「トレーニングの効果を上げる良質な睡眠のとり方」ヒラノマリさんによる睡眠セミナー

皆さんは、日々の「睡眠」と「トレーニング」の間に、実は深い関係があることをご存知ですか?睡眠は、筋合成・疲労回復などに大きく影響を及ぼします。正しい知識をもとに睡眠の質を高め、疲労回復はもちろん、パフォーマンスや集中力アップといった効果に繋げていきましょう。

今回のB&セミナーでは、アスリートのパーソナル睡眠指導を行なうスリープトレーナーのヒラノマリさんをお迎えして、トレーニングの効果をUPさせる質の高い睡眠を実現するための実践的な方法をお聞きします。

■セミナー講師

ヒラノマリ

スリープトレーナー。自身も睡眠で悩んだ経験から睡眠学に興味を持つように。大学卒業後、某大手インテリア会社に入社。寝具担当として幅広い顧客に寝室全体のコンサルティングを行ってきた。2017年から、アスリート専門に睡眠指導を行う『スリープトレーナー』として活動をはじめる。ショールームでの販売経験を活かした具体的なアドバイスは、プロサッカー選手や五輪出場選手にも好評を得ている。

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トレーニングする人にとって“質の良い”睡眠とは?

良質な睡眠とはどんなものを指すのでしょうか。アスリートをはじめ、トレーニングをする人にとっての睡眠の「質」について、改めて考えてみましょう。

ヒラノさん
私たちの睡眠は、「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」で構成されていて、2つの睡眠を交互に繰り返しています。この2つの睡眠のリズムと割合が整っていることが質の良い睡眠の条件となってきます。

 

ノンレム睡眠とレム睡眠について知っておこう

 

【ノンレム睡眠】

・深い眠りで、朝方にかけて浅く・短くなる。
・運動機能の記憶の向上は、浅いノンレム睡眠の時間帯に定着すると言われている。

ヒラノさん
小さいころピアノや自転車の練習をしていて、寝る前にはできなかったことが、次の日の朝起きたらできるようになっていた、という経験はありませんか?そういった事象は、実はこのノンレム睡眠がもたらした可能性があります。

 

【レム睡眠】

・浅い眠りで、朝方にかけて長くなる。
・メンタルのメンテナンス、筋肉の疲労回復を行う。
・「夢を見る時間」とも言われ、夢を見ることによって、その日に起きた嫌な出来事に付随する嫌な感情を切り離す。

ヒラノさん
レム睡眠は浅い眠りだから悪い、と思われがちですが、「夢を見る時間」は、アスリートにとって重要なメンタルケアの時間となります。ノンレム睡眠とレム睡眠、質の良い睡眠には両方の要素が重要であることを覚えておきましょう。

 

 

ヒラノさん
また、レム睡眠・ノンレム睡眠について学んだあとに覚えていただきたいのは、一晩における成長ホルモンの70〜80%が分泌される「黄金の90分」の重要性についてです。
成長ホルモンは、子どもの成長のためだけに存在するものではなく、大人にとってはアンチエイジングのホルモンといわれ、睡眠においても重要視されています。肌のキメを整える・ツヤをよくするなど、傷ついた細胞を修復する力を持っていることからも、注目されているホルモンの一種です。

ポイント:「黄金の90分=寝入りの90分」の質を上げることが重要
(黄金の90分の質を上げるコツは後ほどお伝えします)

 

睡眠がパフォーマンスに与える影響

続いて、具体的な例を用いた「睡眠がパフォーマンスに与える影響」について学んでいきます。

 

①筋グリコーゲン×睡眠

 

アスリートにとって「筋グリコーゲン」は、身近なワードですよね。実はこの筋グリコーゲンにも、睡眠は大きく影響しています。筋グリコーゲンを体内に貯蓄するには、インスリンというホルモンの働きが不可欠。

この、インスリンの働きを妨げる敵が、睡眠不足というわけです。睡眠不足が生活習慣病のリスクを上げると言われているのもこれが理由となります。インスリンの機能を低下させないためにも、十分な睡眠時間を確保しましょう。

 

ポイント:筋グリコーゲン貯蓄の敵は、睡眠不足!睡眠時間はしっかり確保しよう

 

②脂肪の代謝×睡眠

 

続いて、脂肪の代謝と睡眠の関係性について。睡眠時間がそれぞれ5時間半、8時間半のグループによるダイエットについての研究結果が用いられました。

 

ダイエットに関する研究結果一例:
睡眠時間が8時間半のグループ:落ちた体重の50%が体脂肪
睡眠時間が5時間半のグループ:落ちた体重の70%が筋肉

ヒラノさん
衝撃的な結果ですよね。たった3時間の睡眠の差で、体脂肪が減るのか・筋肉が減るのか、大きな違いが出てしまったんです。

これにより、睡眠時間と代謝の関係性については以下のようなことが考えられます。
・5時間半のグループは、体脂肪ではなく体内のグリコーゲンが減少した
・グリコーゲンが減少したことにより、筋肉が分解されてしまった


睡眠不足によって、エネルギー代謝におけるグリコーゲンや脂肪の使われ方に変化が生じた
ことがわかります。

 

ヒラノさん
このように、睡眠不足に陥ると身体やパフォーマンスには大きな影響が出てしまいます。「筋トレも試合もダイエットも、前日の夜から始まっている!!」ということを、ぜひみなさんの心に刻んでいただければなと思います。

 

ポイント:筋トレも試合もダイエットも、前日の夜から始まっている!!

