人生はネタ集め。コンサルから転身のトレーナー徳永悠里さん「スピード感が大事」
コンサルタントとして働きながら、2019年にボディメイクコンテスト「Super Body Contest」のCHARMクラス(18〜25歳女性)で初代王者に輝いた徳永悠里さん。現在はトレーナーとして、「SPACE GYM」と「GRIT NATION」の2か所を軸に活動しています。
安定していた“会社勤め”の道を外れ、フィットネストレーナーに転身。その経緯や、コロナ禍でのジム経営の苦しさ、そして今後の挑戦についてお伺いしました。
選択肢を狭めたくない。まずは会社員へ
人の体に興味を持ったのは、ソフトボールをしていた中学時代からです。肩を痛めて、スポーツ整形外科に行ったところ、先生は肩の模型を見せながら、なぜ痛いのかを説明して、投げ方のフォームも改善してくれました。その後は肩を痛めなくなったので、体って面白いなと。
先生みたいに体に詳しくなりたかったので、高校では医学部を目指して勉強しました。ただ、勉強していく中で「治療をしたいわけではないのかも……」と思うようになったんです。
よりスポーツに特化した勉強をするために、体育系の大学を目指したものの不合格。代わりに進んだ大学では、入学してすぐ遊び呆けてしまいました。高校時代の目標から遠ざかっている自分に気づき、「何をやっているんだろう」と立ち止まりました。体の勉強に集中できる環境に身を置いたほうが良いと、2年の秋から専門学校に通い始めたんです。
専門学校で知識をつけながら、ジムでトレーナーのアルバイトもしました。そのままトレーナーの仕事に就くのも悪くなかったですが、選択肢をあまり狭めたくないと考えました。一回トレーナーになったら、その後に他の業種に転職するのは難しいかもしれない。まずは会社員になって、それでもトレーナーになりたいと思ったら、その時が一番良いタイミングかなって。
参加者5人、週2回。独立後のコロナショック
卒業後はフィットネス関係の施設やイベントのコンサルティング会社に務めました。入社直後から先輩について実務を経験させてもらいましたね。とても面倒見の良い会社で、仕事の考え方や進め方、相手への伝え方などを学び、店舗のマネジメントやアポなしの営業を務めました。約2年で退職しましたが、その経験は今も生きています。
退職を考え始めたのは、2019年にSuper Body Contestの東京大会で優勝してからです。その後、日本大会への準備をしている間に決断しました。当時は大会に向けてトレーニングしながら、仕事の引き継ぎや転職の準備を進めていて。仕事が早めに終わったら面接に行って、それからジム。今思えば、半端ない体力だったと思います(笑)。
日本大会では優勝することができ、独立してトレーナーになったものの、すぐに1回目の緊急事態宣言がありました。指導はジムに徒歩で来られる方に限定して、料金は半額に。参加者は5人くらいで、週2回なので10コマしかなくて。貯金もほとんどなく、生活はギリギリでした。
ご飯はすべて自炊で、カードは分割払い。アルバイトもしました。「独立して正解だったのかな……」と後悔しかけた時もありましたが、周りの人が支えてくれました。
私は困ったらすぐ友達に助けを求めるんです。友達も事情を知っているので、苦しい時に手を差し伸べてくれて。親にも心配をかけましたが、「周りが助けてくれるから大丈夫だよ!」と強がっていました。
転職者の“引き出し”と仲の良さが、他のジムとの差別化に
今はSPACE GYMとGRIT NATIONの2カ所を軸に活動しています。当時に比べると生活は落ち着きました。仕事が生活の一部になっているので、ゆっくりする時間がほしいとは思わないですね。ジムを掛け持ちしていると、それぞれの良さを実感することができ、自分の幅が広がります。
GRIT NATIONは動きがスピーディーで、1回目の緊急事態宣言が出た次の日には、オンラインクラスを始めました。新しいシステムもすぐに導入するので、時代の流れに順応しています。そんなところも経営視点で勉強になりますね。
SPACE GYMではサブマネージャーを務めていて、スタッフを指導する立場でもあります。うちのトレーナー陣は、学校卒業直後からトレーナーの道を目指したわけではない人が多いんです。一般企業で働きながら仕事のストレスを発散するためにトレーニングをしていたら、だんだんトレーナーになりたいと思い始めたようなケースも。いろいろな経験をしているからこそ、お客様のニーズに応じた提案ができていると感じます。
たとえばジムには仕事後に来るお客様も多くいます。同じ境遇だったスタッフは、その方たちの気持ちに寄り添えるんです。トレーナー同士の仲も良いですし、他の仕事での経験があるからこそ、会話の引き出しが多い。他のジムとの差別化が図れていると感じます。
有名なジムには、大会で実績を残して、SNSでも知名度が高いトレーナーが多いと思います。私たちはそこを超えるために、トレーナーの人柄や仲の良さを生かして、お客様の満足度を高めています。
人生はネタ集め。何事も「とりあえず動く」
会社員から独立してトレーナーになるのは、勇気のいる行動だと思います。Instagramで相談を受けることも多く、なかなか踏み出せない人が多いみたいです。
私は相談を受けたら「すべて自分次第」と返しています。まずは自分が何で悩んでいて、なぜやりたいのかをはっきりさせる。 結局どの選択にも正解はなくて、決断したあとに何をするかが大切です。だから、決断自体を他人に委ねてもうまくいきません。
まだまだやりたいことはたくさんあります。ジムの仕事以外にも、少しずつ個人の仕事を増やしていきたいです。料理が好きなので、食事と運動を掛け合わせたイベントもやりたくて。トレーニーの食事の内容をフィードバックするのはよくありますが、一緒に料理を作るのも面白そうだなって。
トレーナーになりたい人たちへのセミナーや、店舗ごとのマネジメントにも興味があります。マーケティングやデザインも学んで、トレーニングと掛け合わせてみたいです。好奇心がつきないですね(笑)。
私は何事もスピード感を大切にしています。準備はもちろん大事ですが、とりあえず動くタイプ。準備してから動くのではなく、動きながら準備する。もし選択肢が2つあったら、どちらが楽しいかを考えて選びます。
その先に後悔があってもいいんです。人生はネタ集めだと思っていて、もし失敗したとしても、こうやって話せるネタが増えるじゃないですか。私も人の話を聞くのは好きですが、苦労をしてきた人の話のほうが、人間味があって面白いです。そのために、どれだけネタを集められるか。死ぬ時に「やりたいことは全部やった!」と言って終わりたいですね。
■プロフィール
徳永 悠里(とくなが ゆうり)
1995年生まれ。福岡県出身。福岡女子大学を卒業後、コンサルティング会社に就職。2019年にボディメイクコンテスト「Super Body Contest」のCHARMクラス(18〜25歳女性)で初代王者に輝いた。その後はトレーナーに転身し、現在は「SPACE GYM」と「GRIT NATION」の2か所を軸に活動している。
Instagram:@yuuri_tokunaga_