生理とピルについて考える。東京ヴェルディ女子ホッケー、FCふじざくら山梨の現場では?mederiスポーツアンバサダーが語る
2023年1月23日(月)、mederi株式会社が「mederiスポーツアンバサダー就任 記者会見」を実施しました。
2023年1月より、 女子スポーツの発展と生理/PMSをはじめとした女性の健康管理を年間でサポートすることを目的に、 女子スポーツチームを対象とした「mederiスポーツアンバサダー」を開始。 2022年10月に実施した一般公募から6チームが就任決定しました。
●mederiスポーツアンバサダー就任チーム(順不同)
・東京ヴェルディ女子ホッケーチーム(ホッケー)
・FCふじざくら山梨(サッカー)
・KYOTO TANGO QUEENS(サッカー)
・法政大学体育会水泳部(水泳)
・中京大学体育会水泳部(水泳)
・至学館大学水泳部(水泳)
今回は、記者会見の第二部に実施されたトークセッションをお届けします。「スポーツと生理/PMS(※)との向き合い方」をテーマに、 mederi株式会社 代表取締役社長 坂梨亜里咲(さかなし・ありさ)さん、東京ヴェルディ女子ホッケーチーム 瀬川真帆(せがわ・まほ)選手、FCふじざくら山梨 ゼネラルマネージャーの五十嵐雅彦(いがらし・まさひこ)さん、産婦人科医の郡詩織(こおり・しおり)先生の4名が対談を実施しました。
※PMS:月経前症候群。生理前に起こる、さまざまな精神的・身体的不調のこと。
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もっと早く知りたかった。元競泳日本代表・松本弥生が振り返る、ピルという選択肢
自分の身体は、自分で守って。大山加奈×坂梨亜里咲(mederi代表)
「生理で体調が優れません」と言える環境を
司会:まず瀬川選手にお伺いします。生理やPMSについて、選手としてどのような悩みや課題を感じられていますか?
瀬川:高校生までは生理で悩むことはなかったのですが、18歳を超えたあたりから生理痛やむくみを感じるようになりました。練習中に腹痛でトイレに行った際、前が見えなくなるほどの痛みを感じたことがあったんです。初めて生理のつらさを実感した瞬間でした。
高校を卒業して実業団でプレーするようになってからは、ウェイトトレーニングなど、全体的な運動量が増えました。その中で、生理周期が乱れていることに自分でも気づけなかったです。
私の場合、先輩方がすでにピルを服用していたので、ピルという選択肢を身近に感じやすかったですね。きちんと産婦人科医の先生に相談したからこそ、自分にあったピルと出会うことができました。
司会:五十嵐さんは、ゼネラルマネージャーという立場で女子スポーツに関わられています。現場を見ていて、どのように感じられているのでしょうか?
五十嵐:全体的に、まだまだ生理やPMSに対する知見が浸透していないと感じています。練習中に選手が体調不良を訴えた際、女性トレーナーがヒアリングを重ねて、ようやく生理が原因だとわかることもありました。選手からすると、単なる弱音として捉えられるかもしれないという不安があると思うんです。でも、女性特有の身体の問題として監督やコーチ含めて理解をして、生理について話せる環境を作っていくことが求められていると思います。
司会:やはり、生理について話しにくいと感じる選手が多いのですね。
五十嵐:少しずつ、女性トレーナーを起点としてコミュニケーションの幅が広がってきたとは感じています。でもこれまで過ごしてきた環境で生理について話す機会がないことも相まって、「生理のことは話さない」というのが染み付いているのかなと。
選手自身、きちんと生理が来ているのか、把握できていない選手もいます。彼女たち自身が自分の身体について理解することも重要です。
瀬川:生理で体調が優れない中でも練習するのが当たり前だったので、違和感を覚えることすらありませんでした。
根性論もまだまだ根強くて、痛み止めを飲んでしのいでいる選手が多かったです。私もピルと出会うまではそうでした。「あと数時間すれば痛みも治るはず」と念じながら練習していたのを覚えています。
年を重ねるとともに、PMSによる気分の落ち込みやイライラを感じるようになりました。そういった時に、「今、生理なんだよね」と言える環境が大事ですよね。気分の浮き沈みがあっても大丈夫と、チーム全体で向き合う雰囲気作りをしていきたいです。
司会:FCふじざくら山梨では、生理について話しやすい環境を作るために、具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか?
