その栄養情報、信頼できる?管理栄養士が実践するデータとの付き合い方。

自分に合った食事を見つけるためには、まずは信頼できる栄養情報を手に入れることから始めましょう。SNSでキャッチできる情報だけを鵜呑みにするのは危険で、しっかり自分で信頼できる情報を判別することが大切です。

今回は、管理栄養士として日々アスリートをサポートしている吉村俊亮さんが実践している栄養データとの付き合い方をお伺いしました。

 

■教えてくれる人

吉村 俊亮(よしむら しゅんすけ)

バドミントン日本代表の桃田賢斗選手や、プロサッカープレイヤー香川真司選手の専属栄養士として日本国内外で活躍する管理栄養士。福岡県を中心に、プロアスリートから一般の方まで、トレーニング&栄養サポートを個人・チーム問わず行なっている。 また、教育機関で非常勤講師としてスポーツ栄養学を担当し、大学でジュニアアスリートの健康と栄養についての共同研究に従事。セミナーや講演会も担う。海外では、トップアスリートの専属管理栄養士として、献立作成から調理・提供などアスリートの食と栄養のサポートをしている。

 

栄養成分データも検査方法次第。新しい情報の取り入れ方

吉村さん
SNSでの栄養発信をする人が増え、一般の方でもかなりの量の栄養情報に触れられるようになっています。

しかし、その情報が正しいかどうか。いつ更新されたものかについてまで、意識を向けたほうがいいですね。

近年「じゃがいも」の栄養成分として示される食物繊維の量が一気に増えたことをご存知でしょうか。100g(中くらい)のじゃがいもの中に含まれる食物繊維は従来1g程度だったのですが、現在は9gほど含まれていることが分かっています。

じゃがいもの品種改良によってデータが変わったのではなく、検査方法が変化し、図ることができなかった食物繊維が測れるようになったことが要因です。じゃがいもには、実はサツマイモ以上の食物繊維が含まれていることがわかりました。

100g中9gとなると、中くらいのじゃがいもを2つ食べることで、1日に必要とされている食物繊維が取れる計算。このように、栄養情報は測定法次第でデータが変わる可能性があるのです。

「実験によって裏付けが取れている情報」と言われると安心するかもしれませんが、そのデータの質はどうでしょうか。重要なのは実験に参加した被験者の人数、最低でも100人以上が参加している実験を基準としましょう。さらに、その実験は「人をお対象とした実験」なのか、「動物を対象にした実験」なのかも気をつけなくてはいけません。

吉村さん
「事実」とされる内容がどんどん変わる中で、新しい情報をどう取り入れていくかは、私自身も非常に気をつけている点です。

私は新しい情報が出た場合、すぐには取り入れないようにしています。発表から時間が経って、栄養の専門家の中でもファクトが溜まり、その情報が常識として受け止められるようになってから、取り入れています。

 

「添加物の記載がなければ安全」ではない

お肉、お魚、野菜などの原材料は、添加物などが入っていなくて安全なイメージがありますよね。しかし、実は原材料が育てられる過程で、アスリートのドーピング検査に引っかかってしまう薬物が使用されている恐ろしいケースが出てきました。

添加物がなければ安全、という考えはもはや通用しません。ドーピング検査のあるアスリートは、産地をしっかりチェックし、素材自体の安全性をチェックするようにも伝えています。

野菜や果物であれば農薬、動物であればステロイド剤など、ドーピングに引っかかってしまう薬物が食材自体に含まれている可能性があります。もちろん、化学調味料にも要注意です。

一般の方であれば、ここまでの注意は必要ありませんが、素材が育てられた環境に問題があるケースも存在するということを覚えておきましょう。敏感になりすぎると大変ですが、何も知らないのも危険です。

栄養士はパートナー。自分に合った食事を一緒に探す

自分に合った食事を見つける方法として、栄養士のサポートを受ける方法もあります。ただ、栄養士さんによって、食事のアドバイスや考え方は異なります。

契約後に自分に合わないと気がついても、お互いハッピーではありません。

吉村さん
私はこれまでアスリートを含め、一般の方も多くサポートしてきましたが、その中で気をつけているのは「栄養士は我を出してはいけない」ということです。

クライアントである相手に食事内容や知識を押し付けても、サポートされている側にとっては意味がありません。指導の軸を持ちながらも、パートナーとして相手に合わせたアドバイスで寄り添うことを心がけています。

スポーツ栄養の専門家として、アスリートをサポートしている栄養士には、いくつかのタイプがあります。

・単発セミナーで知識や情報を教える
・アスリートやチームの献立を立てる
・実際に料理を作って提供する

アスリートに多いのは、自分の食事に疑問を持っていて、何かを変えたいけど何を変えたら良いかがわからないケース。そこで、まずは栄養士の方に知識や情報を教えてもらうために動き出す。

次に、「自分により合った食事ってなんだろう」と、栄養士さんに献立を考えてもらうようになる。

教えてもらった知識や情報、作ってもらった献立メニューを実践して体調が良くなれば、最終的に料理を作ってもらうまでのサポートをお願いするパターンもあります

栄養サポートを依頼するとお金もかかってしまうので、突然契約するのではなく、少しずつ栄養士さんとの距離を縮めていくほうが良いと思います。

栄養士とのマッチング。ポイントは「経歴」と「専門分野」

また、栄養士を選ぶ際に気をつけてほしいのは、「経歴」と「専門分野」です。
ベースの基礎知識は同じですが、より自分に合った栄養士を選ぶのであれば、それぞれの目的にあった専門分野・領域の経験がある人を探すのがベター。いくら優秀な栄養士だからといって、自分の目的に合っていなければ、効果的なアドバイスは受けにくいです。

栄養士と一言でいっても、それぞれ専門分野があり、担当している領域が異なります。その方が何を得意としているのかをチェックしましょう。
ネットで経歴を載せている栄養士のほうが安心できます。

栄養士には、私のようなアスリートサポートを専門とする「スポーツ系」や、病気を治すための栄養知識が豊富な「臨床系」、そして子供の成長に必要な栄養知識が豊富な「子育て系」など、様々なタイプがあります。

最近はSNSで情報をキャッチアップしている方も多いと思うので、皆さんがフォローしている栄養士の専門分野や経歴を今一度確認しておくことをおすすめします。

ただ、栄養士はあくまでパートナーです。自分に合った食事を見つけるためには、うまく頼りながらも、自分でいろいろと試していくことが大切になります。

 

まとめ

管理栄養士としてご活躍されている吉村さんにお話を伺いました。
栄養や食事はアスリートだけでなく、様々なシーンで活躍されている女性にとって、とても大事な要素です。

「You are what you eat」あなたの体は食べたものから作られています。
いわば食事探しは自分探しであり、それを一緒に伴走してくれるパートナーとして、栄養士がいます。

上手に付き合い、自分にあった食事を探していきましょう!

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