「長距離ランナー必見!走れる身体をつくる」岩出玲亜選手×管理栄養士・佐藤彩香さんによる栄養セミナーレポート
「大会前に、どんな食事を摂ればいいの?」「長距離を走りきったあとには、疲れて食事が摂れない・・・」
長距離ランナーの悩みに多く見られる、パフォーマンスを上げるための食事方法や、「隠れ貧血」の予防について。わたしたちは普段から何に気をつけ、どのようにアプローチをすればいいのでしょうか?
B&では、正しい知識をベースに「走れる身体をつくる」ための栄養セミナーを開催。ゲストには現役アスリートであるプロマラソンランナー・岩出玲亜(いわで れいあ)選手と、管理栄養士の佐藤彩香(さとう あやか)先生をお招きしました。今回は、お二人による講義+トークショーの様子をお届けします。
■ゲスト
岩出玲亜(いわで れいあ)
プロマラソンランナー
小学6年生から陸上を始める。全国高校駅伝で準優勝後、実業団時代に2つの日本記録を樹立し2017年にプロ転向。当時マラソンチームのなかったアンダーアーマーに移籍し、2019年名古屋ウィメンズマラソンでは日本人1位・自己ベスト更新。2020年9月にフリーへ。第一線で戦いながら「走ることで感動を届ける」ことを自らの使命として活動している。
Instagram:@reiaiwade
Twitter:@Reiaiwade
■セミナー講師
佐藤 彩香(さとう あやか)
管理栄養士
企業や保育園で栄養カウンセリング、献立作成、栄養計算、店舗運営を経験し、その後に独立。健康を土台とした実践型の栄養サポートを行い、プロアスリート~スポーツキッズ、ダイエット希望の方など累計5,000人を超える人々と関わる。現在はパーソナル栄養サポート、セミナー講師、ライター活動、レシピ開発なども行ないながら、「あなたのかかりつけ栄養士」として活動している。
これも貧血?女子アスリートが抱える「貧血」の悩み
日常的に運動量の多いアスリートをはじめ、貧血について悩みを抱えている女性は多いもの。貧血のなかには、厄介な「隠れ貧血」も潜んでいることを、みなさんは知っていますか?
貧血の種類
貧血は主に鉄欠乏症貧血と、その他(再生不良性貧血・巨赤芽球性貧血・溶血性貧血)に区分けされます。一般的な「貧血」で多いのは鉄欠乏症貧血であり、さまざまな原因によって引き起こされています。
【主なる鉄欠乏症貧血の原因】
【鉄欠乏症貧血になりやすいアスリートの特徴】
・持久系スポーツ▶︎体重が軽いことが有利になることもあり、食事制限が必要な場合がある。エネルギー不足による貧血。
・審美系スポーツ▶︎審美(見た目)が採点に影響するため、食事制限が必要な場合がある。エネルギー不足による貧血。
・女性アスリート▶︎月経が原因の貧血。
貧血チェック
普段とは違う身体の症状が、実は「貧血」のサインである場合も。
下記をチェックして、身体の不調に“隠れ貧血”が潜んでいないか確認してみましょう。
○疲れやすい
○風邪をひきやすい
○冷え性
○神経過敏
○髪の毛が抜けやすい
○あざがよくできる
○めまい
○耳鳴り
○立ちくらみ
○肩こり
○寝起きが悪い
○むくみ
○動悸、息切れ
○頭痛
○生理不順・PMS
○氷が食べたくなる
○注意力低下
○集中力低下
○腰痛
○顔色が悪い
貧血の仕組み
「貧血」はどのような状態を指すのでしょうか?車を例にした仕組みで理解していきましょう。
貧血を避けるための食事
では、わたしたちは貧血を避けるためにどんなことができるでしょうか?食事面のアプローチについて、適切な知識を学んでいきます。
【積極的に摂りたい具体的な食材】
①鉄分 ▶︎ヘム鉄(吸収率10〜30%):赤身の肉・魚
▶︎非ヘム鉄(吸収率10〜30%):卵・あさり、しじみ・納豆等の大豆製品・牡蠣・ほうれん草・ひじき
②造血ビタミン(葉酸・ビタミンB12) ほうれん草・小松菜などの葉物野菜、海藻類。肉・魚・卵・大豆製品、乳製品など。
③タンパク質 肉・魚・卵・大豆製品、乳製品など。
・非ヘム鉄<ヘム鉄
【押さえておきたいポイント】
・ビタミンCが鉄分の吸収効率をUP
・サプリメントの服用は、朝の時間帯がおすすめ
長距離を走るからだを作る、エネルギー摂取
