潮田玲子さんが超体育会系な絵本を出版。大人もハッとさせる一足の靴
現役時代に「オグシオペア」として活躍した、元バドミントン日本代表の潮田玲子さん。競技引退後、元Jリーガーの増嶋竜也さんと結婚され、二人のお子さんを出産。SNSで見せてくれる家族の日常も、ファンを喜ばせています。
現在はキャスターとしても活躍する傍ら、2021年2月には絵本を出版。家族の日常から生まれたというストーリーには、アスリート夫婦ならではの経験が詰まっているそう。
ちょっと体育会系で、今までにありそうでなかったストーリーは大人が読んでも勉強になる!とB&編集部内でも大絶賛。絵本に込めた思いと、SNS大活況時代にあえて「超アナログ」な発信方法を選んだ理由を伺いました。
多くの有名アスリートのプロデュースを手がけてきた、しげるちゃんの対談シリーズ第10弾です。
(聞き手:しげるちゃん/文:横畠花歩)
左:潮田玲子(しおた れいこ)
幼少期にバドミントンをはじめ、全日本総合選手権大会で5連覇、世界ランキングでは7位の戦績を残す。2012年に現役を引退。現在はスポーツコメンテーターとして活動しており、今年2月には『いっぽ いっぽのくつ』のプロデュースを手掛けた。
右:しげるちゃん
商品プロデューサー/インタビュアーとして活躍。CS局の旅番組にも多数出演、海外のファッション・流行などをナビゲートしている。元男子サッカー日本代表長谷部誠選手の著書『心を整える。』のプロデュースも手がけた。
あえて選んだ「アナログ」な絵本
このSNS時代に、あえてアナログツールな絵本を発売をしたのは、玲ちゃん的に何か意図することがあったのかな?
もともと絵本が好きなこともあり、子どもたちに経験を伝えるためのツールとして絵本を選びました。「SNSだと、子どもの心に刺さらないじゃん!」と思ったんです。
たしかに絵本ならではの『温かさ』は、SNSでは伝わらないかもだね。
実際に子育てを経験するなかで、絵本は絶大な力を持ってることに気づいたんです。たとえば子どもが2、3歳のころ、「だめ」と言っても伝わらないことが増えてきて。「歯を磨こうよ」と言っても、「嫌だ」。「虫歯になっちゃうよ」と言うと「虫歯ってなに?」。でも虫歯がテーマの絵本を読むと、子どもは自分から歯を磨くようになるんですよ。
子供の成長過程の中では『絵本』というツールから学ぶことって多いのね?お母さんになって、初めて気が付くことって多そうね。
そうですね。わたしが競技人生で学んだことを小さな子どもにも伝えたいと思って、絵本という方法を選びました。
この絵本の内容は、玲ちゃんが考えたのよね?どんなあらすじ!?
この絵本の主人公は、セール品として買われた一足の目立たない運動靴です。買われた先でもなかなか履いてもらえなくて、「どうせ僕なんて」と落ち込んでしまうんですが、まわりの靴との交流を通して、自分にもできることやがんばれることがあることに気づきます。目立たない「すみっこのぼく」が、いつのまにか女の子の一番のお気に入りの靴になっていたというおはなしです。
しげるも読ませてもらったけど、出てくるセリフが体育会要素があって笑えた(笑)。だけど、大人の自分も忘れがちなポイントをついてて、子供だけじゃなくって、大人が読んでも感じることが絶対にあるはずだと思う。
この絵本に出てくる主人公のように、人を羨む気持ちって誰にでもあると思いませんか?
わたしたち大人にも、「どうせ私なんて」と思うことはあるんです。でも、自分は選ばれるために努力や準備はしているのか、目標に向かってなにができるのかを考えてみる一つのきっかけとして、大人にも読んでほしいなと思います。
家族時間のなかで生まれたストーリー。
まだあまり経験がない子どもに、感性に触れてもらうっていうのは大事かもね。この絵本が生まれた、きっかけってなに?
