マグネシウム(Mg)で代謝アップ。からだに嬉しい5つの効果とは?
マグネシウムというミネラルを普段の食事のなかで意識したことはありますか?ビタミン類や鉄分などに比べると、なかなかスポットが当たらないミネラルですが、マグネシウムにはスポーツ女子に嬉しい働きがたくさんあります。どんなメリットがあるのか、お伝えしていきます。
■教えてくださった方
横田 邦信(よこたくにのぶ) 先生
東京慈恵会医科大学客員教授、医学博士
昭和26年東京生まれ。
糖尿病やメタボリックシンドロームなどの生活習慣病に、マグネシウムの慢性的な摂取不足が深く関係しているという観点から、医学的にそのメカニズムや治療法を説く。
日本糖尿病学会功労学術評議員、同学会糖尿病専門医、日本生活習慣病予防協会参事、日本健康予防医学会理事、元日本マグネシウム学会理事。
著書あるいは監修に『糖尿病に勝つ!「マグネシウム食」革命』、『医師が教える マグネシウムのすごい力』、『糖尿病なら「これ」を食べなさい!』、『同 レシピ』(以上主婦の友社)、『マグネシウム健康読本』(現代書林)など多数。
午後はおもいっきりテレビ(日本テレビ)、美と若さの新常識(NHKBSプレミアム)、林 修の今でしょ!講座(テレビ朝日)、The Dave From Show嘉衛門Presents「The Road」!!(InterFM897)など多数出演。
なお、2007年にマグネシウム啓発・情報提供サイト(MAG21研究会)を共同設立。
目次
マグネシウムの役割とは?
マグネシウム(Mg)は体内のおよそ600種類以上の酵素が働くのに必要不可欠な必須・主要(多量)ミネラルで、糖質や脂質などの代謝にも深く関わっています。
マグネシウムは漢字で「鎂」と表記し、近年、アンチエイジングミネラルとしても注目されています。しかし実は、日本人は慢性的にマグネシウム不足と言われているのを知っていますか?
男性は1日あたり約130mg、女性で約80mg程度*のマグネシウムが摂取不足に陥っていることが分かっています。これまでよりもマグネシウムを1日に約100mg以上多く、食事から摂る必要があるのです。
*「日本人の食事摂取基準」(2015)、「国民健康・栄養調査栄養素等摂取量」(2017)から算出(30~49歳) MAG21研究会HPより引用
おすすめ理由① エネルギー代謝アップ
マグネシウムはエネルギー代謝を活性化するために極めて重要なミネラルです。
代謝とは
エネルギー代謝とは、食べ物から取り入れた糖質や脂質を細胞内でエネルギーに変えること。マグネシウムが十分でないと、細胞内へのブドウ糖の取り込みが悪く、また取り込まれたブドウ糖が効率よくエネルギーに変換されません。
スポーツをする人は、運動でエネルギーになるATP(アデノシン三リン酸)を多量に使うので、普通以上にマグネシウムを摂らないとATPが不足し、代謝が悪くなってしまいます。
また、足が攣る「こむら返り」も起こしやすくなるので、マグネシウムはスポーツをする人に欠かせないミネラルなのです。
おすすめ理由② 脂肪分の吸収を抑える
肥満は、脂肪細胞の中に余分なエネルギーが中性脂肪の形で過剰に蓄えられた状態です。マグネシウムは、食事に含まれる脂肪分と鹸化(けんか)反応*を起こします。鹸化した脂肪分は吸収されにくくなり、ダイエットにつながると考えられています。
そのため、同じカロリーの食事でも、特に油ものと同時にマグネシウムをしっかり摂った場合、その分吸収されにくいので摂取エネルギーが減ることになり、ダイエットにつながります。
*鹸化(けんか)反応とは、油脂がアルカリ(水酸化ナトリウムなど)によって加水分解され、石鹸とグリセリンを生じる反応のことをいいます。
少し難しい「鹸化反応」ですが、マグネシウムによって食事に含まれる脂質が、からだに吸収されにくい形になる反応と覚えておきましょう。
おすすめ理由③ 歯や骨を強化
歯や骨はカルシウムだけでできていると考える人は多いと思いますが、マグネシウムも歯や骨を構成しています。体内のマグネシウムの50〜60%が骨に存在しているほど。
カルシウムは骨の強度を高め、マグネシウムは骨の柔軟性や弾力性を高める役割をしています。硬度と共に柔軟性・弾力性を備えることで、簡単には折れにくくなるのです。
骨のマグネシウムの3分の2は、骨の主成分であるハイドロキシアパタイトに組み込まれており、マグネシウムが不足すると、骨の内部からマグネシウムが不足を補うため動員され、ハイドロキシアパタイトの結晶が繊密さを失い、骨や歯がスカスカになります。
“カルシウムは若いうちにとらなければ意味がない”というのは、小児は成長期なので、よりしっかり摂る必要があるという意味です。