糖質は、わたしたちのからだのエネルギー源のうちの50〜60%を占めています。長距離を走るからだをつくるには、糖質が必要不可欠。適切な量や食べるタイミングを知り、からだづくりに繋がる食事を心掛けましょう。
【体重・運動量で判断する糖質摂取量】
低強度・技術重視(ヨガやウォーキングなどを数十分行う場合):3-5g/1kgあたり
通常練習やトレーニングを1時間/1日行う場合:5-7g/1kgあたり
中程度〜高強度の運動を2-3時間/1日行う場合:6-10g/1kgあたり
中程度〜高強度の運動を4-5時間/1日行う場合:8-12g/1kgあたり
例:体重55kgで、中程度の運動を1日2時間行なった場合
▶︎6-10g×55kg=330-550gの摂取が必要
【糖質摂取のポイント】 ・お米(ご飯1合=茶碗2杯分)→110g
・食パン(6枚切り1枚)→30g
・うどん麺(1人前)→60g
・バナナ→30g
・芋(1個110gの場合)→15g
・大福(1個)→35g
カーボローディングについて
カーボローディング(グリコーゲンローディング)とは、試合前の調整に用いられる食事戦略のひとつです。持久力の向上が見込める方法ではありますが、取り入れる際には注意も必要となります。
【カーボローディング実施の条件】 1.運動時間が90分以上であること
2.強度の高い持続的な運動であり、グリコーゲンが枯渇するリスクがある場合
3.試合の後半に疲労が生じる可能性がある場合
4.アスリートに、高糖質食を摂取する意欲があること
5.高糖質食を避けるべき疾患がない場合
①最低限の糖質が日常的に摂取できているかを確認し、食べる習慣をつける。
②30km走などの練習会が実施される機会で試しに行ってみる。
向き・不向きのある方法ではあるので、実際に試してからの実践をオススメしています。
参加者からの質問タイム
セミナーの最後には直接質問ができる時間があり、この日のトーク内容から日頃抱いていた疑問点まで、さまざまな質問が飛び出しました。(一部抜粋)
Q 鉄を摂るときお茶やコーヒーと一緒に摂取すると吸収が阻害されると効いたことがあるのですが、本当に気をつけたほうがいいのでしょうか?
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Q 鉄の吸収は空腹時がよいとのことですが、食材から摂取する場合は食事の初めに(肉などの鉄分を)食べたほうが良いのでしょうか?
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Q MCTオイルとヨーグルトを混ぜて食べているとのことですが、MCTオイルを摂取する理由、体感の変化があるか、食感(味)を知りたいです。
お通じか良くなったと実感していて、私の場合は腸の調子がパフォーマンスにもつながるので摂取し続けています。味はありません。ヨーグルトとか納豆に入れて摂るようにしています。
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和気あいあいとした雰囲気でセミナーは進行し、正しい情報を知り実践していくための知識を存分に得ることができた充実の1時間半でした。
パフォーマンスの低下を引き起こす可能性もある「隠れ貧血」や、長距離を走るための身体づくりに不可欠な食事の基礎知識。それらを知り、実践する。習慣ひとつで変わるコンディションやタイムがあります。わたしたち自身で築き上げていく、それぞれの「身体を考える」ひとつのきっかけになるといいなと思います。
★その他、以下のような質問にもお答えしています。
岩出さん、佐藤先生からの回答は公式LINEアカウントのタイムラインに掲載していますので、ぜひ登録してチェックしてみてください。
Q 試合前にご飯をしっかり食べたほうがいいのに体重が増えるのが悩みです。
Q 普段運動をしていて運動をしない期間がくると体重が増えてしみます。どう調整したらいいのでしょうか。
Q 野菜ジュースは野菜のかわりになりますか?
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