野球女子が2020年を振り返る。山崎まりさん×加藤優さん〜女子野球を広めるために、いま私たちができること〜

加藤優さんと山崎まりさんの写真

「とにかく女子野球を広めたい!」

そう強く語るのは、現役選手でありながらも女子野球の普及活動を行なっている山崎まりさんと加藤優さん。そんなお二人は同じチームで共に戦った仲間であり、同時期に退団を決めた先輩×後輩。女子野球の魅力や、普及活動のお話を伺いました。

 

山崎まりさん(右)

埼玉西武ライオンズが支援している女子硬式野球チーム「埼玉西武ライオンズレディース」に所属。現役選手として活躍しながら、地元・北海道での野球教室などを通して女子野球の普及活動を行なっている。

加藤優さん(左)

約1年前に女子プロ野球チーム「埼玉アストライア」を退団。現在は個人練習をしながら現役を続行しつつ、自身のYouTubeチャンネルやライブ配信を通して女子野球の普及を中心に活動中。

 

野球を頑張る子どもたちに、将来の不安を感じさせたくない

—女子野球の普及に力を入れているお二人。具体的にどんな普及活動を行なっていますか?

山崎さん
地元の北海道で、野球教室を開いています。そこで出会った子どもたちに「これからも野球を続けます!」と言ってもらえると嬉しいですし、選手であるうちに頑張っている小学生とたくさん野球をしたいです。
加藤さん
野球教室や女子野球向けのイベントを企画しています。子どもたちに「こういう選手になりたい!」と目標にしてもらえるいい機会なので、今後も続けていきたいです。

山崎まりさんと加藤優さんの写真

—加藤さんはチーム退団を選んでまで普及に力を入れていますが、きっかけは?

女子プロ野球選手として活動している中で、女子野球チームの在り方に疑問を抱いたことがきっかけです。「あと2〜3年プレーしたら引退しようかな?」と考えていましたが、女子野球の将来を見据えたときに、このままではいけないなと思ったんですよね。

1年間は女子野球を普及するために別の環境で動いてみようと思い、退団を選びました。

—女子野球において、問題と感じることはありますか?

社会人の女子選手が野球に打ち込める環境が少ないのが現状。高校や大学を卒業後、野球をできる環境がなくなり、路頭に迷う選手も多いんです。女子野球の選手は「お金を稼ぎたい!」というより、大好きな野球を極めたい一心でプレーしている人が多いので、野球ができる環境を整えたい。
野球女子の人口がかなり増えてきているのに、目指す場所があやふやなんです。平日働きながら練習時間を確保するのは難しいですし、トップチームの環境を整えなければいけないと感じます。
私が女子野球のいい時代を過ごして来たからこそ、今の子どもたちが大人になったときは今以上の環境を残したいです。時代は進んでいるのに、野球を打ち込める場所はどんどん少なくなっていてるので、このまま停滞しそうな雰囲気を打破したいです。

山崎まりさんと加藤優さんの写真

—もっと世間に「女子野球」を広めるためには?

男子野球と違って、ファンとの距離が近いところが女子野球の魅力。応援してくださるファンの方の顔はしっかり見えますし、「また観に来てくれてるな〜」と覚えられるくらい!だからこそ実際に球場に足を運んでほしいですね。
今でも「ソフトボール?」と聞かれることがあるので、「女子野球」そのものを広めなければいけないと感じています。私は事務所に所属しているのでメディアへの露出を増やして、女子野球というワードを日本に広めたいです。

 

西武、阪神に続いて欲しい!12球団に女子プロ野球チームを

—山崎さんは西武ライオンズが支援している「西武ライオンズレディース」に所属していますが、気づいたことはありますか?

山崎さん
今までのチームや環境が違っても、「女子野球を広めたい!」という同じ目標や思いを持っている女子野球の選手が多いです。
加藤さん
西武ライオンズのユニフォームを着て試合をしているまりさんを見たときは、素直に嬉しかった。大きい球団傘下のクラブチームでプレーをしている姿は輝いて見えますし、後輩の憧れでもあるので、あらためて尊敬しています。

山崎まりさんと加藤優さんの写真

—西武ライオンズに続いて阪神タイガースが女子野球に参入予定ですが、女子野球に影響はありますか?

影響はすごく大きいです。女子野球を広めるためには、名のある球団の協力が必要。簡単ではないですが、将来的には男子のプロ野球12球団全てが女子野球のチームを作ってほしいです。先陣を切った西武ライオンズはすごいな!と思いましたね。
この流れで3、4チームと増えるのかな……?増えて欲しいです。

最近では横浜DeNAベイスターズが全国女子中学生硬式野球選手権大会の開催に協力するなど、いろいろな場面で女子野球に力を入れてくれているなと感じます。

加藤優さんの写真

試合をすることが、何よりもモチベーション!

—お二人は同じチームでプレーをしていましたが、退団後も交流はありましたか?

山崎さん
優(加藤優選手)とは以前のチームが一緒で、オフの自主トレも一緒に行なっている仲です。芯が強く、自分の考えをしっかり持っている人という印象ですね。
加藤さん
私は高校生のときからまりさんを知っていて、1番仲のいい先輩。プレーはもちろん常に気遣ってくださるので、すごく尊敬しています。

—今年はコロナウイルスの影響で、思うように活動ができなかったと思います。

女子野球の普及に力を入れようとチームを退団しましたが、思うように活動ができなかった1年なので、少しモヤモヤしています。チームを退団してから感じたのですが、試合がないとモチベーションの保ち方が難しい……。

そんなとき、人数が足りないからとGOODJOBさんに声をかけてもらい、試合や練習に参加できたことは嬉しかったです。

実は、たまたま練習試合で一緒になったんです!前のチームを退団後のことはなにも知らなかったので驚きましたが、ユニフォーム姿の優を見たときは嬉しかったですね。
急きょの参加だったので報告を忘れていて、驚かせてしまいました(笑)。
私自身、新しいチームに入ってからコロナの影響で試合ができなかった間、モチベーションの保ち方が難しいなと感じていました。優はチーム退団後も現役の意思があると言っていたので、常に心配していたんです。

山崎まりさんと加藤優さんの写真

—プロ野球選手を目指している女子へ、メッセージをお願いします。

女子野球を続けていると、きっと進路を決めるたびに悩むと思います。ですが、これから絶対に女子野球は良くなっていきます。少しでも野球が好きな気持ちがあるなら、諦めずに続けてほしいです。
女子のプロ野球チームができたのは、私が中学のとき。それまでは目指す道がパッとしないまま、ただ野球が上手くなりたいという気持ちだけで突っ走ってきました。絶対に女子野球もいい環境ができるので、今は目の前のことを一生懸命こなして、野球を頑張ってもらいたいです。努力は無駄にならないので!

 

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