妊娠中と産後のトレーニングの疑問にお答え。トレーナー×鍼灸師対談

妊娠中・産後のからだの変化や、トレーニングの正しいやり方について、知らない人も多いのではないでしょうか。今回は、日頃トレーニングをしている女性が戸惑わないために、妊娠・産後のからだやトレーニングについての素朴な疑問を、マタニティケアや産後トレーニングに詳しいフィットネスインストラクターの今野龍子さんと、鍼灸あんまマッサージ師の小山ともえさんに伺いました。

プレママ、ママさんから頼られるお二人の仕事

ー本日はよろしくお願いします!

早速ですが、お二人のところにはどんな目的でプレママさんやママさんがいらっしゃることが多いんですか?

今野さん
私はハードめなレッスンをやることが多いので、妊娠中より産後や育児中のママさんに関わることが多いですね。

産後、病院の先生からOKが出て、お子さんを保育園や幼稚園にあずけて自分と向き合う時間が作れたときにいらっしゃる人が多いですよ。

目的は、体型を戻したいとか、リフレッシュのためとか。運動習慣がもともとあった人とかは、早ければ産後半年ぐらいで来る方もいらっしゃいます。小山さんのところはどうですか?

小山さん
私のところには、不妊に悩む方、妊娠中の方、産後の方など色々な方がいらっしゃいます。

妊娠中の方は、つわり、逆子など妊娠中ならではのお悩みで来られることもありますし、通常の薬を飲めないので、頭痛、腰痛、肩こり、むくみなどのマイナートラブルを緩和するために鍼灸やマッサージを受けにいらっしゃる方もいます。

産後の方だと、骨盤の歪みを整えにいらっしゃる方が多いですね。

ー妊娠中・産後と一言で言っても色々な悩みがあるものなんですね…。

トレーニングについてもお聞きしたいと思います。

妊娠中のからだの変化とトレーニングについて

ー妊娠中もトレーニングって続けて良いのでしょうか?

小山さん
妊娠すると、10ヶ月程かけてホルモンの影響を受けながらゆっくり骨盤周辺が変化してきます。初期の頃は早産や流産を防ぐためにも、お医者さんから運動を控えてくださいと言われますが、16週を過ぎて安定期に入ったころからは、基本的には適度な運動をするのは良いとされています。
今野さん
適度っていうのが難しいですよね。
小山さん
過度にお腹に圧がかかるとかじゃなく、自重の動きであればお医者さんからOKをもらっていれば大丈夫です。

子宮口が開いている人や、子宮頚管長が短い人などは特に注意が必要なので必ずドクターに相談しましょう!

ートレーニングしちゃダメというわけではないんですね。ちなみに妊娠中ってその他にどんな悩みを持つ人が多いんでしょうか?

小山さん

妊娠初期の頃は、からだに大きな変化が出てきていないのに、今までみたいに思うように動けなくてもどかしいという話をよくお聞きします。

あとは、職場で今まで気にならなかった隣の人の匂いで気分が悪くなってしまったけど言えない、という方もいらっしゃいました。

お腹が出てくると周りの方も気にかけてくれるので、少しは過ごしやすくなるようですが…。

ー周りの人に言えないのは辛いですね…。

産後のケアとトレーニングについて

ー産後のケアで、しておいた方がいいことはありますか?

小山さん
産後3ヶ月間はホルモンの影響で骨盤が安定しづらいので、出産直後から骨盤ベルトは必須です!
今野さん
やっぱりベルトがいいんですね!骨盤ショーツなどもありますが、それってどうなんでしょう。
小山さん
私が以前勤めていた整体院では、空気圧で骨盤を左右から締めていく施術と、ゆがみのある方に対しては三角ブロックという道具を使って正しい位置に戻していく、という施術を行なっていました。骨盤ショーツではゆがみには対応しづらいんですよね。
今野さん

自分の骨盤の状態がわからないと正しい処置ができないから、やっぱりプロにみてもらった方がいいですね。ちなみに、どんな骨盤ベルトが良いとかありますか?

小山さん
伸縮性がないものの方が固定する力が強いので、家事をしている時や歩いている時など日常的につけてもらうと良いと思います。反対に、運動やトレーニングをする時には伸縮性のあるものを付けるなど、使い分けがポイントです。

あとは、産後すぐにできる産褥(さんじょく)トレーニングとして、腕をまわして肩甲骨周りをほぐしたりすると肩こり予防になるのでおすすめです。骨盤に体重がかかる動きは避けたいところです。

今野さんのトレーニングは、ボディメイクに効きそうですね。どんなトレーニングをするんですか?

