女子サッカー新世代。SNSと人脈で強くなるゆかサルの新チーム構想

京都府京丹後市に、新たに女子サッカーチームの創設を目指す、元なでしこリーガー・ゆかサルこと吉野有香さん。現役引退後はフリーランスとして活動。独自戦略でSNSのフォロワーを伸ばし、InstagramやYoutubeなど、それぞれの特徴を生かしながら、幅広くファンを獲得しています。

一方、指導者になっても現役時代から変わらず、女子サッカー界の課題を持ち続けてきたそう。ゆかサルがつくる新チーム「KYOTO TANGO QUEENS」は、SNSの力でその課題を解消しようとしています。

 

突然降りてきた“夢”。口に出すことで動き出した

「女子サッカーチームをつくる」ことが、長年の夢だったかと言われると、そうではないんです。
現役を引退してからはフリーランスとして、サッカー教室や、サッカーを中心としたスポーツイベントのMC、モデルなどの仕事をしてきました。個人のSNSも、しっかりとターゲティングをしたうえで伸ばしてきたし、ファンと呼べる方々や、仕事依頼にもつながった。そのまま同じような生活を続けていくと、自分自身思っていました。

ただ、どこかでずっと、女子サッカー界に感じる「もやもや」はあったんです。小学生の女子向けのサッカー教室をしながら、「どこを目指せ」って言ってあげたらいいのかわからない。そもそも中学生以降の年代が、サッカーをできる場所が少ないんです。

9月にはプロリーグが開幕しますが、一般企業で働いた方が高いお給料をもらえるという選手も多いはず。なのに、サッカーをやめたら、社会人として0からのスタート。それって悲しくない? どうにかならないのかなって。

転機になったのは、Jリーグクラブ・名古屋グランパスの応援番組のレギュラーメンバーを決めるオーディション。「吉野さんは今後、何がしたいんですか?」という質問に対して、「女子サッカーチームをつくりたい」って自然に口から出てきたんです。夢が降りてきた感覚っていうのかな。その時から明確な夢として、口に出すようになりました。

 

京丹後に”行ってみたこと”で計画が一気に加速。SNSノウハウをチームに

「口に出せば叶う」と私は昔から思っていて、今回もそうでした。京都府京丹後市出身の弊社の取締役が、京丹後の企業の経営者さんをたくさん紹介してくれました。もともと京都府の北部はスポーツチームが少なく、人口も少ない地域だったようです。スポーツしたい子は、みんな大阪や京都市内に出てしまう。京丹後市として、どのように人を呼んだらいいのかを悩んでいました。

京丹後市の大きな課題は、高齢化や、人が出て行ってしまうことで生まれた空き家対策。そこで、新たに作る女子チームで、空き家となっている一軒家を借り、選手寮にするという提案をしました。

市内でサッカー教室を開催したり、近くの農家さんに選手が手伝いにいくといった交流もしていきたい。様々な企業が選手の働く場所を紹介してくれるなど、お互いに支え合う構図ができあがっていきました。地域の課題と、私の描くチーム像を一致させていくプロセスが楽しいですね。

チーム名は「KYOTO TANGO QUEENS」。京丹後市へ足を運んでから、様々な企業へ提案書を提出して1ヶ月弱。あれよあれよと話が進んでいき、正直私もおどろきました。夢を口に出した瞬間から、実現に必要なものがどんどん舞い込んでくる感覚。やらない理由を探す方が難しい。そんな状況でした。

でももちろん、本当に形にしていくためには、私が一番からだを張らないといけないこともわかっています。でも、そこは私の強みでもあります。自分の見せ方とメッセージの伝え方は、フリーランスになった時からずっと考えてきたこと。私の今までのブランディングノウハウを、今は全部チームに注ぎ込んでいます。

 

サッカーの技術より人間力。すでにスポンサーがつく理由は

応援されるチームの選手はただ強い、うまいだけじゃダメなんです。少なくとも、わたしがつくる「KYOTO TANGO QUEENS」の価値観はそうではない。もちろん技術も大事ですが、大切にしているのは人間性です。

正直、今の女子サッカー界にはこの考え方が足りない気がします。だから、サッカーをやめたら何もない自分になった気がして、その先の人生に悩んでしまう選手が多いんです。「KYOTO TANGO QUEENS」では、技術だけでなく選手のキャリアプランや自己価値への気づきを大切にしています。人間性が育つから、チームが育ち、強くなる。その先にはWEリーグ参入、優勝ももちろん目指しています。

この価値観が当たり前になってほしい。だから、このチームに入りたいという選手がいたら、まずは面談でビジョンへの共感と人間性を確かめる。いろいろな条件に合意できたら、合格。シンプルですよね。

すでにスポンサーも獲得しています。ウェアや車、用具のサプライヤーも、手を挙げてくださる会社が多く、本当に感謝しています。まだ選手も少なく、結果も出していない私たちに期待してくれていること。それぞれだと思いますが、やはり私のチームの武器である「SNSの発信力」です。

SNSではどこにも負けないチームを目指しています。京丹後市の魅力はもちろん、スポンサーのために選手もチームスタッフも全力でSNSを活用する。選手に対しては、私が直接SNSのコンサルティングを行ないます。そのためにも、強さだけではなく、社会的にも応援される力=人間力が大切なんです。

 

チームの本格稼働は4月からを予定しています。今年は選手の人数が足りないので、2022年シーズンから関西リーグ2部に参入予定です。また人数が増えるにつれて課題も出てくると思いますが、それも楽しみですね。頼れるスタッフと、創設から加入してくれる選手は、私にとってはファミリー。みんなで一緒に乗り越えていけると思います。

 

■プロフィール

吉野 有香(よしの ゆか)

元女子サッカー選手。メンタルコーチ、サッカー教室コーチ、その他イベントMCとして活躍。自らを「戦力外なでしこリーガー」と銘打ち、 Twitter、Youtube、Instagram、noteなどのあらゆるSNSを通じて、発信活動を続けている。

現在は女子サッカーチーム「KYOTO TANGO QUEENS」のオーナーを務める。2022年シーズンから、関西リーグ2部に参入を予定している。

RELATED

PICK UP

NEW