コロナ禍で家族と過ごす時間が増えるなか、夫(元プロサッカー選手の増嶋竜也)と半生を振り返る機会があったんです。そのなかで、順風満帆に見える彼のサッカー人生が、実はそうじゃないことを知ったことがそもそものきっかけです。キラキラして見える経歴ではあっても、その裏には絶対的な努力があったんだなって。「人って、見えないところで努力してるよね」って改めて感じました。
周囲からしてみればスポーツ選手って『結果』が全てと思われがちなのだけど、子供には、その『結果』と同じように『努力を続ける』大切さを知ってもらいたいよね~。そんなとこが『絵本』から深堀りしていくとおもしろいよね。
彼だけじゃなくて私自身も、現役時代にはすごく練習しましたし…どの分野のアスリートも、トップの選手は人の見えないところで努力をして、チャンスを掴んでるんですよね。
そうだよね。トップの人たちは相当の努力を積んでいるからこそ、人に対する思いやりのある対応ができたり、強い中にも優しさがあるんだと思う。
ちなみに、この絵本の原案は夫なんです。私が出したアイデアはありきたりすぎると却下されてました(笑)。我が家では新しい家族の習慣として、去年から朝の散歩をはじめたんですけど、子どもが靴を選ぶときの理由がそれぞれにあることに気づいた夫が、「靴が、持ち主に選ばれるにはどうしたらいいんだろう?」って。そこから発想を得たみたいです。
ねえ、旦那くん、意外にロマンチストなのね(笑)普通、『靴箱の靴が努力している』なんて発想にはたどりつけない。
夫のアイデアを聞いたときに、「その案もらった〜!」って飛びつきました(笑)。夫には、「これ俺の名前で出してよ」と言われましたけど、文を書いたのはわたしですから。
確かに(笑)。でも『絵本』って世代を超えて読まれ大切にされていくから、玲ちゃんの家族の日常から生まれたお話しも、きっとこれからたくさんの人に愛されるんだね。
先日本屋さんで、わたしが子どものころに読んでもらっていた絵本を見つけたんです。初版から50年以上が経つものなんですけど、絵本は色褪せない、末長くみんなに読んでもらえる可能性があるということを改めて感じましたね。
磨かれた、表現力の裏にあるもの。
最近、絵本は子どもだけのものじゃないっていう印象があるんだけど、この『いっぽ いっぽのくつ』も、大人が読んでも楽しめる絵本だね。
嬉しいです!絵本は大人が読み聞かせるものでもあるので、子どもと一緒に大人も楽しめるものを作りたいなと思ってました。
『絵本』には目で楽しむ絵があって、聞いて学ぶ文章もあって、2つの楽しみがあると思うのだけど、玲ちゃんが表現とか伝え方で悩んだ場面とかはある?
この絵本は5歳児以上を対象にしているんですけど、言葉選びに一番悩みました。絵本を通して「輝いている人ほど努力をしているんだよ」ということを伝えようとしても、「努力ってなに?」となってしまう。そこで子どもにもわかるように、努力を準備という言葉に変えました。最近よく聞く、アスリートの「いい結果を出すために準備をしています」というコメントもヒントになりましたね。
当たり前かもしれないけど全部ひらがなだし、子どもにも伝わる言葉を生み出すのは大変だったろうね〜。普通なら「努力=頑張る」に変換しそうだけど、「努力=準備」に置き換えることで、ほかの言葉よりもスッと入ってくる気がする。
そこが一番頭を悩ませた言い回しでしたね。文が説明のように長くならないように言い換えを工夫して…あとは実際に絵本に登場する、長靴や革靴の気持ちを考えたりもしました(笑)
靴の気持ち!(笑)靴箱にある靴を、履いてあげなきゃって思うよね。ちなみに、絵本を読んだお子さんたちの反応はどうだった?
子どもたちは靴を大切にするようになって、それがとても嬉しいです!
息子が初めて絵本を読んだとき、「え、ママ。靴って自分で自分をきれいに洗ってるの?」と聞いてきたので、「そうだよ。夜中、わたしたちが寝てる間にがんばってるんだよ。だから大事にしてあげないと可哀想だね」と応えたら、自分で靴を直したりするようになりました。
いつの日かそれが嘘だとわかってしまっても、玲ちゃんには罪はない!(笑)。『すみっこの僕』の靴の物語が安売りセールからはじまることも、現実的でおもしろかった。
そうですよ、安売りされてた主人公ですが、雑草からスターに駆け上がって輝いていくんです!この絵本を通して、目標に向かって頑張ることのすばらしさが、子どもたちに伝わると嬉しいです。
■プロフィール
潮田玲子(しおた れいこ)
福岡県京都郡出身。元バドミントン日本代表選手。幼少期よりバドミントンをはじめ、ダブルスペア「オグシオ」として活躍、全日本総合選手権大会で5連覇を果たす。現在はスポーツコメンテーターとして活動しており、今年2月には自身が手掛けた絵本『いっぽ いっぽのくつ』のプロデュースを手掛けた。
Twitter:@Reishio
Instagram:@reikoshiota
しげるちゃん
商品プロデューサー/インタビュアーとして活躍。芸能人やタレント、モデル、スポーツ選手など、様々な業界の著名人との交流が深く、自身がプロデュースするアイテムは、そんな多くの著名人が愛用することで知られ、メディアやSNSでも話題に上がる。また、CS局の旅番組にも多数出演、海外のファッション・流行などをナビゲートしている。
Instagram:@shigeru39