もちろん、成長期以降でも、骨代謝で骨を形成しては吸収(破壊)を繰り返しているので、大人になっても毎日継続してCaとMgをしっかり摂る必要があります。
そうすることでCaで硬い骨ができ、Mgによって丈夫な骨になるのです。しかもその理想的な摂取比率はCa:Mg=1:1~1.5と考えられます。
おすすめ理由④ 冷え性や肩こりの改善
血液の循環が悪いと、冷え性や肩こりを引き起こします。血液がドロドロになる原因は様々ですが、そのひとつがマグネシウム不足です。
血液を構成する赤血球には、自分の形を変える”変形能”という性質があります。マグネシウムが不足すると、この変形能が低下し、血液が毛細血管内をスムーズに流れにくくなります。
また、もう1つの血液の構成成分に、怪我などの時に血液を固める止血作用をもたらす血小板がありますが、マグネシウムが不足すると血小板の凝集能(固まる機能)が必要以上に高くなり、血栓ができやすくなります。
したがって、マグネシウム不足の場合にマグネシウムを十分に補うと、この逆の作用が働き、血液がサラサラになるのです。血液がサラサラになることで冷え性や肩こりの改善にも役立ちます。
おすすめ理由⑤ 便秘解消
マグネシウムには水分を引き込む作用があり、これが便秘に有効に作用してくれます。マグネシウムをしっかり摂ると、腸内に水分が引き寄せられ、腸の内容物が水を含んで柔らかくなり、体積も増えることで、大腸への物理的刺激が生じ排便が促進されます。
一般的によく用いられる、腸の動きを薬理学的に刺激し、促進するタイプの便秘薬は、腹痛が生じたり、連続使用したときに効果が減弱する「薬剤耐性」や、使用しないと便が出にくくなる「習慣性」が生じることがありますが、マグネシウムはこれらの弊害が生じにくいので、とても安全で有効に便秘解消に役立ちます。
マグネシウムを多く含む食品(100g当たり)
マグネシウムが多い食品は「そばのひ孫と孫わ(は)やさしい子かい?納得!!」と覚えると簡単です。これはマグネシウムを多く含む主な食品20品目の頭文字をつなげた標語。
「そ」そば
「ば」バナナ
「の」海苔
「ひ」ひじき
「ま」豆
「ご」五穀
「と」豆腐
「ま」抹茶
「ご」ゴマ
「わ(は)」ワカメ
「や」野菜
「さ」魚
「し」しいたけ
「い」いちじく
「こ」昆布
「か」カキ
「い」芋
「なっ」納豆
「と」とうもろこし
「く」くるみ
これらの食材を毎日の献立に組み合わせることが大切です。
他にもさまざまな食品に多くマグネシウムが含まれますが、伝統的な和の食材が多いことに気が付かれたと思います。
マグネシウム補給のアイテムとして「にがり」も取り入れてみよう!
お豆腐にも使われるにがりには、マグネシウムが豊富に含まれています。服部栄養料理研究会 会長 服部津貴子先生は、日常的に取り入れることをおすすめしています。
ですが、にがりそのものをスーパーで手に取ったことがある人はほとんどいないのではないでしょうか。手軽に食事にプラスする方法を教えていただきました。
にがりは商品によって濃度が様々なので、今回は大さじ15mlにマグネシウムを140mg含むにがりを使っています。
■教えてくださった方
服部 津貴子(はっとり つきこ)先生
服部栄養料理研究会 会長
フランスとスイスの料理学校に留学後、服部流家元に就任。服部栄養料理研究会 会長。服部栄養専門学校 理事。学園の教壇に立つ傍ら、「食育」を広める活動に携わる。食育関係の著作も多数。
TVでおなじみの服部幸應氏は兄。
飲み物
水やお茶・紅茶・コーヒーなどの飲料200mlに対して、小さじ1杯(5ml)程度加えて飲む。
炊飯
お米2号に15ml(大さじ1杯)を加えて炊く。ご飯もふっくら、モチモチに!
味噌汁
水100mlに対して、小さじ1杯(5ml)を加えるとコクが出る上、手軽なマグネシウム補給にも。
にがりを使った簡単イタリアンレシピ紹介(鯛のカルトッチョ)
材料
・鯛 4切
・ニンニク 1片
・椎茸 4枚
・しめじ 1パック
・アスパラ 4本
・プティトマト 8ヶ
・アサリ 20ヶ
・天塩 少々
・胡椒 少々
・ピュアオリーブオイル 少々
・天海のにがり 小さじ2
・EXVオリーブオイル 大さじ4
作り方
①キノコを炒め、塩・胡椒をし、ニンニクを入れ、香りつける。
②トマトを半分に切る。
③アルミホイルにオリーブオイルを塗り、キノコ・アスパラ・アサリ・トマト、塩・胡椒した魚を並べる。
④EXVオリーブオイル・天海のにがりをかけ、蓋をし、オーブントースターで膨らむまで加熱(4~5分)する。
今回は、スポーツ女子にとって嬉しい働きを備えているマグネシウムについてお伝えしてきました。にがりを生活の一部に取り入れて、マグネシウムを取り入れる習慣を作ってみてはいかがでしょうか?
2020年06月4日