睡眠で選手を支える。実績0から夢を叶えた道のり(スリープトレーナー:ヒラノマリ)
【B&編集部より】
副業・フリーランスなど働き方の選択肢が広がるなか、好きなこと、やりたいことはあるけど、あと一歩を踏み出す勇気がないという人も多いのではないでしょうか。
今回は、“スポーツ×睡眠”という、国内では前歴のない分野で専門家として活躍するスリープトレーナーのヒラノマリさんに、夢を叶えるために行ったことを教えてもらいました。キャリアや夢に悩む方、必見のストーリーです。
◼︎プロフィール
ヒラノマリ
スリープトレーナー。自身も睡眠で悩んだ経験から睡眠学に興味を持つように。大学卒業後、某大手インテリア会社に入社。寝具担当として幅広い顧客に寝室全体のコンサルティングを行なってきた。2017年から、アスリート専門に睡眠指導を行う『スリープトレーナー』として活動をはじめる。ショールームでの販売経験を活かした具体的なアドバイスは、プロサッカー選手や五輪出場選手からも好評を得ている。
Twitter:@sleeptrainer_m3
Instagram:@maririn__gram
目次
夢は具体的に描く「いつ、誰と、何をするのか」
小さい頃から不眠症や睡眠不足に悩んできたので、常に睡眠については課題感を持っていました。新卒で大手インテリア企業に就職し、睡眠について深く学ぶ機会がありもっと早く知りたかったと思うと同時に、睡眠指導の価値や重要性を感じました。
“アスリート専門スリープトレーナー”という夢を持つきっかけになったのは、2016年にサッカーのクラブW杯を観戦した時のこと。
鹿島アントラーズの選手たちが世界的な強豪チーム、レアル・マドリードの選手たちと必死で戦う姿に感動し、当時仕事で悩んでいた私は、この人たちのように人生をかけて戦う人と仕事がしたい。この人たちのためになるような仕事をしたい、と思うようになったのです。
日頃から持っていた興味関心が、このW杯をきっかけに仕事のイメージに繋がり「アスリートを睡眠の力でサポートしたい、今すぐにでも!」という夢に変わりました。
スポーツ業界との接点は皆無!夢を叶えるためにやったこと5つ
ただ、その時の私はスポーツ経験もスポーツ業界との接点もない会社員。当然アスリートと仕事をしたいといっても夢物語。課題は山積みです。
絶対にこの夢を叶えたいという気持ちだけを糧に、どうしたらできるかを考え行動しました。
アスリートの日常を知る
まずはサッカー選手のことをよく知るために、東京駅から始発のバスに乗って繰り返し郊外のクラブハウスに足を運びました。練習時間、給水のタイミング、トレーニング内容など選手の行動パターンをメモし、アスリートの日常がどんなものなのかを知るところから始めました。
アスリートとの接点を探る
アスリートをマネジメントしている会社を見つけて社長にアポイントをとり、自分がやれること、今後やりたいことを提案しに行きました。
すぐに選手を紹介してもらうことはさすがに難しかったのですが、ありがたいことに、数年後にはこの時の出会いが仕事に繋がることになります。
睡眠トピックスを発信し続ける
現在も続けていることですが、毎日インスタグラムの投稿かストーリーズでアスリートに役立つ「スポーツ×睡眠」に関する情報を発信しています。
最近では、アスリートから直接、睡眠サポート依頼や質問などもDMでいただくようになりました。フォロワー数が多くなくても、届けたい人にちゃんと届いているんだと実感でき、続けてきて良かったと思っています。
友人知人にやりたいことを伝え続ける
「睡眠でアスリートをサポートしていきたいから、何かあったら紹介してほしい」と、友人や知人によく話していました。
そのうち、知人からの紹介でスポーツトレーナー養成の専門学校でのトレーナー向け睡眠セミナーをやってほしいと依頼をいただくことに。これが専門家として人前でお話しする初めての仕事になりました。
一流アスリートに頼ってもらえる人になるために自分を磨く
・アスリートから頼られる人とはどんな人なのかをSNSで学ぶ
アスリートから頼られるトレーナーやアスリートの奥様のSNSをチェックして、アスリートをサポートする上で人間として今の自分に足りないものは何か、それを克服するためにはどうすればいいかを考えたり、発信する時の参考にしたりしていました。
・日記をつけて自分を客観視、自己肯定感を高める
日記をつけるようになったきっかけは、私のような目立った特技のない凡人でも人には負けないようなオンリーワンの魅力があるのではないか、それを論理的に理解できたら自分に自信が持てるのではないか、と思ったから。
それまでの人生で成功体験が少なかった私は、とくに『自分の成功パターン』を知るために、日常生活の些細なことでも成功したときのプロセス・友人や仕事仲間に褒められたときのシチュエーションを悪いことよりも詳しく記録して、自分の良さを客観視するようにしました。そうすることで、自分への信頼を重ねていったのです。
夢が形になった瞬間
会社員として働きながらこのようなことを続けて1年半ほどたった頃、かつて会いに行き自分のやりたいことを無我夢中で提案した企業の社長から連絡がありました。
「今度Jリーグの選手たちが集まる機会があるから、睡眠について講義しにきてもらえませんか」
忘れもしない、憧れの選手方にお会いできた感激の瞬間でした!
現在は、アスリート複数名と契約を結び、個別サポートを行っています。
具体的には、選手にスリープテックデバイスをつけて生活してもらい、睡眠データをとり、それを元に、シーズン中・オフ期・遠征時・移動中などその時その選手に合った睡眠方法を提案したり、季節や悩みに合わせた寝具の選び方などをアドバイスしています。
夢を叶え、新たにうまれた課題と対処法2つ
実際アスリートと接するようになり、新たな課題も感じています。
それは、心と身体のコンディションの波とどう付き合うかということ。
選手のメンタルの波にどう寄り添うか
怪我や試合の結果などによる感情の揺らぎはどうしても起こります。睡眠のアドバイスをしながらも、揺らいでいる時の選手にはどう対応するのが良いのか、日々、模索と勉強です。
睡眠に直接関係していなくても、怪我、リハビリ、筋肉の使い方などを勉強したり、少しでも選手の状況や辛い気持ちを理解できるようになりたいと思っています。
自分のごきげんをどう保つのか
選手のサポートをするには自分自身のメンタルも安定していることが大前提です。そのため日頃から自分自身をごきげんに保つことを意識しています。
私が行ったのは、自分が落ち込む時の法則と解決策のパターンを書き出す方法。落ち込んでも自分は意外と簡単に立ち直れるということを知っておくと、安定したメンタルを保ちやすくなります。夢を叶える過程で挫折をしたり、辛いこともありますが、夢を叶えることだけに固執するのではなく、『自分がどう生きたいか』『どういう人間になりたいか』『どのような人たちと過ごしたいか』を常に思い描くことが困難を乗り越えるポイントだと思います。
「攻めの睡眠」の価値を伝えていきたい
アスリートのサポートをするという夢は叶いましたが、まだまだ国内では睡眠はリカバリーというイメージが強く、パフォーマンスを上げる方法として捉えられることはなかなかありません。
海外のサッカーチームには睡眠をサポートする専門家が存在しており、そのぐらい睡眠はスポーツにおけるパフォーマンスや身体とも深い因果関係があるのです。
睡眠を改善してパフォーマンスアップを目指す、「攻めの睡眠」メソッドでこれからもたくさんのアスリートの現役生活をサポートしていきたいと思っています。
(取材・文 辻岡奈保美)