「気をつけていたつもりだけど、年末年始に増加した体重がまだ戻らない」
「お菓子や甘いものが好きで、減量のために我慢するとストレスになってしまう」
B&では、正しい知識をベースに「代謝を落とさずに減量するための食事の摂り方」についての栄養セミナーを開催。ゲストには、現役アスリートであるアルティメット選手・田村友絵(たむら ともえ)選手、講師には管理栄養士の佐藤彩香(さとう あやか)先生をお招きしました。
今回は田村さんのリアルな食生活や減量の悩みを、多くのアスリートをサポートする専門家に解決してもらう、実になるトークショー形式で進行。スポーツやトレーニングをしている人なら誰しも共感できる、お二人による講義+トークショーの様子をお届けします。
■ゲスト
田村 友絵(たむら ともえ)
アルティメット選手
大学時代にアルティメットを始め2016年に日本代表デビュー。会社員として働きながら、競技者として数々の大会で成績を残す。現在は強豪チームMUDに所属。直近の対戦成績は2019年2月の甲州オープン大会優勝、同じく6月には日本代表としてAOBUC2019ミックス部門で銀メダルを獲得。
現在は日々練習に励みながら、アルティメットの魅力を伝えるため、TV・雑誌・ラジオなどにも積極的に出演中。2019年7月 文部科学大臣杯全日本アルティメット選手権大会優勝。
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■セミナー講師
佐藤 彩香(さとう あやか)
管理栄養士
企業や保育園で栄養カウンセリング、献立作成、栄養計算、店舗運営を経験し、その後に独立。健康を土台とした実践型の栄養サポートを行い、プロアスリート~スポーツキッズ、ダイエット希望の方など累計5,000人を超える人々と関わる。現在はパーソナル栄養サポート、セミナー講師、ライター活動、レシピ開発なども行ないながら、「あなたのかかりつけ栄養士」として活動している。
OFFICIAL BLOG「三度の食事は三回のチャンス」
田村選手の相談リストを公開
新年の始まりを迎えて早くも1ヶ月が経過しました。理想的な年末年始の食生活を過ごされた方、やってしまったと頭を抱える方、みなさん様々かと思います。
今回は、現役アルティメット選手の田村友絵さんのリアルな食生活や減量の悩みを、管理栄養士の佐藤彩香(さとう あやか)先生が解決していきます。事前に田村選手に、佐藤さんに相談したい内容をヒアリングしました。
【田村選手の相談リスト】
甘いもの、お菓子大好き!どう付き合ったらいい?
PFCバランスってどう計算したらいいの?
実はPFCだけでなく、ビタミン・ミネラルも大事
チートデイの取り入れ方
減量に効果的な食事&トレーニングのタイミング
心を休め体を労わるオフ期から、体のスイッチをオンしていくこれからの時期。「代謝を落とさずに減量するための食事の摂り方」を知って、効率よく体重をコントロールしていきましょう。
“甘いもの”との付き合い方
早速なんですが、わたしは甘いものが大好きなんです。今回、リアルな悩みを相談させていただけるということで、真っ先にこの“甘いもの”との付き合い方が頭に浮かびました。
わたしも甘いもの好きですよ、今日もチョコレートを食べました(笑)。どうしても、好きなものを100から0になくすということは難しいので、選択法を採りましょう!ちなみに、田村さんの好きなスイーツはなんですか?
和菓子よりも洋菓子、特にケーキやクッキーが好きです!糖質制限をしている場合には、何を選ぶべきでしょうか。
洋菓子・和菓子のメリットはさまざまなので、自分が取り入れている減量方法に合わせて選びましょう。和菓子は一般的にカロリーが低いので、カロリー制限による減量効果は期待されます。
糖質制限を取り入れている場合、糖質の多い和菓子は『血糖値スパイク』が起こりやすく、食欲が増してしまう心配があります。洋菓子を選ぶと、摂取カロリーは上がりますが血糖値スパイクは起こりにくいので、糖質制限で減量につなげたい場合は洋菓子を選ぶといいですね。
わたしは糖質制限派なので、よかったです。間違ってなかった!
理想的なスイーツとしては、カカオ含有量の多いチョコレートやギリシャヨーグルト、ナッツがおすすめです。
日常的に、ヨーグルトにフルーツを入れて食べているので、これも正しかったんですね、ひと安心です。
とは言え、甘いものがどうしても食べたくなってしまった場合には、上記のなかから選んでみてください。
また、甘いものを摂取するのにおすすめの時間帯は、14:00〜15:00が脂肪になりにくい時間帯と言われています。
【ポイント】
・糖質制限をしているのであれば洋菓子を選ぶ、カロリーに注意。
・おすすめのおやつは、高カカオのチョコ・ナッツ類・ギリシャヨーグルト。
・時間帯は、14:00〜15:00がもっとも脂肪になりにくい
ちなみに田村さんが好きなフルーツタルトは、フルーツが使われている分、スポンジやクリームなどが少なく糖質が控えめなので、NGスイーツではありません。もしハイカロリーなものを摂る場合は、食べる前に難消化性デキストリン(食物繊維として働く)が入った飲み物を摂るのもおすすめです。
PFCバランスの計算方法
PFCバランスが大切ということはよく聞くんですが、どうやって計算をしたらいいんですか?