 

トレーニング効果UPの睡眠のコツ

良質な睡眠とは何か、また睡眠がパフォーマンスに与える影響とはどんなものか、について理解を深められましたね。最後に、本日のポイントにもあった「黄金の90分」の質をどう高めるか、コツを3つほど紹介いただきます。

 

①朝起きたら窓際で歯磨きをする

 

ヒラノさん
日照時間の減る梅雨を迎え、さらにリモートワークも増えたことで外出の機会も減った方は、意識的に午前中、太陽の光を浴びることが重要になってきます。またアスリートの場合は、室内競技か屋外競技かによっても陽を浴びる時間が異なってきますよね。

日照時間の短さを日光浴でカバーするヨーロッパの文化を参考に、ヨガやストレッチなどをベランダや窓際で、陽の光を浴びながら行うのもおすすめです。
朝の過ごし方がその日の夜の眠りの質を左右すると認識して、行動してみてくださいね。

 

②夕食後のブルーライトを徹底カット!

 

ヒラノさん
入眠前にブルーライトをたくさん浴びると、睡眠ホルモンであるメラトニンが減少し、その結果成長ホルモンが効率良く分泌されません。
ついつい眠るギリギリまでテレビやスマホを観てしまうという人には、ブルーライトカット眼鏡の使用をおすすめします。

移動が多い方などは、新幹線など乗り物の明かりからもブルーライトを浴びています。夜の移動時などは同じくブルーライトカットの眼鏡で対策を行うと良いでしょう。

ちなみにわたしは、夕食のタイミングでブルーライトカット眼鏡をかけています。ぜひカット率の高いものを取り入れてみてください。

 

③十分な睡眠時間を確保する

 

ヒラノさん
お伝えする最後のコツは、十分な睡眠時間を確保すること。睡眠時間ありきの睡眠の質です。みなさんも最低7時間以上、プロのアスリートの方は8時間以上の睡眠時間を確保しましょう。

特にアスリートの方は、睡眠時間が不足していると、オーバートレーニングになりやすいという論文も出ています。今日をきっかけにして、睡眠時間を含めた睡眠習慣を見直してみてくださいね。

 

質疑応答

セミナーの最後には参加者が直接質問ができる時間が設けられ、次から次へと質問が飛び出しました。

 

Q.1日8時間以上の睡眠は連続してとったほうがいいですか?お昼寝は含まれますか?

ヒラノさん
夜の睡眠と昼の昼寝は役割が異なるので、連続して8時間以上、をなるべく心がけましょう。

 

Q.早く寝るのですが、早く起きて活動してしまいます。5時間以上の睡眠が難しい、不眠気味の場合の対策を教えてください。

ヒラノさん
「朝型の人」・「夜型の人」と、遺伝子レベルで分かれているので、頑張って寝ようとしても難しい場合もあります。その場合は、一度起きてしまって午前中にお昼寝を挟んだほうが体への負担は少なくなります。

睡眠時間は参考にしてもらいつつ、実生活においては自分の体と相談しながら無理なく進めてみてくださいね。どうしても早朝に目が覚める場合は、カーテンを閉めたまま室内を暗い状態にしておき、朝7〜8時頃にカーテンを開けて太陽を浴び体内時計を整えてあげる方法も試してみると良いと思います。

 

Q.二度寝のデメリットはありますか?

ヒラノさん
朝の二度寝には、ストレスが減少するという良い研究報告が出ています。二度寝のデメリットとしては、寝過ぎて体内時計が狂ってしまうこと。通常の睡眠時間の、プラスマイナス2時間ぐらいまでに抑えてくださいね。

 

Q.「二度寝は良くない」という意識から、早く起きてしまいます。時間があっても起きてしまうときの対処法は?

ヒラノさん
目が覚めた瞬間にまだ眠気があるなら、目標起床時間まで眠ったほうがいいですね。でも、普段起きる時間の30分〜1時間前に起きたのであれば、そのまま起きてしまったほうが寝起きはいいですよ。

 

Q.入眠の際のホットアイマスクは、良い眠りへ効果がありますか?

ヒラノさん
効果はあります。目の周りには副交感神経が集まっているので、リラックスし眠りやすくなります。

 

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