テーピングで不安を取り除く。プロ・フィッツ テーピングインストラクターに聞くケガ予防の考え方

「テーピングがケガ予防につながることはなんとなく理解しているけど、いざやるには使い方がわからなくて面倒…」

どこかケガへの不安や違和感を抱えながら競技を続け、結局痛みが出てからの対処になってしまっていませんか?繰り返す肉離れや、膝の痛みなどに悩まされているスポーツ女子も多いはずです。

今回は、女性アスリートのケガ予防の重要性と、ケガ予防に有効なテーピングやサポーターについて取り上げます。

(聞き手:B&編集部/B&mates 市川紀珠)

男性よりケガ発生リスクが高い、女性のからだ

「女性は比較的ケガの発生リスクが高い」ことを正しく理解しておくことが、ケガ予防の第一歩につながります。

特に女性に多いケガとして挙げられるのが、前十字靭帯損傷や膝蓋大腿関節障害といった膝に関わるケガです。前者に関しては、女性は男性よりも約5倍も発生頻度が高いことが明らかになっています。

女性は骨盤幅が広いため、運動時に膝に負担がかかりやすく、X脚気味となり内側に入ってしまうことが多いです。比較的、関節が緩みやすいことや、膝の曲げ伸ばしに関係する大腿四頭筋(太腿の前側の筋肉)とハムストリング(太腿の裏側の筋肉)の筋力が弱いことも、ケガのリスクを高めています。

そのほかにも、骨密度が低いことによる疲労骨折も、女性アスリートにおける発生率が高いケガです。

競技に打ち込むため、エクササイズとしてからだを動かすため、運動の強度は人によってさまざま。しかし、いずれにせよ、快適に・存分にスポーツを楽しむためには、自分のからだをよく理解して、ケガ予防に努めることが不可欠です。

(参考:https://medical.jiji.com/column3/39

 

パフォーマンス向上にも。貼り方はシンプル

ケガ予防として自ら取り組める手段の一つが、テーピングやサポーターの利用です。

今回は、ピップ株式会社の、テーピングやサポーターなどを展開しているスポーツケア用品ブランド「プロ・フィッツ」専属テーピングインストラクターである丸山さんに、テーピングを利用したケガ予防について、お話を伺いました。

市川
テーピングは、いろんな種類があったり、貼り方も特殊だったりと、難しいイメージがあります。だから少し違和感があっても、つい放置してしまうことが多いんです。
丸山さん
たしかに、テーピングを身近なものとして理解し、活用できている選手は少ないように感じます。

まず、テーピングには主に2種類あります。強い固定や圧迫を目的とする非伸縮型の固定テープ(市販では白いテープが多い)と、伸縮型のキネシオロジーテープです。

ケガ予防におすすめしているのは、伸縮型のキネシオロジーテープです。基本的に筋肉に沿って貼るテープで、地肌に直接貼るだけでからだの感覚が変わるので、簡単に筋肉のサポートをしてあげられるんです。

ただ貼るだけでいいんですか?
筋肉に沿ってひっぱらずに貼るだけで、テープの伸縮性が筋肉の収縮運動をサポートしてくれるので、それだけでしっかりサポートできるんです。また、違和感がある部位に対して、自分の感覚的に「何か貼られている」と感じるだけで精神的に安心できるというのも、テーピングの大切な役目だと考えています。

試合時や強度の高い練習を行なう際には、例えば少し不安を抱えて80%の実力しか発揮できなかったところが、テープを貼ることで85%、90%に伸ばせるなど、ポジティブな効果も期待できます。

ピップではプロ・フィッツブランドの公式YouTubeチャンネルで部位別、競技別にテーピング動画を公開しているので、そちらもぜひ参考にしていただきたいです。

たしかに、これなら簡単に貼れますし、一度で覚えられる気がします。
テーピングが難しいと感じるのは、動画で紹介しているような基本の貼り方はありながら、そこから応用がたくさんあるからだと思うんです。

一人ひとりの体型、からだの症状、悩みに対して、アレンジしてできるのがテーピングの強みでもあり弱みでもあります。現場では、悩みを聞いた上で、どのようにからだを使っているのかや、競技特性、いつ痛みが出るのかといったことをヒアリングした上でテープを貼るようにしています。

プラスに・簡単に取り組めると知って、テーピングへのイメージも少し変わりました。サポーターだと、さらに準備が楽ですよね。プロ・フィッツブランドの圧迫固定サポーターと、テーピングサポーターの違いを教えてください。
テーピングサポーターは、「自分で調節できる」というキネシオロジーテープの強みと、「手軽に使用できる」という圧迫固定サポーターの強みを掛け合わせた商品になっています。