一般的に、炭水化物が50-65%・脂質が20-30%・タンパク質が13-20%を全体のバランスとして考えていきます。ここで、クリスマスや年末年始の食事について振り返ってみましょう。
例えば、白米の普通盛り(140g)のカロリーが235kcalに対して、フライドチキンのカロリーは235kcalと同等ですよね。
ですが糖分と脂質を比べていくと、クリスマス期間の食事は脂質過多の傾向にあります。また、年末年始は栗きんとんや甘く炊いた黒豆など、糖質過多になりがちなんですよね。
もし“やってしまった”と思った場合、何日以内なら修正が可能ですか?
早いに越したことはありません(笑)次の日にはリセットするとスムーズにその後を過ごすことができます。
続いて、田村さんもお好きなヨーグルト関連で、『飲むヨーグルト』の成分表を見てみましょう。栄養成分を見る限りはバランスがよさそうに見えても、糖質が70%を越えてるので、ブドウ糖が血糖値を急上昇させてしまいます。摂るなら食事のあとをおすすめします。
成分表をよく見るのですが、飲むヨーグルトは脂質が高いことで避けてました。
成分表の確認、大切ですね。ちなみにヨーグルトなどの発酵食品は、動物性の乳製品か食物性の大豆製品かでメリットが異なってくるので、1日のトータルバランスを考えたうえで、自分に合ったものを選びましょう。
トータルで意識する、という点はあまりできてなかったですね・・・ついつい“ばっかり食い”になりがちなので、バランスの意識を大事にしていきたいです!
ビタミン・ミネラルの重要性について
ちなみに
PFCバランス以外にも、ビタミン・ミネラルが脂肪を燃焼させるうえで重要な役割を持つことはご存知ですか?
“エネルギー代謝をあげること”は、太りにくい体質につながります。エネルギーを燃やすための栄養成分に、①ビタミンB群②亜鉛③マグネシウム(ミネラル)を摂ることで代謝効率が上がるんです。
ビタミンやミネラル、盲点でした。わたしは意識ができてなかったですね。
ビタミンB群の吸収を高める『アリシン』も一緒に覚えてください。熱に弱いので、なるべく調理の最後に使用すると吸収効率が上がりますよ。
アリシン、初めて聞きました!ネギやニンニクは生であまり食べないですね。でも上記を見ていると、好きな食べもの・積極的に摂っているものが多いです。
アリシンを摂る意識をする場合、玉ねぎをスライスしたサラダや、馬刺しや鰹のタタキの薬味として摂るのがおすすめです。
チートデイの取り入れ方
佐藤さんに、わたしが週に一回取り入れているチートデイについて伺いたいんです。わたしの場合は“チートデイに食べたいもの”をメモしておいて、日曜日に食べたいものを食べるという取り入れ方をしています。この方法は合ってるんでしょうか?
チートデイ、アスリートの方によく聞かれるトピックです。
そもそもチートデイは、減量するうえで“体を騙しながらやっていく”ために導入するもので、停滞期をうまく乗り越えるためのものです。ストレスフリーになることが狙いですが、やたらと食べていいわけでもないので難しいですよね。
チートデイ設定のポイント
・停滞期に照準を合わせる
・実施日数を決める
・管理周期を考える
女性には、生理周期によって身体のコントロールが難しい場合がありますよね。「どうせ痩せないのであれば」と黄体期にチートデイをぶつけたり、逆にエストロゲン優位の、痩せやすい時期にチートデイを設定するのも選択肢の一つです。
自分にとって、減量のストレスを減らせるタイミングを考えられるといいですね。
ちなみにチートデイを取り入れる日数についてですが、週に一度は多すぎますか?
チートデイの実施日数に関するエビデンスが出ていないのですが、ストレスを減らすことを目的とした場合、週に一度のペースでいいと思います。
それよりも、“ダラダラと減量期を続けないこと”にフォーカスをして、自分の食欲や体重の増減に関わる特性を知ることを意識していきましょう。
減量に効果的な食事&トレーニングのタイミング
わたしは糖質制限を取り入れているのですが、減量に効果的な食事方法や、トレーニングのタイミングについて教えてください。
糖質は、トレーニングの強度に合わせてコントロールをする必要があります。今回は、糖質制限の見直しに際して提唱された『Sleep-Low(スリープロー)戦略』をみていきましょう。
初めて聞きます!従来の糖質の摂り方とはだいぶ異なるんですね。わたしの場合、トレーニングをする前後に糖質を摂るという、オーソドックスな方法を取り入れてました。
Sleep-Low戦略は、特にエンデュランス系の競技に向いているのですが実践の際にはいくつかポイントがあります。
①夕食に糖質を控え、タンパク質中心の食事を摂る
②朝食を摂る前に低強度・長時間の持久的トレーニングを行う
③午後に糖質を補給する
気をつけるべき点として、朝、空腹状態のまま低強度の持久的トレーニングを行う際には、水分摂取を積極的に行うことです。水分のみ摂取をし、糖は入れずに長時間のトレーニングを行うことで、体脂肪の減少と最大酸素摂取量の増加が期待できると言われています。
この場合、朝に行うトレーニングは何が適切ですか?ジョギングとかですかね。
まさしくジョグはおすすめです。心拍数があまり上がらないような、低強度のものを行なってください。
既存の知識のみを実践するのではなく、最新の情報を知り、自分に合った方法を選んでいくことが大切ですね。シーズンインに向けてがんばります!