五十嵐:デジタル管理ツールをクラブに導入し、各選手の体重や生理周期を把握しています。体重増加も、生理が原因にあるのか、それ以外の理由があるのか、現場スタッフが理解するのが重要です。
あとは、あえて選手のロッカールーム内にトレーナーベッド(トレーナーが施術をする場所)を置いているんです。コミュニケーションが自然と生まれるロッカールームに設置することで、生理も含めてトレーナーが選手の状態を把握しやすいようにしています。トレーナーからの情報を共有し、現場のスタッフとも連携しています。
生理不順が、疲労骨折に繋がるリスクも
坂梨:「生理が止まってラッキー」といった間違った認識も見かけます。でも郡先生、これはかなり異常なことですよね?
郡:産婦人科医としては、3ヶ月生理が止まったらぜひ病院を受診していただきたいですね。
坂梨:生理不順だと、どのようなリスクがあると考えられるのでしょうか?
郡:生理が来ていない場合、エストロゲンという女性ホルモンがかなり低い状態にあるんです。なので、骨粗しょう症や疲労骨折のリスクが高まります。特にアスリートの場合は食事制限をしていたり、エネルギー摂取が足りなくなることも多く、女性ホルモンの減少に繋がりやすいです。
坂梨:最近はmederiピルユーザーの中でも、精神的な不調や気分の浮き沈みなど、PMSで悩んでいる女性が多い印象です。
郡:20歳前後くらいから生理周期が確立され排卵が起きることで、生理痛やPMSの症状が出やすくなると言われています。
排卵期は、身体としては妊娠を考える時期です。プロゲステロンという女性ホルモンが増えて、むくみが増えたり、食欲が増すようになることがあります。
坂梨:「産婦人科に行きづらい」と感じる方も多いと思います。生理のお悩みを相談する先としても、mederiをご活用いただきたいです。
郡:若い方は、なおさら産婦人科への抵抗があるように感じています。「産婦人科に通っていると思われたらどうしよう」「生理について話すことが恥ずかしい」など行きづらさはあると思っています。オンライン診療(電話やビデオ通話)だと、ご自宅でも受けられるので話しやすいかなと。
ー最後に、mederiスポーツアンバサダーとしての意気込みや今後の展望をお聞かせください。
瀬川:毎月の生理とどのように向き合うかは、競技力向上のために必要なことだと感じています。現役選手として、同じ女子アスリートや一般女性の方にもピルという選択肢があることを伝えていきたいです。
五十嵐:mederiピルをチームで導入することで、選手にどのような変化がみられるかが楽しみです。そして何より、選手・指導者・スタッフ全員の生理に対する理解を深めていければと思っています。そうして、女子サッカー、女子スポーツ全体で意識を上げて取り組んでいきたいです。
郡:まだまだ、ピルへのイメージは良くないと感じます。ピルがどのようなものなのか、正しい知識とともにご理解いただけるようにmederiドクターとして発信していきたいです。
坂梨:女子アスリートは、ホルモンバランスと上手く付き合っていくことがパフォーマンスを発揮する上でも大切だと思っています。現役アスリートの女性ならではの健康課題のみならず、その後も継続してサポートできるような仕組みを作っていきたいです。
今回のトークセッションでも、スポーツ界の現状や課題がたくさん出てきました。ともに向き合いながら、これからアンバサダーチームとご一緒するのが楽しみです!
アスリートも気になる!ピルについてのQ&A
トークセッション終了後には、質疑応答も実施されました。一部を抜粋してお届けします。
ーピルは、ドーピングに当たらないのでしょうか?
郡:ピルで、ドーピングに引っかかるお薬はありません。安心して飲んでいただければと思います。
ーピルが飲めない条件はあるのでしょうか?
郡:50歳以上の方と、閉経している方は服用できません。40歳以上の方は相談しながら処方させていただいています。また、高度肥満の方、重度な喫煙者の方、他に処方されているお薬がある方も服用できない場合があります。
ー自分にあったピルがあるのか、上手く調整できるのかが不安です。
瀬川:私も初めて飲んだピルが自分に合わず、体重が4kgも増加してしまったことがありました。でも早めに産婦人科医の先生に相談したので、一度服用をやめて、別のお薬に変更できました。今では悩みなく、服用できています。
郡:ピルには種類があるので、自分にあったピルを探していただくのが良いですね。アスリートの場合は、試合に合わせたコンディション管理が重要だと思います。瀬川さんのように、合わなければ早めに相談して調整していくことも大切です。