。たしかに華英ちゃんと話してるときって、女子トークしてる気が全くしない(笑)。
環境のおかげが大きいかな。練習風景に女子選手が少ない中で、どうやったら男子選手と対等に生きていけるかばかり考えてた気がする。男子選手は対等で、むしろ勝ちたいと思ってたくらい(笑)。
『勝ちたい』ってあたりが女子トークじゃないよね(笑)。心の奥底にある、もう1枚のドアを見事に開いたのが今の旦那さまってことだね。
東京2020パラリンピックエンブレムをあしらった浴衣
(写真提供:伊藤華英さん)
自分の限界を知っているから、母親としても無理をしない
この数年の間に、結婚に続いて妊娠・出産も経験したじゃない?わりと復帰が早かった印象があるのだけど……。
アスリートだったことが、出産や子育てに活かされてることはある?まあ、体力はありそうだけどね(笑)。
そうだね、体力はあると思う!子育てをする上で、アスリートの経験が活きていると思うのは、あんまりカッコつけなくていいというメンタリティかな。子育てに関しては競技の練習と同じで、“結果は勝手に出る”って思ってる。
あ〜!なるほど、そういう捉え方をしてるのね。ポジティブな人が多いよね、女子アスリートって。
周りを見ても思うけど、無理をしない人が多いかな。限界を超えてきたからこそ、ある程度自分の限界を知っているというか。取捨選択と消去法をうまいこと使えている印象だね。
前編でも話していたセルフマネジメント術が、子育てにも活きてるのね。
そうかもね。私の場合は自分の人生と子供の人生を、別軸で考えてる。私の人生、あなたの人生、って。
これから、働きながら子育てをする女性はどんどん増えると思うんだけど、女性・母・職業人とか、いろいろなポジションの演じ分けは必要なのかしら?
うーん、私にも憧れる女性像はあるけど、まず第一には「自分らしさ」が重要視されるべきだと思ってて。
今の日本にはステレオタイプが未だにあって、きれい・かっこいいという価値観に、多様性があまりないのかなと思うんだよね。私はみんな美しいと思うし、それぞれの美しさが尊重されたら良いなと思う。
ちなみに、現役時代から現在までの間で『美的意識』に変化ってあった?引退してから美容面で気をつけたりしてることってある?
いろいろ試してみたけど、やればやるほどいっぱいあって……。途中で「やーめた」ってなっちゃうことが多くて(笑)。継続してるのはエステかな。
人の手はやっぱり良いよね。高いダイヤモンドを買うより、からだのメンテナンスに当てたいなって思っちゃう。
現役引退後のセルフメンテナンス術
からだのメンテナンスと言えば、ピラティスのインストラクターもやってたよね。毎日やってるの?
ピラティスは毎日、寝る前に骨盤底筋を締めるのを習慣としてやってる。からだのメンテナンスは、エステをはじめ4ヶ所くらい通ってるかな。
現役時代に怪我をした経験があって、その当時からピラティスに通ってて。これからもずっと続けていきたいなと思ってる。今はプライベートでレッスンを持ってるんだけど、大人数のイベントとかもやってみたいな。
B&で企画してもらいましょうよ!(笑)。ちなみにピラティスってよく聞くけど、何をやるの?
それぞれのポーズにおけるターゲットマッスルが明確で、ロジカルをベースとした、いわゆる体幹トレーニング!
ちなみにそれは、水泳に共通する部分があるのかしら?
からだをコントロールするという意味では共通してるね。私の理論は“心とからだは繋がっている、心が整えばからだが整う”なんだけど、ピラティスはもともとリハビリ用に考案されたもので、解剖学に基づいてるから、自分に向いてるなって思った。
講演会の中で、ピラティスの要素を取り入れたエクササイズを指導する伊藤華英さん
『女性アスリートと生理』というコラムを書いたワケ
華英ちゃんは、現役時代も引退後も自身のからだに向き合い続けてるよね。たしか数年前かな?『女性アスリートの生理』に関するコラムを書いてたけど、当時の世の中的には、タブーな話題だったのかしら?
そうだね、なかなか声をあげる人がいなかったから。今は、引退した女子選手が声をあげたり、以前より女性のからだについてのトピックが挙がることは増えたよ。
2、3年前のとある大会で、「生理でパフォーマンスが発揮できなかった」と発言する選手がいて、それに対する意見を求められたことが、書こうと思ったきっかけかな。
その質問をされたことで、男性の生理への認識があまりなかったことを知ったんだよね。こっちは大変な思いをする生理が毎月来ることは、当たり前だと思ってたからさ。
当時は、暗黙の了解で『触れてはいけない話題』だったんだと思う。選手は、どんな大変な状況の中であっても「記録」を出す必要を求められるよね。
若い世代は特にだけど、女性も自分のからだを知るべきだし、それを理解する男性も増えてもらえれば良いなと思う。
男女平等とは言うものの、女性には出産という「どうしても休まないといけない期間」がある。少なくとも女性だけが、子どもを産むために機会を奪われるのは良くないよね、と思ったりね。
SPEED社主催の大人向け水泳教室も開催。幅広い年代にオリンピアンとしての経験を伝えている
SPEED社主催の大人向け水泳教室も開催。幅広い年代にオリンピアンとしての経験を伝えている
今の若い選手たちもきっと、結婚・妊娠は程度の差こそあれ、考えていると思うけど、現実的に生理に対してはどう向き合ってるのかな?
うーん、今も昔も情報収集に関しては、同性の選手同士の会話だったり、質問しやすい相手から情報を得るしかないことが多いと思う。
私の場合はセカンドキャリアを考えていたから、引退後に妊娠・出産をする先輩たちの姿を見て、自分のことを想像できてたけど、10代の選手などは特にハードルが高いと思うから、意識を変えたいな。
こういうデリケートな話題に対して、1人で向き合っている若い選手も多いんだろうね。
そうだね。10代の選手とかは特に、身近な人にすら話をすることへのハードルの高い話題だから、その意識を変えたいかな。
待ってるだけじゃなくて、アクションを仕掛けたいなと思ってる。これからの未来を生きる後輩たちや子どもたちに、少しでも何かを残せたらいいな。
■プロフィール
伊藤 華英(いとう はなえ)
15歳で背泳ぎの選手として日本選手権に初出場を果たす。2008年には背泳ぎ女子100mで日本記録を樹立。怪我により自由形へ転向後、世界選手権・アジア大会では数々のメダルを獲得。ロンドン五輪に出場したのち、2012年の国体で現役を引退。引退後は自身の経験を踏まえ、マットピラティスコーチの資格を取得。現在は東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会職員を務めている。
Instagram:@hanaesty
Twitter:@hanaesty
しげるちゃん
商品プロデューサー/インタビュアーとして活躍。芸能人やタレント、モデル、スポーツ選手など、様々な業界の著名人との交流が深く、自身がプロデュースするアイテムは、そんな多くの著名人が愛用することで知られ、メディアやSNSでも話題に上がる。また、CS局の旅番組にも多数出演、海外のファッション・流行などをナビゲートしている。
Instagram:@shigeru39