自分で引っ張って強さを調節できるので、ある程度症状がわかっていたり、どういう動きをすれば痛みが生じるのかを把握できている際に使用をおすすめします。逆に言えば、「少し不安を感じている」といった場合には、圧迫固定サポーターの方が着用が簡単なので、手にとっていただきやすいかと思いますね。

サポーターやテーピングは、毎回つけるべきなのでしょうか?
不安があるなら、予防という観点では毎回つけたほうが良いかと思います。適切な筋肉トレーニングを行なって筋力をつけたり、ストレッチを入念に行なうなど、サポーターやテーピングに頼らずケガを予防していってほしいです。

 

「ケガ予防の知識を正しく理解して欲しい」

市川
テーピングインストラクターは、珍しい職業ですよね。どういった業務をされているのですか?
丸山さん
ランニングイベントや学校などで、キネシオロジーテープの特徴や貼り方について現場で教える活動をしています。「テーピングは難しい」というイメージを払拭して、キネシオロジーテープの良いところや、貼り方の簡単さを普及したいと思っています。
何かきっかけがあったんですか?
スポーツが大好きで、ずっとテニスをしていました。もともとスポーツに関わる仕事がしたいとは思っていて、ご縁あって会社から声をかけてもらい、今に至っています。知識だけでなく、自分の経験からもケガ予防の方法を考えたり提案することができています。

私自身の経験からも、スポーツをする時に違和感やケガを抱えていると、純粋にスポーツを楽しむことができないなと。テニスの指導経験も少しある中で、そういった精神的な不安を取り除くことがアスリートにとって大切だと痛感しています。

最近は、YouTubeでさまざまなケガ予防に関する動画を出されていますよね。
そうなんです。まだ駆け出しではありますが。先ほどお伝えしたように、テーピングの貼り方の動画自体は、以前から出していました。でも、一人ひとりにより適切にケガ予防をしていただくためには、「なぜその貼り方をするのか」「そもそもなぜその部位が痛くなるのか」といったことを伝える必要があると思いました。

痛くならないためにテーピングという対策があるのですが、それ以外にもどのようなトレーニングで痛めやすいのかや、どこを伸ばすことで筋肉の柔軟性を高めケガ予防に繋がるのかなど、幅広くお伝えできるように取り組んでいるところです。

動画コンテンツは、今注目されているところですよね。現時点での手応えはいかがでしょうか?
やはり直接イベントで話すのとは違って、画面だと相手の反応が見れないのが難しいところです。どうしても事前に考えた台本を読んでしまうだけになったりして。悩みを持って見てくださっている方々に対して、伝える気持ちを持ってやっていきたいです。

 

肌への刺激など、品質も重要

市川
現場に出ていて、女子アスリートからよく聞く悩みなどはあるのでしょうか?
丸山さん
テーピングによる肌の荒れやかぶれはよく聞きますね。プロ・フィッツでは、「快適通気」と「しっかり粘着」の2種類のキネシオロジーテープを販売しています。「快適通気」はできる限り肌への刺激が少ない薬剤を使用しているので、気になる方にはこちらをおすすめしています。

テーピングを剥がす時もポイントです。運動後にすぐに外してしまうことが多いかと思いますが、肌が乾燥していると、肌への刺激が強いことがあります。剥がす時はお風呂などでしっかり濡らして、ゆっくりと剥がすことをおすすめします。

2種類のテーピングが挙がりましたが、テーピングを選ぶ際のポイントはありますか?
キネシオロジーテープを選ぶ上で、品質も大切です。プロ・フィッツでは、夏場でも剥がれにくい粘着力や、貼った後どれだけしっかり戻ってくる力があるのかなどにもこだわって作っています。

消耗品なので値段を重視する方が多く、それは当然のことなのですが、ぜひ一度品質にも目を向けて選んでいただけると選択肢が広がるかなと思います。

最後に、女子アスリートへ一言お願いします!
無理をすることが一番ケガにつながりやすいと思うので、自分のからだと対話しながら適切な負荷で運動を行なってほしいです。その上で、不安な場合にテーピングやサポーターを使ってケガ予防に努めていただければと思います。

トレーニングでも練習でも、成長が目に見えないこともあるかと思いますが、何でも継続して取り組んで、スポーツを楽しんでいってほしいですね。

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