「みんな辛いから我慢」はやめよう。生理や不妊でキャリアを諦めないWRAYの世界観
仕事にスポーツ、趣味や勉強など、毎日を全力で駆け抜けるために、体は何よりの資本。ビジネスの世界でトップに立ってきたWRAY(レイ)の谷内侑希子・代表は長年、生理不順やPMS、不妊といった女性の体特有の悩みと向き合ってきたといいます。体と心、キャリアのバランスについてお話を伺いました。
目次
運動好きの健康体がストレスで一変…女性の体特有の不調とは?
谷内さんは新卒でゴールドマン・サックス証券に入社、その後スキンケアブランドやファッションPR会社のマネジメント職など華麗な経歴を持ちます。また2児の母であり、クラシックバレエ歴15年、今でもヨガやピラティスなど運動好きな一面も。健康的なキャリアウーマンのように映りますが、実際は多くの苦労を経験してきました。
「新卒で入社したのが金融機関で、入社してから2年ぐらいは激務が続き、睡眠時間も削るような生活が続きました。また営業部に配属されたことで成績というプレッシャーと向き合い、上下関係など社会人として環境の変化も感じていました」
そういったストレスが溜まり、ある時、生理不順に陥ります。「すぐ病院に行きましたが、何より、ストレスが生理にも影響を及ぼすということにショックを受けました」。体だけでなく精神的な衝撃も受けながら、その時はピルを飲んですぐに不順を整えることができたといいます。
妊活で思わぬ事態に。卵巣年齢や体外受精のハードル
そのショックから数年後、谷内さんは妊娠を望んで、再び婦人科を訪れることに。すると、医師から思わぬことを言われます。
「まだ28歳でしたが、卵巣年齢を測ったところ、実年齢以上だと言われ驚きました。早く知っておけばよかったと感じました」
妊活をするまで、なかなか予想が及ばないホルモンバランスや卵巣年齢の問題。さらに不妊治療ではホルモン注射で対応することもありますが、谷内さんの場合は当時使用した薬が体に合わなかったのだとか。そのため体外受精が選択できなかったといい、「ホルモンの関係や重要性を知ることになった」といいます。
それでも第1子は比較的早い段階で授かり、30代では2年半の妊活を経て、第2子も出産。その後、再び体の変化を感じることに。
「2人目の産後には年齢もあってか、PMSがすごくひどくなりました。私はわかりやすくメンタルに影響が出るタイプで、テンションがすごく落ち込んで、マイナス思考に入っちゃう。何もしたくなくなったり、イライラしちゃったり。その時期は決断もできなくて。いつもの自分と全く真逆でした」
家では2人の母であり、会社ではマネジメント職として日々判断を下す立場。種類の異なる大きな責任を背負う中で、家庭でも「イライラして家族にきつくあたってしまったり、そのことで自己嫌悪に陥って、反省して…という悪循環」と、月に一度、気の滅入る日々を過ごしていたといいます。
落ち込みやイライラ「ベストパフォーマンスが出せない」時の対処法
働き盛りの谷内さんにとって「ベストパフォーマンスを出せない、生産性が落ちている」ということは大きな問題であり、ストレスでした。
「最初に生理不順になったりPMSが悪化したときに、もっと勉強しておけばよかった、知識があればこんなに動揺しなくて済んだのにと思いました」。
知識が増えた30代では、PMSに対して自分なりの対処法を作っていったといいます。
「仕事の面では、ネガティブになりがちなPMSの時期は重要な決断は出来るだけしないようにしたり。生理中は、私の場合は冷えが一番不調に影響するので、体を温めたり、生理用品も生理ナプキンや月経カップ、吸水ショーツなどを色々なものを試しました。またどうしようもないイライラは、家族に事前告知して。もちろん婦人科にも行きました」
また食事ではカフェインや甘いものを控える。お風呂にゆっくり浸かる、息が上がらない程度の軽い運動を取り入れるなど、様々なアプローチを行うことで対処。
特にお気に入りなのは、クラシックバレエ時代から馴染みのあるストレッチや、体をゆっくり動かすヨガ。
「皮下脂肪の多い部分が冷えやすいので、お尻を鍛えることで血液循環を促したりします」と、日頃からの体づくりも工夫のひとつ。
また週末にPMSの辛い日が被るときは、考える時間が増えてさらに憂うつになってしまうのだとか。そこで「なるべく外に出て、子どもの遊びに付き合ったり、サイクリングしたり気を紛らわせる方法を探しておいています」。
人それぞれ症状も違えば、対処法も異なるはず。いくつかの対処法を持つことは重要な要素といえます。
体と心、ライフスタイルから女性をエンパワメントするブランド
谷内さんは今年9月、セルフケアブランド「WRAY」を立ち上げました。どの製品も、誰もが手に取りやすく、ポジティブな気持ちになれるようなデザインも特徴です。このブランドを立ち上げた背景に、多くの女性が悩む事柄だからこそ「みんな辛いんだ」と我慢してしまう風潮があるといいます。「皆さん長い間、我慢をしてきているので、PMSや生理痛は我慢するものであって解決しようという考えになかなか至らない。けれど、身近にきっかけがあれば行動につながると思うんです」。
みんなが辛いからこそ、みんなで我慢しなくていい世の中にしていく。その一助として、谷内さんはブランドから物だけでなく、様々なサポートサービスを発信しています。「例えば生理周期をトラッキングして、LINEメッセージでお知らせするサービスを無料で展開しています」。
さらにウェブサイトでは情報も発信。「キャリアを含めたライフプランニングの話って、体を抜きにしては語れないと思います。ウェブサイトでは様々なキャリアを経た方のインタビューも載せていますが、今後はいろいろな情報が集まる場にしたいと考えています」。
一人ひとりの選択肢を増やし、そこに寄り添っていく。誰にとっても共感できるブランドとして、今後ますます注目されそうです。
■プロフィール 谷内侑希子(たにうちゆきこ)
早稲田大学商学部卒。2007年にゴールドマン・サックス証券に入社。2011年メリルリンチ日本証券に入社後、翌年から2年間の海外在住を経て、帰国後YCP Holdingsに参画。スキンケアブランドのマーケティング・商品開発を担当し売上・販路拡大に貢献した後、傘下のN&O Life取締役就任。2017年、ファッションブランドPR・マーケティングなどのSteady Studyにて経営企画室室長に就任。2020年、WRAY(レイ)を立ち上げる。
谷内侑希子さんのInstagram:@yuccoxx
撮影協力 / WeWork the ARGYLE aoyama