参加者からの質問タイム
Q.田村さんが普段よく食べるタンパク質源はなんですか?
とりのむね肉にささみ、大豆製品の納豆など、手軽に手を出しやすいものが多いです。
Q.PFCに加え、ビタミンミネラルも必要とのことですが、全体のバランス的にどのくらいの割合を摂ればいいですか?
ビタミンには様々な種類のものがありますが、PFC(三大栄養素)には含まれず、微量栄養素となります。割合(%)の概念で考えるのではなく、グラム単位で考えるのがよいですね。
Q.田村さんは糖質制限をされているとのことですが、糖質は全体の何%ぐらいに抑えればいいですか?
一概に、何%とは言えず、緩く糖質制限を行なっている人もいれば、ケトジェニックという、糖質を全体の5%程度に抑える方法を取り入れている人もいます。ケトジェニックを実施する際には強い意思を持つことと、金銭面の負担は避けられません。慣れてないために、体調不良も起こりがちで、デメリットが多いなという所感です。ガイドラインがまだ定まっていないのですが、ファットアダプト(糖質を3割、7割をタンパク質と脂質ぐらい)・120〜140gの糖質量が最初の指針としては導入しやすいかなと思います。
Q.高強度の朝練前にオススメの朝食はありますか?
朝から高強度の練習を行う場合、摂取する糖質の割合が必然的に上がります。しっかりと糖分(米・パン・麺・果物)を摂りましょう。1~2時間の部活動などは、ブドウ糖由来(米・パン・麺)のものと果物由来の糖分と、2つのものを組み合わせて摂るとよいです。
Q.タンパク質を中心にした生活を糖質制限の際にやっていたら、腎機能に支障が出ました。
その場合は、シンプルにカロリーを落として減量をする方法をおすすめします。主食である米やパンを抜くのではなく、
PFCバランスを崩さずに全体量を減らすことが重要です。
野菜・きのこ・海藻類などの食物繊維をしっかり食べて満腹感を得ることを意識してみてください。
Q.朝練がハードな場合、食べるのがしんどいことがあります。食べると走れなくなることもあります、どうしたらいいですか?
食べてから運動するまでどのくらい時間があくかによりますが、すぐに消化されるゼリー飲料が一番取り入れやすいかなと思います。また、果物を摂ってみるのはどうでしょうか。
私も朝はあまりご飯食べられなくて、バナナジュースをミキサーで作って飲んだりしていました。空っぽな状態で練習に行かずに、摂れるものを探してみるのがいいと思います。
Q.脂肪燃焼スープをはじめとする、一週間のファスティングなどはリバウンドにつながりやすいでしょうか?
ファスティングにも、一週間食べない・3日間食べない・
2日ごとに食べるなど様々な方法がありますが、ファスティング期間前の準備と、期間後に自然な食生活に
“戻す
”やり方を間違えなければ、リバウンドは多くないのかなと思います。ファスティング後にどか食いをしてしまったり、吸収モードにスイッチしないよう、カロリーの少ないおかゆやお豆腐・白身魚などの消化が良くてカロリーが低いものを摂りましょう。
準備と回復に時間がかけられるのであれば、チャレンジの価値はあると思います。
Q.スリープロー戦略について、トレーニング中におすすめの飲み物はありますか?
あえて糖質を枯渇させる方法になるので、ジョグ程度の練習強度であれば、ミネラル補給(タブレットなど)をしながらお水をとって、あとで糖質を摂るようにしてください。
Q.スリープロー戦略の中で「油を燃焼させるのが目的」とありましたが、筋肉分解も入ってくるのではないでしょうか。それを抑制するためのアミノ酸摂取をすべきですか?
論文ベースで見て行くと、スリープロー戦略を行うことで筋肉量が下がったという報告は上がっていません。“糖質をコントロールする”ことは、直近の数年に提唱されはじめたこともあり、アミノ酸が必要であると断定はできないのですが、心配であればアミノ酸摂取もご検討されるといいかなと思います。
Q.アスリートと社会人を両立されている田村さんは、食事を摂るときに何を意識していますか?
仕事をやっていると、食事の時間が確保しづらいこともあります。昼食の時間帯もバラバラだったり、残業も多く夜も遅くなりがち。社内に給湯室があるので、空腹状態が続かないよう仕事の合間にプロテインを摂ったり、間食にはナッツやチーズを多く摂るように心がけています。