筋肉量を増やす食事法。管理栄養士・佐藤彩香さんセミナーレポート
同じ練習をしていても、どんどん筋肉量が増えていく選手がいれば、成長が遅い選手もいます。どうしてそのような差が出るのでしょうか?食事法が関係しているかもしれません。
「B&」ではそんな悩みに答えるため、管理栄養士の佐藤彩香さんによる栄養セミナーを5月1日に開催。最新の研究データなどを基にした授業で、よりアスリートに役立つ内容を伝えてくれました。今回はその時の講義内容の一部をレポートします!
■セミナー講師
佐藤 彩香(さとう あやか)
管理栄養士
企業や保育園で栄養カウンセリング、献立作成、栄養計算、店舗運営を経験し、その後に独立。健康を土台とした実践型の栄養サポートを行い、プロアスリート~スポーツキッズ、ダイエット希望の方など累計5,000人を超える人々と関わる。現在はパーソナル栄養サポート、セミナー講師、ライター活動、レシピ開発なども行ないながら、「あなたのかかりつけ栄養士」として活動している。
目次
トレーニング効果を最大化する食事の基礎基本
セミナーはまず、必要な栄養の摂り方のレクチャーからスタート。必要なのはエネルギー、たんぱく質、そしてアミノ酸です。
筋肥大のためには、まずトレーニング前にエネルギーを摂取。空腹状態では筋肥大していかないので、特に筋トレなどの短時間で高強度の運動をする場合はしっかり摂りましょう。意外とここを疎かにする人が多いのだとか。
必要な推定エネルギー量や、糖質・脂質の摂り方については、佐藤さんの前回記事をチェック!
■前回の記事はこちら
また、たんぱく質はトレーニング後に必要量を摂取することが重要ですが、適切なタイミングで摂れているかが大事なのだそう。
こちらも、必要量の計算方法などは前回の記事を確認してみてください。
摂って運動するだけじゃない!吸収・休息のすすめ
せっかく必要な栄養を摂ってもうまく吸収されなければ、効果は薄くなってしまいます。体内の栄養の流れは「食事→消化→吸収→輸送→代謝→排泄」。佐藤さんは腸内環境を整えることをアスリートにおすすめしています。
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休息も大事な要素。特に睡眠に関しては、トップの選手になればなるほど長く眠る人が多いんだとか。睡眠の質を高めるためには、睡眠ホルモン・メラトニンがしっかり分泌されることが重要です。
そのためにはメラトニンの素、トリプトファンやビタミンB6の摂取時間も大切になります。
肉、魚、卵、大豆製品、乳製品、バナナなどに含まれているので、朝からしっかり食べましょう。
さらに成長ホルモンも必要。そのため就寝直前の食事をなるべく控えるべきだといいます。
どうしても夜ご飯が遅くなってしまった!という時は、消化のいいものを食べたり、練習スケジュールに合わせて分けて食べる(分食)という方法も。
さらに睡眠にいい栄養を摂り入れたい!という人向けに、睡眠の質を向上する食品も教えてくれました。1つ目は魚やナッツに含まれる「不飽和脂肪酸 n-3系(オメガ3)」。脂質として摂るべき良質な油なので、睡眠だけでなく怪我をしにくいからだを作ったり、血液をサラサラにしたりといい影響がたくさん!
また、日本ではあまり見かけないタートチェリーという果物は、メラトニンを直接摂取できる唯一の食べ物なんだとか!ジュースなどで販売されており、250〜300ml(濃縮は30ml)を1日2回、試合前の4〜5日間摂るとよいそう。また運動後の休息のためには運動後2〜3日摂ると効果が期待できます。
食事だけじゃ足りない人へ。補助食品の摂り方・選び方
大前提は「食事を整えること」!とはいえ、食事だけでは摂りきれない栄養もあるはず。そこでセミナーでは補助食品についてもレクチャー。ここではそのうち4種を紹介します。
BCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)
3種のアミノ酸からなる成分。その中でもロイシンは、筋たんぱく質の合成に強く影響する傾向があるそう。「ロイシン量は1日あたり0.7〜3gが推奨されています。BCAAを摂る方は、このロイシン量に注目して選びましょう」(佐藤さん)
参加者の方からは、ジュニア期の摂取量に関する質問も。
また、一緒にアミノ酸スコアの良い食品を摂ることが重要です。アミノ酸スコアとは、食品に含まれている必須アミノ酸がどれくらい満たされているかという数値のこと。100に近いほど理想的です。
■主な食品のアミノ酸スコア
クレアチン
瞬発力やパワー、スピードが重視される、短時間で高強度の運動時にエネルギー源となる物質です。
クレアチンの摂取はエネルギー利用可能量の増加につながり、パフォーマンスに良い影響が期待できます。例えば、筋肉がつきやすくなり、基礎代謝が向上したり、高負荷トレーニングで耐久力が上がったり。体内でも合成される物質ですが、必要量の半分程度しか合成されないため、こういった効果を高めたい場合にはサプリなどの補助食品で摂取しましょう。
HMB(βヒドロキシ-β-メチル酪酸)
BCAAにも含まれているロキシンの代謝物で、筋肉でのたんぱく質合成を誘導する物質と想定されています。トレーニングの1時間前に、1日1〜3gを数回に分けて摂るとよいそうです。ただし、これまでの研究データを見た佐藤さん曰く、トレーニング初心者向けかもしれないとのことでした。
カフェイン
興奮剤であるカフェインは、神経筋機能の改善、集中力の改善、効率よく運動できるなどの作用があります。トレーニングの1時間前と運動中にも摂るのがベストです。
多量のカフェイン(体重1kgあたり9g以上)はメリットもなく、興奮しすぎて睡眠に悪影響…なんてことも。佐藤さんは体重1kgあたり3〜6g(カプセルピルまたは粉末状態)の間で、炭水化物源と一緒に摂取することを勧めています。海外の研究結果をもとにしているそうなので、摂取量は個人個人で調節しましょう!
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お菓子やお酒はOK?参加者からの質問タイム
講義の最後には、直接質問ができる自由な質問タイムが。この日話した内容から普段の悩みまで、さまざまな回答が飛び出しました。
例えば「チョコレートやクッキーなど、甘いものを間食に選ぶのは控えた方がいい?」という質問。罪悪感を抱いてしまいがちですが、解決法も。
また、「お酒を飲みながら筋トレ効果を保つことはできる?」という正直な質問も。
お水を一緒に飲み代謝を上げる、またお酒の代謝に必要なビタミンB、マグネシウムを摂ることが必要です。焼き鳥、お刺身、冷奴など、たんぱく質の多いお肉、魚、大豆に含まれています。
これなら、甘いものやお酒などのストレス解消アイテムともうまく付き合っていけそうです。
こういったセミナーならではの細かい情報から、珍しい食品、研究データまで、知識がぎゅっと詰まった1時間半に。参加したアスリートの方たちも「腸内環境が栄養の吸収に結びつくんだ」「筋合成のために翌日の朝、昼も意識が必要だとは!」と新しい発見があったようです。