浦和 遠藤優が、プロになって抱いた自覚。「知ってもらう努力は選手がするべき」

三菱重工浦和レッズレディース所属の遠藤優(えんどう・ゆう)選手は、2020年の女子サッカープロ化(WEリーグ創設)を機に、積極的なSNSでの発信を始めました。その背景にあるのは、自ら知ってもらう努力が必要だというプロ選手としての自覚です。

試合への思いはもちろん、プライベートや趣味のネイルについても投稿を続けています。

発信することで自分の発言に責任を持つようになり、サッカーでの結果にも繋がったという遠藤選手。「まだまだ女子サッカー界では、発信する必要性を感じていない選手が多い」と課題を感じている元チームメイトの泊志穂さんが、発信への思いを伺いました。

(聞き手:泊志穂、文:市川紀珠)

発信をきっかけに、女性ファンを増やしたい

遠藤選手は、レッズレディースの中でもSNSでの発信を活発に行なっている印象があります。試合について思いを書いたり、プライベートについて投稿したりと発信を始めたきっかけを教えてください。

遠藤さん

2年前、リーグがプロ化してから積極的にSNSで投稿し始めました。当時はあまり試合に出場できていなかったので、自分がどのような選手なのか、自ら広めていく必要があると思ったんです。

最初は何を投稿していいのか分からず、手探り状態でした。とはいえ、根底に「女子サッカーを知って欲しい」という思いがあったので、まずは試合についての思いを投稿するところから始めました。今ではトレーニング動画を載せたり、Instagramで「ゆうネイル」というネイルアカウントを作って発信したりしています。

ネイルについて、別のアカウントで投稿することにした理由は?

遠藤さん

アスリートとしての自分を知ってもらう場所と、ネイルについて発信する場所、アカウントごとに発信する内容を分けたかったんです。後者では、ネイルをきっかけに私を知っていただき、女子サッカーにも興味を持っていただければと思っています。

ネイルはいつから始めたのですか?

遠藤さん

大学3年生の時に初めてネイルサロンに行って、とてもテンションが上がったんです。こんなに嬉しい気持ちになるのだと。そこから自分で勉強して、ネイリスト検定3級と日本化粧品検定2級を取得しました。

女子サッカーのファンは男性が多いので、ネイルアカウントをきっかけに女性ファンが観てくれるようになると嬉しいですよね。

遠藤さん

そうですね。ネイルアカウントは女性のフォロワーが多いので、ここからサッカーを知ってくださる方が増えると嬉しいです。男性サポーターの方からお声がけいただくのはもちろん嬉しいですが、同性から憧れられる存在になりたいと思っています。

ネイルチップのプレゼント企画は好評でした。私の発信をみてネイルをする選手も増えてきていて、少しずつ広まっているなと感じています。

素直な発信が、結果にも繋がった

プライベートについて投稿することに、抵抗がある選手もいると思います。発信する中で感じる難しさはありますか?

遠藤さん

当初は「これは投稿していいのかな?」とよく周りに聞いていました。特に試合に出ていない時や、負けた時は難しかったです。「活躍できていないのに、投稿して」と思われるんじゃないかと不安がありました。

それでも自分の思いを発信し続けることが、モチベーションになりました。「今シーズンは○点決めます」などと明言することで、いい意味で自分にプレッシャーをかけられました。「周りのことなんて気にしていられない、やるしかない」と。こうして積み重ねているうちに実際に調子も上がっていったんです。今では発信を続けてよかったと思っています。

選手としての結果にも繋がっているんですね!

まだまだ女子サッカー界では、発信する必要性を感じていない選手が多いと思うんです。選手の素の思いやアスリート以外の一面を知ることで、ファンになってくださる方もいるかなと。

遠藤さん

単純に恥ずかしかったり、「自分なんかが投稿して何の意味があるのだろう」と思ったりしている選手は多いと思います。発信するのは、どんな切り口でもいいと思うんです。表に出していくことで、女子サッカーを知ってもらうチャンスを増やしていきたいと思っています。

注目されるのがどんな側面であれ、それもその人のひとつの価値ですよね。そこから女子サッカーに興味を持ってもらえれば嬉しいと思っています。投稿するにあたって意識していることはありますか?

遠藤さん

自分の思いを素直に書くことです。試合もプライベートも、抽象的な言葉を使わないようにしています。

たしかに投稿を見ていても、文章までこだわっているのが伝わってきます。

遠藤さん

嬉しいです! 今後はトレーニングや練習後の日常など、動画を増やしていきたいと思っています。ぜひ見ていただけると嬉しいです。

選手自ら、知ってもらうきっかけを作るべき

WEリーグが創設されてから2年、なかなか観客動員数が伸びていないと感じています。もっと多くの方に観てもらうために、どのようなことが必要だと思いますか?

遠藤さん

自分たちのレベルを上げることはもちろん、サッカー以外にも現地観戦を楽しむ要素が必要だと感じています。初めて観戦していただいた方に、画面越しでは味わえない体験を提供することが大事です。最初は費用がかかると思いますが、きちんと投資してスタジアム体験の質を上げるべきかなと。あとは選手自身が「どうすれば観にきてもらえるのか」を考えて実行していく必要があると思います。

選手発信での取り組みがあってもいいですよね。遠藤選手自身、何かアイデアはありますか?

遠藤さん

男子チームのサポーターの方々に、レディースの試合も観ていただきたいです。一緒にイベントをやったり、前座試合をさせていただいたり。男子チームには女性のサポーターも多いイメージなので、レディースにも興味を持っていただけると嬉しいです。

新しいことも取り入れながら、女子サッカーの認知度を高めていきたいですね。最後に、女子アスリートへのメッセージをお願いします。

遠藤さん

やりたいことを伸び伸びとやってもらいたいです。自分に自信を持って、内に秘めずに共有しあって、一緒に成長していきましょう!

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