LIFE
2021.06.15
フィットネス大会全勝。基本に忠実だからブレないsaeさんのトレーナー論
昨年10月にパーソナルトレーニング「comme 表参道」をオープンしたsaeさん。横浜市立大学在学時には身体科学を学び、2017年にはフィットネスビキニの大会で日本一に輝くと、翌年も連覇。その後出場した日本国内の大会は全て優勝しています。
基本を極めた知識と、自分の体と徹底的に向き合った経験。その二つからたどり着いたのは、「卒業前提」のコンセプト。その背景にある器械体操やボディビルの経験と、トレーナー論をお伺いしました。
器械体操とボディビル。2つの世界で得たもの
小田
いつ頃からジムを作りたいと考え始めたのですか?
sae
3歳から器械体操を始めて、トレーニングがずっと身近にありました。高校で競技はやめて、大学からはお世話になっていたジムでアルバイト。トレーナーの仕事を覚える中で、自分のジムを持ちたいと思うようになりました。
大学で勉強しながら、ボディビルコンテストに出場されたんですよね。
大学では解剖学や栄養学、運動生理学などを勉強していました。学んだことが実際に合っているのかをたしかめるために、2年からボディビルを始めて。日本の大会はすべて優勝するほどのめり込んでしまいました(笑)。
筋肉にどハマりしてますね。
もともと、サーファーの父が作っていた筋トレのルーティンを私と姉もやっていたんです。倒立や腹筋、腕立て伏せなどの簡単なメニューなんですが、私は姉よりもできたのが嬉しかたんでしょうね。筋トレへの得意意識を持つようになりました。あとは、器械体操の選手は体がきれいなので、そこから肉体美に惹かれたというか。
とはいえ、器械体操とボディビルは全く違う世界だったのでは?
器械体操では、筋肉を連動して動かすような考え方でした。ボディビルでは、より細かく筋肉を意識するので、知見が広がりましたね。トレーニングっていろいろあるんだなと。
2つの世界を知っているからこそ、ジムでの指導の幅も広がりそうです。
ジムに来るお客様は、みんな目的が違うんです。体力がほしい、体の機能を改善したい、運動習慣をつけたい……。必ずしもスタイルの良さだけを求めているわけではないので、器械体操での経験も生きていると感じます。
ゴールは卒業。自分に合った体づくりの知識を身につけて
小田
「comme表参道」の“卒業前提”というコンセプトは面白いですよね。どのような思いでオープンされたのですか?
sae
パーソナルトレーニングはまだ敷居が高い存在だと思うんです。高いし、通い続けないといけない。でも、正しい知識をつければ、自分のものになります。理想のやり方を見つけて、自分一人でもできるようになれば、フィットネスを生活の一環として取り入れることができます。だからこそ、卒業前提のプランを立てています。
トレーニングや栄養の指導において、大切にしていることは?
基本に忠実な指導を心がけています。よく糖質制限をしている人を見かけますが、一時的に数字が落ちても、100%リバウンドします。糖質は、筋肉を維持する上でも必要なエネルギーです。制限はせずに、バランス良く栄養をとってもらっています。
トレーニングは毎日来てもらうことはありません。休養をしっかりとって、詰め込みさせない。持続可能なペース配分を心がけています。
糖質制限は多くの人が通る道ですよね。
筋肉を張らせたり、コンディションを整えることが目的なら、糖質制限はすぐに結果が出やすいです。数日後に撮影を控えたモデルさんであれば、一時的な手段としてありかもしれません。ただ、それがダイエットの王道になっているのは変えたくて。痩せたい人がジムに来たとしても、健康を害してまで実現させたくないんです。あくまで健康がベースにあっての体づくりだと思っています。
大学でしっかりと体系的に学んできたからこそ、基本に忠実なのですね。
筋肉の基本的な機能はみんな同じなので。ベースがなければ、理想には向かえません。まずは健康を維持した上で、どこを鍛えたいか、どんな体になりたいかによってメニューをカスタマイズします。
saeさん、すごく勉強熱心だということが伝わってきます。
専門家は、可能な限り分かりやすく正しい情報を伝えることが大切です。今はいろいろな情報がSNSに流れていますが、わかりやすく伝えるためなのか、言葉が簡易化されているように思います。一般の方はその情報源をもとに行動するので、言葉選びが大事です。
もとの情報源が何なのか。常にアンテナを張っておかないと、変なことを伝えてしまうかもしれません。トレーナーの責任として、知識を正しい情報源からアップデートしています。
女性トレーナーだからこその強みは?
ジムには、運動経験がない人や、運動が得意ではない人も来ます。ゼロからのスタートの方には、女性のほうが寄り添えるように思いますね。また、生理不順にアンテナを張りやすいのも強みです。
いきなり経営者に。SNSの使い方は模索中
小田
コロナ禍でパーソナルジムの需要は増したのでは?
sae
大手のスポーツジムに行きづらくなって、密を避けるために来る方は多いですね。comme表参道は昨年10月にオープンして、主に口コミで広がっています。
実際にオープンしてからの苦労は?
自分でジムを経営していくためには、トレーナーとしてのスキルがあれば良いわけではなく・・・頭を悩ませる日もあります。全てが経験なので、日々自分自身をアップデートして楽しみたいと思っています。
SNSでの積極的な発信が見られます。ジムをオープンして、発信の考え方は変わりましたか?
オープン前は「私のSNS!」という感じでやっていましたが、オープン後は代表としての自覚が芽生えました。適当なことは言えないなって。悩んだ結果、何も書けなくなって絵文字だけになってしまうこともあります(笑)。
あまりジムを宣伝しているような投稿はしていないですよね。
私のフォロワーは、ボディビル選手として応援してくれている人が多いです。いきなり営業っぽいツイートが増えたら、どうなのかなって。既存のファンを大切にしながら、違うところで宣伝ができれば良いと思います。自分自身とジムを全部一緒にしてしまうのは、つまらないかなって。
今後、ジムでどのような方をサポートしていきたいですか?
ダイエットに苦労して、何をしたらいいかわからなくなった人がいます。そんな方に「ダイエットは大変じゃない」「ちゃんと食べても落ちる」「結果は出る」と伝えたいです。自分の体に悩みを抱えている方に、ぜひ来ていただきたいですね。
■プロフィール
sae(さえ)
横浜市立大学在学時は身体科学を専攻しながら、フィットネスビキニの大会に出場。2017年に全国大会で日本一に輝くと、翌年も連覇。その後に出場した日本国内の大会では、すべて優勝を果たした。2020年10月には、“卒業前提”のパーソナルトレーニングジム「comme 表参道」をオープン。自らの知識と経験をもとに、誠実な指導を行なっている。
Instagram:@smiley_19.95
Twitter:@_saekyo_