今野さん
私のレッスンには、最初に話した通りお医者さんのOKが出て産後半年以上経過してから来る方が多いのですが、通っている方は前向きに取り組まれる意識の高い方が多いですよ。

こうなりたい、という目標が明確なので、じゃあそのためにまず3日頑張ろう、それができたら3週間、それができたら3ヶ月、と一緒に取り組んでいきます。基本的には全身を動かして心拍を上げる有酸素運動を、グループレッスンで行います。

ただ結構激しいので(笑)まずはからだの回復が第一として、簡単なところで複式呼吸を行うことからトレーニングとして始めても良いと思います。

ー激しいトレーニングは、産後半年程度経過してからの方が良さそうですね。

小山さん
そうですね。激しい運動に関して個人差はもちろんありますが、骨盤がしっかりと固まるのが半年と言われていますので半年ぐらい経ってしっかり骨盤が安定してからやるのがおすすめです。

今野さん
お医者さんからOKが出てる前提で、半年経過していたらトレーニングしやすいと思います。ただやっぱり、継続的なトレーニングは、モチベーションが上がってからが良いと思います。

産後でどんなに焦っても、やる気が出ないときのトレーニングはストレスを増やすだけなので、よし、やろう!と思った時がスタートのタイミングだと思ってもらえればと。女性は生理の時ですら気分が落ち込んだり骨盤が安定しづらくなったり波があるし、からだと心の状況は人それぞれですからね。

でも実は産後3ヶ月〜半年頃って、自分のからだを見直すチャンスでもあるんですよね。これまで気になっていたお腹周りやお尻の周りをボディメイクし直す黄金期。

小山さん
本当にそれ!そうなんですよね、女性にだけ訪れるチャンス。私の友人に、もともとO脚の子がいたんですが、産後に骨盤をしっかり整えてあげたら、少し改善されたということがありました。

よく産後のお尻は四角くなると言いますが、きちんと整えてあげれば、丸いお尻も目指せます。そのあと今野さんのレッスンで筋トレしたら完璧かも。

今野さん
完璧ですね!ただでさえトレーニングは正しいフォーム、姿勢で行わないと効果が出ないものです。骨盤を正しい位置に戻してあげて、正しいフォームでトレーニングをすれば、きゅっと引き締まった丸いお尻ができますね。

ーなんだか不安より希望の方が大きくなってきました…!妊娠中は安定期からの適度な運動、産後はまず骨盤を安定させるためのケアをして、安定したらボディメイクにトライ!

これから妊娠、出産の可能性がある女性にとって非常に参考になる情報でした。

今野さん、小山さん、ありがとうございました。

プロフィール

今野 龍子

NIKE公認トレーナー
元プロキックボクサー
フィットネスインストラクター
IHTA認定 チャイルドボディセラピスト

1985年 千葉県生まれ。

小学校から青春時代までバスケットボール部に所属。卒業後は近所のキックボクシングジムにダイエット目的で通い出すも、偶然観戦した「女性同士の試合に刺激され、自分自身もプロのキックボクサーとなる。20戦近く戦いその階級の1位まで上り詰めたが、大切な試合で大怪我を負い引退。その後、キックボクシングをバックボーンにオリジナルキックボクササイズを教えるインストラクターとなる。

今野さんのインタビュー記事はこちら。

 

小山 ともえ

取得資格

◇国家資格鍼師、灸師、あん摩指圧マッサージ師
◇JAWH公認マタニティケアリスト
◇JAWH公認レディース予防医学指導師

幼少期より新体操や器械体操の競技経験を経て、高校ラグビー部のマネージャーを経験し「信頼され、人を支える」ことができるトレーナーを志し、鍼灸師の資格を取得。学生時代には学生トレーナーとしてラグビーや水泳などのスポーツ現場で経験を積む一方、タイ古式マッサージやフットリフレクソロジーを取得。

国家資格取得後、整形外科にて、さまざまな年齢層の女性の運動教室や治療を担当。女性のライフステージに合わせた治療ができるようになりたいと思い、マタニティーケアを専門とした鍼灸サロンに勤務。不妊治療・妊娠・出産・産後のオリジナルケアを学び技術を習得。また、自身の結婚経験も踏まえ、美容鍼灸、ストーンカッサを取り入れたオリジナルブライダルケアも生み出している。

 

※実際に妊娠中や産後にトレーニングを行う時には、医師に相談した上で行なってください。

(文:辻岡奈保美)

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